表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アラフォードライバー、夜の街で恋を知る 第一章 何もない日々  作者: こうた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/16

第十話「連れ出される夜」

「ほな、行こか」

なおみの一言は、軽かった。

でも、その軽さのまま、空気ごと持っていく。

「……どこにですか」

要が聞く。

「外」

即答。

理由はない。

説明もない。

「ちょっとくらい、ええやろ」

そう言って、もうドアの方を見ている。

(……どうする)

一瞬、ようこを見る。

目が合う。

何も言わない。

止めもしない。

でも――

試されているのは分かる。

(……)

「……行きます」

気づけば言っていた。

なおみが、少しだけ笑う。

「ええやん」

そのまま、先に立つ。

ドアが開く。

ベルの音。

夜の空気が流れ込む。

要は一歩遅れて外に出る。

振り返る。

ようこは、こちらを見ていた。

表情は変わらない。

でも――

その目だけが、残る。

外は、少しだけ風が出ていた。

昼の熱が、少し引いている。

「車あるん?」

なおみが聞く。

「……あります」

「じゃあ乗せて」

迷いがない。

当たり前みたいに言う。

(……強いな)

でも、断れない。

車まで歩く。

距離が近い。

さっきよりも、はっきりと。

「どこ行きます?」

ドアを開けながら聞く。

「任せる」

シートに座りながら言う。

足を組む。

余裕がある。

「走りたいとこ」

その言い方が、雑で、でも自由で。

要はエンジンをかける。

車が動き出す。

夜の道に出る。

「なあ」

なおみが言う。

窓の外を見ながら。

「楽しい?」

「……何がですか」

「今」

その一言に、少し詰まる。

「……分かりません」

正直に言う。

なおみが笑う。

「ええやん」

軽く。

「分からんまま動いてる時が、一番おもろい」

その言葉が、やけにしっくりくる。

「ようこと、どこまで行ってるん?」

突然聞かれる。

「……」

言葉が止まる。

「ほら、そういう顔や」

見透かされている。

「まあええわ」

あっさり引く。

でも――

次の一言が重い。

「中途半端なんやろ」

核心を突く。

「……はい」

否定できない。

「それでええねん」

なおみが言う。

「最初からちゃんとしてるやつなんか、おらんし」

でも――

少しだけ声が低くなる。

「ただな」

視線がこちらに向く。

「そのままやと、全部逃すで」

ハンドルを握る手に、少し力が入る。

「……どうしたらいいですか」

思わず聞いてしまう。

なおみが少しだけ笑う。

「簡単や」

一言。

「欲しいもん、ちゃんと取れ」

その言葉が、真っ直ぐすぎる。

「……」

言葉が出ない。

「ようこも、さっきの子も」

名前は出さない。

でも、分かっている。

「どっちも欲しいんやろ?」

その問いに、すぐ答えられない。

でも――

否定もできない。

「正直でええねん」

なおみが言う。

「綺麗にしようとすんな」

その言葉は、ようこと似ている。

でも、違う。

もっと、乱暴で、現実的で。

「……そんなうまくいきますか」

要が言う。

「いかんで」

即答だった。

一瞬、笑いそうになる。

でも――

続く言葉が重い。

「せやから、おもろいんやろ」

沈黙が落ちる。

でも、さっきまでとは違う。

どこか、スッと入ってくる静けさ。

車は、少し広い道に出る。

街の明かりが広がる。

「止めて」

なおみが言う。

少し先のパーキング。

車を停める。

エンジンを切る。

静かになる。

「なあ」

なおみがこちらを見る。

距離が、近い。

店のときよりも、はっきりと。

「試してみる?」

軽く言う。

でも、その目は軽くない。

「……何を」

分かっているのに、聞く。

「どこまで行けるか」

そのまま、手が伸びる。

要の頬に触れる。

一瞬、止まる。

でも――

引かない。

「逃げる?」

試すような声。

(……)

頭の中に、ようこの顔が浮かぶ。

れいかの声も。

でも――

目の前の温度が、強い。

「……逃げません」

答えていた。

なおみが笑う。

「ええやん」

そのまま、距離が消える。

唇が重なる。

突然で、強い。

ようことは違う。

考える余地を与えない。

一気に持っていく。

(……)

頭が、真っ白になる。

でも、離れない。

離せない。

唇が離れる。

少しだけ。

でも、距離はそのまま。

「な?」

なおみが言う。

「簡単やろ」

呼吸が少し乱れる。

何も言えない。

「これで」

少しだけ目を細める。

「もう戻られへんで」

その一言が、やけに重く落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ