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【⑤-5/6】【22】とりあえずメシ食おうぜ


 俺はチャーハン大盛。

 赤神さんは質素なA定食とポテトサラダ。

 葛葉くずはの麻婆豆腐定食大盛も頼んどいた。

 席は"使い魔同伴エリア"の六人掛けテーブルにした。


 "普通エリア"は結構混んでるが、こっちは殆ど人いねー。

 三人と一匹なら使ってもいいだろ。


「赤神さん。雪乃ゆきのちゃんのメシは注文しねーのか?」


「ああ、雪乃の食事は作って持ってきてるからね。これから準備するよ」


 赤神さんの大荷物、そーいうことか。

 準備する手つきも手慣れたもんだ。

 奥さんが家事勉強中ってことは、赤神さん料理までお手の物かい。


「食堂なのに、持ち込みしていーんだな?」


「そういう張り紙があったから一応確認したよ。

 使い魔の食事は持ち込んでいいらしいね。

 犬猫の食事ならまだしも、鳥類や爬虫類が食べる虫とか鼠は提供できないだろうしね」


 あー。確かに、厨房に虫やら鼠やら置いとけねーよな。


 ……!!!


 突然、出来上がりのコールが鳴ってビクった。

 フードコートで渡されるようなやつな。

 いきなりだから、びびったぜ。


 持ってきた料理をテーブルに置いて、さて葛葉待つか――

 ってとこで、俺の後ろから声が掛かった。


「こんばんは。僕達もご一緒していいですか?」


 誰だ? 試験会場で、一緒に飯食うような知り合いなんか残って――


 振り向いたら、"S"ってプリントのロンT着た美少年と、白の襟付きシャツに濃紺ジーンズ姿の俳優みてーな高身長イケメンだった。


「俺は、この子―― 雪乃と一緒でいいなら構わないよ。高尾君の知り合いかい?」


「えぇ? こんな奴等知ら――――

 ……あ!? もしかして、すめらぎ寺馬嶺じばりょうか!?」


「はい! お二人とも、試験お疲れさまでした!」


「いや、顔と名前は知ってっけど、俺は話したことも……」


 赤神さんは知り合いじゃねーっぽいし。

 なんで一緒に飯食おうとしてんだ?


「ああ……同じクラスだった受験者の。

 服装が全然違うんで、気付かなかったよ。

 君達は、どうしてこんな時間まで?」


「僕達の保護者が、今日ここで会議に出席してるんです。

 会議が長引いているので、先に夕食を食べていろと連絡がありまして」


「へえ? でもよ。だからって、なんで俺等みてーな一般人に声掛けんだ?

 金ならねーぜ? いや、少しはあるが、小遣い少ねーんだ。やらねーぞ」


「いえ、お金なんて。あの、ご迷惑でしたか……?」


 うっ。なんて悲しそうな顔すんだコイツ。

 顔が良い分、悲壮感が余計に――


「いや、そーいうワケじゃねーけどよ……」


「それなら良かったです!

 ご飯はみんなで食べた方が美味しいですからね!」


 いきなりニッコニコだ。

 男の俺でも引き込まれんだ。

 そりゃー、女は簡単に撃墜されるよなあ。


「それに、ご自分達を"一般人"と言ってますが――

 高尾さんは"乙級"の攪乱かくらんタイプとしては、かなり高水準だと思いますし、遠野さんに至っては貴重な治癒能力持ちでしょう?

 "一般人"と言うには、少々無理があるかと」


 俺と葛葉のこと知ってんのか?

 まあコイツは何でも知ってそうだしな。


「規格外の皇に言われても、あんまり実感ねーな。

 ……まあいいや。空いてるとこに座れよ。

 赤神さんがいいってんなら、俺は気にしねー。

 あと、着替えたら葛葉が来るからな。

 その麻婆豆腐定食んとこだ」


「ほらね、高尾君。見てる人は見てるんだよ」

「……お、おう」


 赤神さんが俺に笑いかけてきたんで、思わず頷いちまった。


 でも皇の奴、結構ハイスペックな赤神さんには触れなかったな。

 こいつ、案外見る目がねーんじゃ?

 いや、むしろ、言うまでもねーってことか?

 感知能力の測定結果もあるしな。


 或いは、全然知らねーって可能性もあんな。

 何度か合宿とか試験に参加してる俺も、赤神さんのことは知らねーし。

 むしろ、誰も知らねーんじゃねーか?


 皇は俺と葛葉の間に座って、寺馬嶺は雪乃ちゃんの隣に座った。

 片側三人ずつだな。


 ゆったり使おうと思って広いテーブルにしたんだが、結局人数ピッタリになっちまったぜ。


 葛葉、帰ってきたらビビるだろーなー。

 アイツからしたら、守護星様とかのゲーム状態だろ。

 食卓に皇と寺馬嶺が居るんだぜ? しかも横と正面。

 斜め前にはマスコットの雪乃ちゃん、少し離れて赤神さん。


 そして俺。


 ……俺、このキラキラ空間に、めっちゃ場違いだな。

 って、うっせーわ!


「皇は何食うんだ? ってオムライスか! 子供かよ! いや、子供か」

「オムライス大好きなんです! 遠野さん、早く来ないかな?」


 葛葉の麻婆豆腐定食大盛を見ながら「遠野さんは、たくさん食べるんですねー」なんつって。


 そわそわきょろきょろしてるとこだけ見ると、ただの子供だな。


 で、寺馬嶺はカレーうどんだと!?

「なあ寺馬嶺。白シャツでカレーうどんは自殺行為じゃねーのか?」


 でも奴は、涼し気な視線を俺に向けながらニヤリと笑って、こう言ったんだ。


「なに、問題ない」


 くあ~~~~~~かっけ~~~~~~~!

 葛葉が居たら鼻血吹きながら気絶してるぜ!?



 ――お。葛葉が走って来た。

 つーか、走んなよな。食堂だぞ。


「遅れてごめんなさい! 行者服、畳むのに時間かかって!

 あーお腹空いた! みんな食べましょ! いただきまーす!」


 人数が多い事に気付いてねー。

 多分、大盛麻婆豆腐定食しか見えてねーな。

 荷物をその辺にドサッと置いて、すげー勢いで食い始めた。


「みんな。遠野さんも来たし、食べ始めようか。いただきます」

 赤神さんが声掛けたとこで、みんな食い始めた。


「寺馬嶺、問題ねーって言う通り、すげー静かに汁も飛び散らさねーでカレーうどん食ってんな。すげえ……」


「僧の修行には、音を出さずに食事をするという修行もあるんですよ。

 寺馬嶺さんは所作も美しいですよね」


「へー。どーりで。

 おい葛葉。少しは寺馬嶺見習って静かに食えよな。女だろ?」


「別にいいじゃないの! お腹空いてるのよ―― って寺馬嶺?」


 お。葛葉が口に飯と麻婆豆腐入れてほっぺ膨らませたまま、食うの止めて前見たぜ。

 さて、どうなる?


 寺馬嶺見てから首回して、雪乃ちゃん、赤神さん、俺、葛葉の隣に……皇!


「ひぃぃぃっ! しょ、しょ、じ、ば……うっぐぐぐっ」


 あーあ。ビビって喉に詰まらせてやんの。落ち着いて食えっつーの。


「み、みず……」


 しょーがねーな。

 しっかりしてるようで、慌てるとこれだもんなー。

 水持ってきてやっか。


「ほら、水だ」

「ゴクゴクゴク―― っはぁっ、はぁっ、はぁっ……」


 得意の機動力を活かして、素早く水持ってきて渡してやった。

 俺じゃなきゃ、葛葉が窒息死してたね。

 なーんつって。


 どうやら窒息は免れたみてーだ。

 恐る恐る、って感じで正面の寺馬嶺と隣の皇見てら。


「ちゃんと噛んで、ゆっくり食べた方がいいですよ?」

「大丈夫か?」


 寺馬嶺と皇が口々に葛葉に声掛けてんな。

 まーそりゃそうだ。顔の色とか、やべー感じだったもんな。


「じ、じば、じばりょうサ、んと、しょう……皇君がなんでここに!?」


 ははは。葛葉、うろたえすぎだろ。


「保護者の会議が終わるのを待つ間に夕食を取ろうと思い、食堂に来たんですが、皆さんの姿が見えたので、ご一緒しようかと思いまして」


「さ、左様でございますですか……」


 葛葉のやつ、すっかりおとなしくなっちまって、静かにマーボー食い始めた。

 今更おしとやかなフリしても、おせーだろ。

 普通、このテーブル見つけた時点で気付くだろーによ。

 ま、これ以上つついても縮こまるだけだな。そっとしとくか。



 その"葛葉騒動"が終わってすぐ、皇が突然声上げた。なんだ?


「あ! 申し遅れました! 僕は"すめらぎ 翔大しょうた"と申します」

「俺は"寺馬嶺じばりょう 貞三さだみつ"です」


 皇に続いて、寺馬領も自己紹介始めた。

 はっとしたような感じで、赤神さんも自己紹介。


「試験で一緒の部屋に居た、凄い受験者だよね?

 俺は"赤神あかがみ かい"。

 この子は雪乃ゆきの。よろしくね」


 そっか。赤神さんと皇と寺馬嶺、お互いに名前も知らねーんだったな。

 赤神さんも自然に受け入れてたから、自己紹介忘れてたんだろー。

 でもよ、そこで最年少の皇が言い出すってのが、なんか笑っちまうよな。

 赤神さん、しっかりしてるようで、大らかっつーか、抜けてるっつーか、そんな感じの人なのかもなー。


「貴方とは今日初めてお会いしましたが、赤神さん、と仰るんですね。

 ちょっと紛らわしいので、魁さん、とお呼びしますね」


「はは。先日、心霊治療の先生に、も同じこと言われたよ。紛らわしいからって」


「紛らわしい? 赤神なんて珍しい苗字、誰と間違えんだ? ――あ!」


 ここで俺、気付いちまった。


 つーか、誰か指摘してやれよ。


「赤神さん、受験番号のバッジ、付けたままだぜ?

 つーか、赤神さん着替えねーのか?」


「ああ……取るの忘れてたよ。

 あと、俺はツナギで来たんだ。

 家に帰るまでこのままだよ」


 赤神さん、笑いながらバッジ取って、荷物の中に入れた。


 まあ、別におかしくもねーけど、ツナギ着てると、なんかの作業員みてーに見えちまう。


 ん? バッジに隠れてた刺繍ししゅう、"轟組とどろきぐみ"って書いてんな。


「車三つ重なった漢字なんてあんだな。

 それ、なんて読むんだ? くるくるまー?

 あ、車積んであるからスクラップか?

 それにそのツナギ、ぱっと見、所属不明だよな。

 何とか組って、土木会社か?

 とりあえず赤神さんの師匠は、仏教とか神道とかの組織に属してねーんだろうけどよ。

 まさか、海外の特殊訓練生とかじゃねーよな?」


 なんとなく疑問に思ってたこと、一気に聞いちまった。

 だって、赤神さん、謎過ぎんだろ。


「そうだね…… 多分そういう組織とかには属してないんじゃないかな?

 めんどくせえ、って言いそうだし」


 ふっと葛葉見たら、なんかマーボーにスプーン突っ込んだまま、ポカンと口開けてら。


「そのツナギの文字……

 とすると、やっぱり魁さんは、あの"赤神"なんですね」


 今度は皇が、なんか納得したようなこと言い出した。

 よくわかってねーの俺だけか?


「俺は赤神だけど…… "あの"、って言われても、ちょっとわからないな。

 神社関係の話かい?

 俺は次男だから、跡継ぎじゃないんだけどね」


 っつーか、赤神さん自身もよくわかってねー感じじゃねーか。


「おめーら、なんだ? 俺にはさっぱりわかんねーよ。

 もったいぶってねーで教えてくれよ」


「マキ。ああ、マキ。なんで気付かないの。

 何度も見てるでしょ、そのツナギ……」


「ん? ああ。今日ずっと見てるぜ?」


「違うわよ! 合宿で! いいえ、地獄の底で見たでしょ!

 胸にその文字が入った黒いツナギ!

 その字は"とどろき"って読むの!

 あの轟教官の"とどろき"よ!」


「あ!!!!!」

「ええ!?」


 そうだ。轟教官が、こんな黒いツナギ着てたな!

 あー、なんで気付かなかったんだ!


「じゃあ、赤神さんは轟教官の弟子なのか!?

 つーか、なんで赤神さんもびっくりしてんだよ」


「いや、轟さんが君達の教官してたなんて知らなくてね。

 合宿って、皆で集まって訓練したのかい?

 それは、楽しそうだね?」


 合宿――

 有意義だったか、っつったら全力でイエスだが、楽しかったかっつうと――


「めっちゃくちゃキツかったわね」

「ぶっ倒れる奴続出だったな。最後まで続かねー奴も多かったし」

「僕も厳しい修行はしていたつもりでしたが、あそこまではなかなか」

「正に現世の六道地獄」


 皇と寺馬嶺まで、げんなりした顔してるが、そりゃそうだぜ。


 "力"の強さで組分けされっけど、ぜってー無理だろってメニューやらせんだもんなー。

 死ぬ思いでやりゃーなんとかなっちまうから、限界をほんの少しだけ超えるとこ、見極めてんだろーな。

 夜はみんなぐったりで、騒ぐ気力も残ってなかったぜ……


「……轟さん、あまり評判が良くないみたいだね」


「いえ、修行としては素晴らしいものですよ。そう、修業としては……」


「そうなのかい? 俺も轟さんに指導されたけど、若くないから甘やかされたのかな?」


「ちぇっ。なんだよー。轟教官も弟子には甘えのかよー」


 そんで、訓練所で覚醒してから今日までの修行内容を聞いてみた。


 結論。赤神さんは、やべー人だった。


 なんつーか、精神的なとことか価値観とかが、根本的に違うっつーか。


 "乙級"取ることが最優先で、そのための特訓は必要な修行って考えてっから、地獄を地獄と思ってねーんだ。


 しかも普通に仕事も家事もしながら、一か月ちょいの修行で"乙級"取ったんだぜ?


「わりぃ。轟教官、全然甘くねーわ。むしろ赤神さん、体大丈夫なのかよ?」

「心配してくれてありがとう。今のところ何ともないよ」

「今聞いた修業メニューで体壊さねーって、それもすげーな」

「体力には自信があるからね。なんとかやってこれたよ」


 俺と赤神さんがそんな話してる間、皇と寺馬領もなんか話してた。

 赤鬼がどうとか言ってた気がするが、豆まきの話か?

 俺は聖徳太子じゃねーからな。

 詳しい内容はよくわかんねー。


 葛葉は、代わる代わる守護星様達に見とれつつマーボー食ってた。


 時々皇に話振られて相槌打ってたみてーだけどな。


 ありゃあ、話の内容覚えてねーだろーな。


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