【⑤-6/6】【23】お疲れ!
それからは、適当に雑談したり雪乃ちゃんを眺めたりして飯食い終わった。
皇達はまだ帰れねーみてーだったんで、そこで別れることになった。
「わりーけど、俺等は先に帰るぜ。赤神さんの都合もあるしな」
「はい、お気になさらず。またお会いしましょう」
「いずれ」
「まあ、機会があったらなー」
なーんて、皇と寺馬嶺は言ってっけど、俺等はちょっと住む世界がちげーからな。
少なくとも、しばらくは会う機会ねーんじゃねーかと思う。
それでもまー、俺はにこやかに手を振るのであった。っと。
「はい! 寺馬嶺サ……んも、皇きぅんも、絶対またお会いしましょう!」
葛葉のヤツ、また、サマとかきゅんとか言いそうになってやんの。
まーそうだよなー。アイドルと突然会ったら、愛称で呼んでいいのか迷うよなー。
でもやっぱ、知り合ったばっかなら丁寧に名前呼ぶべきじゃねーかなー。
友達になったんなら、別にどう呼んでもいいと思うけどな。
あ。でも、赤神さんのことは、いきなりオジサマって呼んでたか。
「ああ、そうだ。知り合ったのも何かの縁だ。俺の名刺を渡しておくよ」
「これはご丁寧に。ありがとうございます」
「感謝」
俺等にも名刺くれたんだけどよ。
この名刺にまたビビった。
「赤神探偵事務所!? 赤神さん探偵なのか!?
まじか!! 探偵って初めて見たぜ!!」
俺だけじゃねー。葛葉もビビってる。
皇と寺馬嶺は驚いてるっつーか、興味深そうにしてるが。
んで、当然聞くのは――
「殺人事件解決したりすんのか!?」
これだろ!!
「……ごめんね。
残念ながら、そういう仕事をしたことは無いんだ。
浮気調査、人探し、物探し、場所探し。
精々そんなところだよ」
「なーんだ、そうなのかー……」
「なーんだって、マキ失礼よ。
だいたい、民間に頼るような無能な警察は、物語の中だけにしてもらわないと。
警察がそんなんだと、迷宮入り事件だらけになっちゃうでしょ?」
まーそーか。あーゆーのは漫画とかアニメだけか。
ちぇー。リアルな現実を知っちまったぜ。
――ちょっとした探偵騒ぎの後、皇達と別れて駐車場に向かったんだが――
本日何回目なのかわかんねーけど、びびった!
「で、でっけ~~~~~! かっけ~~~~~!」
赤神さんの黒くてゴツイ車、”ピックアップトラック"って言うらしーんだけどよ。
めちゃくちゃでかくて、かっけーんだ!
葛葉も車のでかさに驚いてたけど、それだけだったみてーだな。
へっ。女にゃーこの車の良さ、わかんねーか。
「さあ、乗った乗った。早く帰らないと、親御さんが心配するからね」
「うーっす! うおー! 座席たけー! 中ひれー!」
「あ、じゃあとりあえず、この通りの、この角までお願いします」
葛葉がスマホで地図見せて、赤神さんも大体道把握したみてーだ。
うるせーくれーのエンジン音が心地いいぜ!
いざ出発!
車に揺られながら、今日の出来事を思い返す。
まさか赤神さんが轟教官の弟子だったとはなー。
一か月くれーで"乙級"取ってるしな。
試験中含めて赤神さんには驚きの連続だったぜ。
しかも探偵! ――は、ちょっと残念な真実を知ったけどな。
最後にまた、こんな車に乗れるなんてラッキーだぜ!
そういや、皇が"あの赤神"、とかなんとか言ってたが、何だったんだろな?
赤神さん自身よくわかってねーみてーだから、聞いてもわかんねーんだろーし。
葛葉の驚きは教官のツナギの件だったから、葛葉も知らねーっぽいよな。
まあ、さすがにもうこれ以上、赤神さん関連で驚愕の事実はねーだろ。
「あの、オジサマ。ありがとうございます。
名刺の住所、私たちの家と真逆みたいで……」
「ああ、気にしなくていいよ。
俺から言い出したことだしね。
雪乃が、ちゃんと夕食取れたし、問題ないよ」
「にゃあ!」
助手席に座ってた雪乃ちゃんが元気よく鳴いた。
しっかし、赤神さんは雪乃ちゃんのことが第一なんだな。
食堂じゃおとなしくしてたし、やっぱかわいいぜ。
俺、どっちかっつーと犬派なんだけどよ。
猫もいいな。
「そういや赤神さん、奥さんってどんな人なんだ?」
「わっ、オジサマ結婚してるんですか!?
オジサマが好きになった人の話、私も聞きたいです!」
なんとなく思い出したんで聞いてみたら、葛葉が食いついた。
女はほんと、こういう話好きだよな。
「妻かい? そうだなあ……」
赤神さん、ちらっと雪乃ちゃんの方見てから、奥さんのこと話し出した。
「色白で、美人なのにかわいくて、元気で明るい子だよ。
一目見て運命の人だって確信した」
うおおおおおアツアツ!
のろけもここまでくると、聞いてるこっちが恥ずかしーぜ!
「にゃー、にゃんにゃにゃにゃー」
んで、なんでか雪乃ちゃんが、うねうね悶えて鳴き声上げてる。
どーしたんだろな?
パートナーとして、赤神さんの奥さんに嫉妬してんのかね?
葛葉は葛葉で、
「一目惚れですか!? ロマンティック~!
やっぱりオジサマにはそういう素敵な人が相応しいですよね!」
とか大騒ぎだ。
探偵だし、仕事中に出会った美少女と恋に落ちて結婚!
みてーなの妄想すっけど……
探偵の真実を聞いちまったんで、そりゃねーな。
◆◆◆
――そんな調子で、俺の話とか葛葉の話もしながらの一時間半はあっという間だった。
なんか、めっちゃ楽しかったぜ。
多分、赤神さんが"乙級"合格した仲間ってのもあんだろうな。
この業界知らねーダチにゃ、一生この業界の話はできねーって思うと、なんか複雑だ。
先に葛葉の家に行ったんだが、家の前でこの車停まったら、葛葉ん家のおばさんが飛び出してきてたな。
俺の顔見て一息ついて、赤神さん見てうっとりしてたぜ。
赤神さんって、俺等みてーな若い奴より、マダムに好かれそうな感じだもんな。
んで、俺ん家の前。
「ありがとうございました。っと。
赤神さん。俺に手伝えることがあったら言ってくれよな」
「高尾君も、俺が力になれることなら協力するけど――
とりあえず、遠野さんから浮気調査の依頼でお呼びが掛からないことを祈るよ」
「あっ、やっ、葛葉とはそんなんじゃねーよ! お疲れ!」
「ああ。お疲れ様。じゃあね」
……赤神さんは帰ってった。
この、巧妙に隠してる葛葉への想いに気付くとはな。
さすが、本物の探偵だけあるぜ。
感知能力の成績も、ぶっちぎりのトップだしな。
そういや、さっき葛葉が言ってたこと思い出した。
名刺の住所調べて、経路検索してみっか。
――赤神さんの家、試験会場の反対側じゃねーか。
こっからだと二時間以上かかる……
赤神さん、いい人だな……
俺も、ああいう男を目指すか……
いや、無理か。
身長的に。
◆◆◆
――翌日、二人は師匠へ合格の報告をした。
皇、寺馬嶺、そして轟の弟子という情報と共に、魁と知り合いになったことも告げた。
話を聞いた二人の師匠は、赤神一族である、蒐の弟子が轟であることや、裏の神社系総代である魁の父、鎮政の存在を告げる。
その事実に、二人は愕然とした。
そして、"あの赤神"という皇の言葉に、納得もしたのであった。
だが、二人が抱いた魁への好意は、些かも変わることは無かったのであった。
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