【⑤-3/6】【20】午後は体力測定みてーなやつ
午後二時!
うっし! しっかり休んで 完全に回復したぜ!
昼は一時間でも良かったかもな!
さあ、午後の部開始だ!
でも……葛葉はまだ回復しきってねーみてーだ。
声掛けるべきか?
いや、皇とか寺馬嶺ならまだしも、俺が声掛けても、うぜーだけだな。
ここは、心の中だけで応援しとくか。
まずは受験者全員が体育館に集合して、"身体能力測定"だ。
学校の体力測定を拡大したようなもんだな。
俺は術とか特殊技能がねーから、この測定がかなり重要だ。
俺はスピードが持ち味だからな。
敏捷系の測定は、かなり上位だぜ。
反復横跳びとかな!
他にも動体視力、反射神経、持久力とかも測定するが、俺はそっちもまあまあ自信ありだ。
ただ、パワー系は平凡な数値だな……
走って跳んで、ボール投げて投げつけられて――
色々やったが、一時間ちょっとで全部終わった。
受験者は全部で百人以上だから、結構かかったな。
成績は、全体的に前回より伸びた感じがするぜ。
結果が表示されてるモニターを見に来たんだが――
「お。俺、敏捷、反射、視力、持久は全部十位以内で、敏捷なんか二位だぜ!」
「ほんとだ! すごいじゃない! マキ、修行頑張ったもんね!」
「へへっ。てーしたこたぁねーよ」
一緒に修行した葛葉にカッコつけても意味ねーけど、めちゃくちゃ修行頑張った結果だ。
次の"力"系の測定は、またクラスごとに分かれる。
みんな、結果見て体育館からバラバラ人が出てくな。
「俺等も部屋に戻ろーぜ」
「そうね。すぐ次の測定始まっちゃう」
そんで、出口の方振り返ったらよ。
人垣の後ろから、あの猫連れたオッサンがモニター見てた。
でけーから目立つなー。
腕組みながら、無表情でモニター見てた。
結果、あんまし良くなかったんかねー。
なんか考え込んでるみてーで動かねーな。
ほっといたら次の測定に遅れそーだし、声掛けとくか。
「おい、オッサン。次の測定始まっちまうから、早く移動した方がいいぜ?」
「ん? ああ、君は同じ部屋の。
……そうか、すぐ次の測定だったね。
試験は初めてだから、勝手がわからなくてね。
声を掛けてくれてありがとう。助かったよ」
「にゃあ~」
肩に乗ってる猫までペコって頭下げてきた。
……かわいいじゃねーか。
ちゃんと礼言える奴はいい奴だって、ばーちゃんが言ってた。
オッサン達はいい奴だ。
葛葉はオッサンと猫の両方にやられて、なんかアヒルみてーな口になって手を腹の前でもちゃもちゃしてる。
その気持ち、わからんでもねー。
俺等がそのまま体育館を出たら、オッサンも少し離れて後ろに付いてきた。
「ねえマキ。"A以上"の部屋で全然知らないの、オジサマだけじゃない?
こう言っちゃ悪いけど、オジサマはランク"A"で私達と同じくらいの実力みたいだし、将来一緒に仕事するかもしれないわ。
自己紹介くらい、しときましょうよ」
葛葉が、キラキラ笑顔で提案してきた。
「それもそうか。天才連中と違って、一般人の俺等は協力して仕事に当たる事も多そうだしな」
間違っちゃいねーから同意したが、葛葉がこの笑顔のときって、半分は別のこと考えてんだよな。
仕事のため半分、猫とオッサンに近付くため半分、だな。
まあいーか。ちょっと歩くの遅くしてオッサンとの距離詰めてっと。
「オッサン。同じクラスだし、自己紹介しとくぜ。
俺は "高尾 槇久" 埼玉に住んでる」
「私は "遠野 葛葉" です。マキとは幼馴染で、同じく埼玉在住です」
オッサン、突然話しかけられてちょっと驚いてんな。
さては陰キャか?
「そうか、自己紹介もしてなかったね。
俺は"赤神 魁"。
この子は"雪乃"だよ。
俺の実家は東北だけど、今は東京に住んでる。
高尾くん、遠野さん。よろしくね」
「にゃー」
雪乃って名前なら、雌猫だよな。
うーん。しっかしこの猫すげーな。
前脚上げて挨拶してきたぜ。
使い魔なら普通なのか?
「赤神ってーのか。よろしくなっ。
で、俺達は同期だけどよ。結構な年上を呼び捨てにすんのは、きもちわりー。
敬語は使わねーが、赤神さんって呼ぶことにすんぜ」
「うあああ雪乃ちゃんかぁわいいいい……」
葛葉は葛葉で、悶えてら。
その気持ち、わからんでもねー。
「にゃあっ」
一声鳴いたと思ったら、雪乃ちゃんが葛葉の肩に飛び乗って顔擦り付けてる!
うお、いいなあ葛葉……と思ったら俺にも来てくれた!
か、かわいい……
「ああ……雪乃ちゃん行っちゃった……」
葛葉が恨めしそうに俺を見てんな。
って、すぐにまた赤神さんに戻ってっちまった。
主人の赤神さんに戻ったなら、葛葉も諦めがつくよな。
つーか、俺が男だからか?
雪乃ちゃんは俺にすりすりしてくれなかったぜ。ちぇ。
「にゃん!」
「雪乃のお許しが出たよ。君達とは仲良くしてもいいそうだ。女の勘、かな?」
お許し……? まあ、今の行動見れば察しは付くか。
女の勘、はなんだかわかんねーが、なんかの比喩だろーな。
――お互いの自己紹介が終わったところで、丁度部屋に着いた。
さあ、次の測定だ。
ところで、"A"とか"S"とかのランク判定されたけどよ。
これは、自然体の状態で"力"を測定した基本的なもんなんだ。
で、これからやる測定は、自然体じゃなく、"力"を解放したときの強さ、増幅率、総量、回復力、感知、なんかを見るやつだ。
俺がまあまあ自信あんのは、回復力くれーか。
特殊な能力がありゃ評価に反映されっけど、俺はそんなもんねーわ。
ま、勝ち負けじゃねーし、精一杯やるだけだ。
◆◆◆
部屋で待機してると、職員が来た。
隣の部屋に測定の準備してあっから、全員隣に移動だとさ。
隣の部屋には、測定用の器材が用意されてた。
びっしり札が貼ってある箱に入って指定の動作すっと、札が"力"に反応して測定結果がわかるっつう仕組みだ。
これは前回試験でもやったな。
なんか、札が違うっぽいが、詳しくはしらねー。
ランク測定の"ゲート"と似たようなもんだろな。
人数もすくねーし、すぐ俺の番が来た。
いっちょ、やってみっか!
まずは"力"を解放したときの強さだ。
"力"出しっ放しにすっから、きちーんだよなこれ。
んで、"力"を解放しながら一気に増幅させんのを何回かやって、その増幅率を測定する。
そのまま"力"の欠乏症状出るまで放出し続けて、放出量から総量を測定。
そこからの回復経過で回復力の測定だ。
ふー。終わった終わった。
時間はみじけーが、この試験も疲れるぜ……
おっと。もう全員の結果が出たみてーだ。
たった十人くれーだしな。
基本、上位は各測定内容で"S"以上連中の順位入れ替わるだけだったが、俺は回復力で二位に食い込んだぜ。
そしたら、黒い方の花鳥宮が俺んとこ来て、めっちゃガン飛ばしながら、
「野蛮な猿には、お似合いの能力ですわね!」
とか言って去ってった。
あいつは―― 回復力三位か……
つーか、初の会話がそれかよ!
いや、俺が喋る前に去ってったから、会話ですらねーな。
くっそ! なんでわざわざ嫌味言われなきゃいけねーんだ!
やっぱムカつく奴だな! ムッキッキー!
葛葉は全体的に"A"の中間~上位で"S"の牙城は崩せなかった。
でも葛葉には、"治癒の才能"ってースペシャル能力があるからな~。
総合が"A"標準以上なら合格すんだろって、師匠も言ってた。
赤神さんも"A+"のやつと互角ってとこだった。
さすが歳食ってるだけある、つったら失礼かもしんねーが、結構すげーな。
赤神さんの特殊技能は使い魔の雪乃ちゃんが居ることだけ、か?
使い魔関連は、この測定に関係ねー技能だな。
動物とは喋れねーし、あんましややこしい指示出せなそうなんだよな~
一応、一般的に使い魔が妖怪化してからしばらく経てば、会話できるようになるらしーが。
ま、時間がかかりすぎるってんで、使い魔採用する奴は少ねーんだ。
「赤神さんすげーじゃん。
"A"判定の中じゃトップクラスじゃね?」
集中力が必要な感知の測定始まってっから、周りの邪魔しねーようにしねーとな。ひそひそっと。
「そう……なのかな?」
なんか、あんまし実感なさそうだな。
やっぱ、試験は勝負じゃねーってことだな。
「私は今のとこ、いいとこなし。
もっと修行しないと、治癒の才能が腐るわね……」
「へえ。遠野さん、凄い才能があるんだね。
俺は心霊治療に助けられたことがあるから、治癒の才能がある人は尊敬してるよ」
「えっ、あっ、はい。それほどでも……」
葛葉、褒められて赤くなってやんの。
ふつーにすげーんだから、堂々としてりゃいいのによ。
「お? 俺の番みてーだ。パパっとやってくるぜ」
俺、感知はあんまし得意じゃねーんだよな。
まあ"A"の最低限はあると思うが――
感知の測定は、幾つか置かれてる"力"を込められた石から、指定の条件に一致する石を選ぶんだ。
毎回石の数とか条件が違って、一番"力"が高いのとか低いのって感じで指定される。
俺が"B"のときは九個正解だったんだが、十個目からいきなりレベル上がんだよな。そこが"A"の境目らしーぜ。
んで……今回の結果は十一個。
やっぱし"A"の下の方だった。まあ基準値はクリアしてるみてーだけど。
お、葛葉も終わったみてーだな。
「私は十五個だったわよ。マキには勝ったわね」
「つーか、感知は"B"の頃から葛葉の方が上だったろ。
元々勝ってんのにわざわざ勝ち宣言すんなっつの」
「えへ。私は全体的にマキに一歩及ばないんだもん。
たまには自慢させてくれてもいいでしょ?」
「葛葉には治癒の……いや、まあいいか。負けたぜ!」
十五個だと、"AA"のあいつと一緒だな。
なんだかんだで"A"のトップクラスじゃねーか。
心霊治療は患部の状態を正確に把握する必要があるから、感知能力大事だ、っつってたもんな。
さて、今度は赤神さんか。
赤神さんは全体的にレベルたけーから、葛葉くれーまでは行くかもな。
お、始めたみてーだ。
あんまし悩んでる感じもねーし順調そうだが、どんな感じかねー?
――そろそろ悩み始め…… ねーな。
――んん? なんか測定長くね? 今何個目だ?
あ……試験官が測定終了って……
"乙"だとこれ以上の問題用意されてねーとか言ってんぞ……?
皆ザワついてんな…… まあ、そりゃそうだ。
あの歳に、あのガタイだぜ?
フィジカル方面じゃなくて感知測定でカンストは予想外過ぎんだろ!?
つーか、なんか、本人も結果にびっくりしてるみてーだが。
「赤神さん、とんでもねーなおい!?」
「オジサマ、凄いですね!?」
思わず声が高くなっちまった。まあ、そんくれービビったんだよ。
やべっ! 何人かこっち見たな。邪魔しねーようにしねーと……
「こんな特技あったなら、ちょっと教えてくれてもよかったのによー」
「いやあ……他人と能力を比較したことが無くてね……俺も驚いてるよ」
「なんで当の本人が驚いてんだよ!
つーか、修行の過程でなんとなくわかんだろ!?」
「それが、俺の師匠は感知系が不得手らしくてね。
感知系の指導はされてないんだよ」
マジ? 修行無しであれか? 驚きがマシマシの超特盛だぜ。
まー、ここはひとつ、親しみを込めて文句でも言ってやっか!
「ンだよー。赤神さんも天才系かよー。仲間かと思ったのによー。ついでに高身長で男前の上にめっちゃかわいい猫まで侍らせてよー。いいよなー」
「マキ、なんか後半はちょっと違うような気がするわよ……」
「にゃーぁ」
雪乃ちゃん、なんか照れてるみてーに頭おさえてら。
それにしても、いいタイミングで鳴くよなー。
赤神さんだけじゃなく俺等の言葉もわかってんのかね?
「はは。それを言うなら、高尾君も遠野さんも得意分野があるじゃないか」
「そ、そうかぁ? へへ。それほどでも―― あるけどよぉ~」
「もう! マキ、恥ずかしいから!」
「ほら、まだ測定が終わってない受験者もいるからね。静かにしよう」
「あ、そうだな……」
「す、すみません……」
赤神さん、すげー才能あるってわかったのに落ち着いてんなー。
余裕あんなー。
モテんだろーなー。




