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第3章 ラッシュガード④

――カズヤのうちはこっちだよ、と門亜は先頭になって歩いた。色とりどりのかさが3つ、縦に並んで歩いていた。


カズヤの家は、小学校4年の時に何回か行ったことがある。月の観察で天体望遠鏡持ってきてくれたな。まだあるのかな?


そんなことを考えながら門亜は歩いていると、見覚えのある屋根が見えてきた。


屋根が短くて、冬になると二階のベランダに雪が積もってしまう赤い屋根。今年も雪を落としたのかな。


門亜はカズヤの家の前に着くと、玄関のチャイムを押した。インタフォンのカチャリ、と言う音がしたあと、家の中から早足で玄関に向かう足音が聞こえた。


そして、風よけ室のガラス扉に女性の姿が現れた。カズヤの母親だ。


「門亜くん、久しぶりね。あら……後ろの子はお友達?」


カズヤの母親が早口で言うので、門亜はもじもじしだした。すると、音環が後ろから並んで言った。


「僕、今年転校してきた音環と言います。こいつはカズヤ君と同じクラスのすべっタロー。プリントを届けに来ました」


すらすらと言う音環に門亜は目を丸くした。敬語も使ってる。……大人だ。


「そうなの……ちょっと待っててちょうだいね」


そう言うと、カズヤの母親は門亜たちを風よけ室に招き入れた。


門亜たちは傘を閉じると、手に持って風よけ室の中に入った。風よけ室の床には3つ、傘から滴り落ちる水たまりが広がり始めた。


トン、トン、トン、と家の中から階段を下りてくる音が聞こえた。


カズヤの部屋は、今も2階なんだな。門亜は4年生の時に見たカズヤの顔を思い出していた。


カズヤの母親は玄関を開けて顔を出した。


「あなたたち……時間はある?よかったら上がって行かない?カズヤも会いたがっているの」


どうしようか……3人は顔を見合わせた。


宿題。手分けしてやれば早いけど、すべっタローは戦力外だよね。門亜に戦力外、と言われたすべっタローはムッという顔をした。


続いて、門亜はぽつり、とカズヤに会いたいかも、と言ったのでそのままお邪魔することになった。


おじゃまします、と言って広い玄関に入ると、そのまま2階のカズヤの部屋に通された。


カズヤの部屋に入ると、70mm口径の天体望遠鏡が門亜の目に入った。門亜の胸の高さまである大きな天体望遠鏡!4年生の時に見たやつだ。


カズヤは学習机の手前にある椅子に座っていた。


「カズヤ、久しぶり」


カズヤ、と呼ばれた少年は返事の代わりにうなづいて返した。病気をしているわけではないようだけど……蛍光灯の下のカズヤは何となく青白い顔をしていた。


何を話そう……門亜が、言葉に詰まっていると、天体望遠鏡に目が釘付けになっていたすべっタローがカズヤに話しかけた。


「これ、凄い大きいな!何が見えるの?」


こいつ、だれ?カズヤは門亜に目で問いかけた。門亜が口を開こうとした瞬間、すべっタローは続けた。


「オレ、すべっタロー。カズヤと同じクラスだよ。プリントを届けに来て、これから宿題をするんだ。オレ、国語と算数と理科と社会がだめだからさ」


……まとめすぎ。門亜はぷっと噴き出した。


「えー。オレ、りんごの袋掛け競争だったらだれにも負けないんだけどな」


すべっタローはぷっと頬をふくらませると、横を向いた。


その様子にカズヤは口元が緩んだ。


「ここでするの?宿題を?」


「いや……音環の家に行こうか、と言っていたところ」


すべっタローはしどろもどろに答えた。確かに、さっきの言い方はカズヤの家に押しかけて宿題をする言い方だ。


「ここでやっていってもいいけど」


カズヤはぼそっと言った。……どうしよう。どんどん人が増えていくなぁ。その時、カズヤの学習机に並んでいたテキストを見ていた音環が言った。


「ねえ……それ、XYZ会のテキストだよね。もしかして国語、出来たりする?いま、国語が出来る人、大募集中なんだ」


ん?と言う顔をカズヤはした。


国語なら……分からなくはないけど、とカズヤがつぶやくと3人の顔はぱっと明るくなった。


「じゃ、ここでやって行ってもいい?よかったよ、僕たち誰も国語、出来ないんだ」


だって、作者が何を考えているかなんてわかるわけないだろ、と音環は続けた。


「僕なんて、今晩のおかずは何だろうと思いながら宿題解いているんだから」


と、音環が言うとカズヤは笑い出した。確かに。ボクは早く終われ、と思ってるな、と門亜はうなずきながら思った。


カズヤの部屋でテーブルを広げようとしたが、天体望遠鏡が邪魔をして1人座れなくなってしまった。


すべっタロー廊下でやる?と冗談を言っていると、お茶とお菓子を持ってきたカズヤの母親が、客間ではどうか、と言ってくれた。


カズヤは部屋を出るの?と、少し困った様子だったが、オレ、廊下だよ?と上目遣いににらむすべっタローを見て、客間に行こう、となった。


第3章 ラッシュガード このエピソードで終了です。

SAKIOTTEメンバー、4人まで集まりました。

門亜の周りに人が集まりだすと、早いなぁ、って書いていて思います。


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