【⑤-1/6】【18】試験開始だぜ!
今、十月上旬だ。
東京郊外にあるでっけー試験会場に【特殊調査員】の"乙級"試験受けに来た。
俺は、高尾 槇久 十七歳。
よく目つきわりーって言われる。
髪が硬くてセットとかできねーから、短くしてる。
毎日牛乳飲んでんだけど、あんま身長は伸びてねー。
身長順で並んだら、真ん中くれーだ。
でもな、俺にゃこのコンパクトサイズのボディを生かした機敏さがあるからな!
「十年に一人の逸材、人呼んで"令和の大天狗"たぁ俺のことだぜ!」
「――それ、自分で名乗ってるやつじゃない。
マキは確かに才能あると思うけど、精々"天狗小僧"でしょ? 今のところ」
「う、うっせうっせ! 葛葉うっせ!」
おっとっと、つい口に出してたみてーだぜ。
突っ込み入れてきたこいつは、遠野 葛葉
俺と同じ十七歳。
黒髪ポニテで、身長は俺よりちょい下くれー。
明るくて、さっぱりしてて、ちょいミーハーで、口うるせー。
そういうとこは、かーちゃんみてーだ。
小四の頃、こいつと山で探検してたらバケモンに襲われた。
そこを師匠に助けられて、一緒にこの道に入ったんだ。
幼馴染で、俺の相棒で、ダチだ。
……ダチだって言ってんだろ!
ちなみに俺等、今回で三回目の"乙級"受験だ。
前回は俺も葛葉もあと一歩だったみてーなんだが、なかなか合格できねーんだよな。
試験会場に着いて早々、いつも通りバスケのコート四面分くれーの、ひれー体育館に誘導された。
体育館には折り畳みの机とパイプ椅子がズラッと並んでて……
ざっと見た感じ、半分以上席埋まってんな。
殆どが知ってる顔か、その関係者って感じだ。
皆、受験番号のバッチを胸につけてる。
俺等"丙級"は、"強化合宿"に招集されて、合同で訓練すっから、結構知り合いも多いんだぜ。
それに、何度も試験受ける奴が殆どだからな。
訓練で会わなくても、自然と顔見知りになってく。
ちなみに、全然知らねー奴でも同じ服装の奴が集まって座ってっから、大体の所属はわかるぜ。
あー。やっぱ、今回は俺のダチ居ねえや。
修行で怪我したっつってたからな。今回は見送ったか。
今回で俺が先に"乙級"取っちまうが、恨むなよな。へへ。
俺と葛葉も更衣室に行って、山伏が着るような"行者服"に着替えてる。
師匠が行者系の所属なもんでな。
着るのも畳むのも面倒で厄介な行者服だが、所属の服着るのが通例になってっから、普通のジャージとかだと浮いちまう。
体育館に入ってどこ座るか見回してたら、葛葉が密かに騒ぎ出しやがった。
「あ、寺馬嶺サマと翔大きゅんよ!
……やっぱり、いつ見ても輝いてるわよね~」
「ちっ。イケメンと見たらすぐに騒ぎやがって。これだから女は……」
ちょっと顔が良くて、名家の生まれで、才能抜群で、他人を見下さねーだけじゃねーか。
「もー……いちいち突っかかってこない!
あの方々は、俳優とかアイドルみたいなものなの!
小さい男はモテないわよ!」
「う、うっせ! わかってら!」
葛葉が言ってる二人のことは強化合宿で知ったんだが、試験会場で見るのは初めてだな。
一人目は、袈裟着てこの部屋の真ん中辺りに座ってる奴。
寺馬嶺 貞三
京都だか奈良だかにある、裏の寺社系統括する寺の奴だ。
裏ってのは【特殊調査員】関係って意味な。
だから、一般にはあんま知られてねー寺のはずだ。
俺より幾つか年上で、"丙級"なのに"喝破"って二つ名があるくれーすげー奴なんだが、寺の事情で今まで"乙級"は取ってなかったらしい。
無口でイケメンで高身長……一八〇cmくれーか?
坊主なのに頭は丸めねーで、ろんぐへあー。後ろで縛ってる。
あーはいはい。かっこいいかっこいい。
試験会場に来てる女の約五割はこいつをチラチラ窺ってる。
まあ、わからねーでもねー。
くそっ! うらやましい!
二人目は、寺馬嶺の隣に座ってる平安貴族みてーな服の子供。
皇 翔大
京都の方にある陰陽師系統括する家の奴。
現代は一般に陰陽師なんか居ねーから【特殊調査員】の専門職みてーなもんか。
「しっかし、さすが"神童"だな。小学生でもう試験かよ……」
いや、七歳で"乙級"資格あり、なんて言われてたって噂だからな。
むしろ、なんで今まで"乙級"取ってねーのかって話だ。
まあ寺馬嶺と同じで、家の事情とか、なんか色々あんだろな。
「中一よ! 小学生だったのは冬の合宿でしょ!
翔大きゅんの歳を間違えないでよね!」
「こ、こまけーこといちいち覚えてられっかよ!」
いかにも子供な坊ちゃん刈りのくせに、超がつく美少年なもんで寺馬嶺と人気を二分してる。
試験会場に来てる女の、残りの約五割はこいつをチラチラ窺ってる。
まあ、わからねーでもねー。
くそっ! うらやましい……が、男目線じゃ寺馬嶺の方が憧れるな。
男の方はとりあえずこのツートップだが、女の方にもかわい……有名なのが居るんだぜ。
ああ、ちなみに、これから挙げる奴等とは話したこともねーぞ。
俺は一般人だからな。
当然、寺馬嶺とか皇みてーな名家の奴とも交流はなんかあるワケねー。
じゃあなんで、あいつ等の事知ってるかっつーとだ。
学校一の美人とか、学校一のイケメンとか、話したこともねーのに情報だけ入ってくんだろ? あれと一緒だ。
合宿の参加者内で有名人の情報が回ってくんのよ。
まずは、男ツートップの前の方に座ってて、取り巻き集団従えてる双子の姉妹。
"白百合" こと 花鳥宮 奏 と、
"黒薔薇" こと 花鳥宮 響 だ。
長崎にあるエクソシスト系組織の奴だな。
姉の奏は白いドレスにストレートの白髪ロング。おっとり優しい癒しのお嬢様! だから皆、裏で"白百合"って呼んでる。
……あれは"しらが"じゃねえ! "はくはつ"だ!
妹の響は黒いドレスにウェービーな黒髪ロング。
高飛車な物言いで嫌われそうな感じだが、双子だけあって姉と同じく超美人なもんでファンは多い。
その黒ずくめの容姿とトゲトゲしさで、"黒薔薇"って呼ばれてる。
あーいうのはムカつくんで、俺はパス。
……まあ、目ぇ合わせたことすらねーけどな。
「マキ。なに一人笑ったり怒ったりしてんのよ」
(……ははーん。視線の向きからして……花鳥宮さん辺りね。
なによ、自分だってかわいい子見たらジロジロ見てるじゃない!)
「いや、なんでもねーよー?」
隣に座ってる葛葉から、なんか疑いの眼差を感じる
……だが、今回は口に出してねえからな! バレてねえだろ!
次は最前列に座ってる、南国のドレスみてーなカラフルな服に木の札とか下げてるやつが、那覇 首里
あー、沖縄の琉球王国にある神殿の巫女の子孫だか何だかだ。
……合宿で流れてくる噂だぜ? そんな詳しい情報なワケねえだろ!
外見は浅黒い肌にゆるっとした長髪の南国娘だけどよ。
災難引き寄せるタイプらしくてな。周囲を巻き込んで大惨事だ。
俺はお近づきになりたくねー。触らぬ神に祟りなしだ。
あとは……後ろの方の隅に座ってる
久氷 霧呼
白無地の着物に薄紫の帯、って服装だが、なんと髪が水色!
しかも地毛らしい!
北の人間らしく、肌も白くてきれーだ。
なんか、北の妖怪で雪女ってのがいるじゃねえか。
その血が混じってるって噂だけどな……まじか?
無口なんで、俺は久氷が話してるの見たことねえ。
あとは……こいつも色々有名だな。
久氷の横辺りで、黒髪ツインテールに黒のゴシックの服着て黒猫連れてる
真除 伸子
いつも黒猫となんか会話してる風を装ってる、ちょっと痛いヤツだ……
そりゃあ、年寄りのマスターなら、ずっと使役してる使い魔と話せるって話だけどよ。
俺等の歳じゃ……あいつは、いわゆる"中二病"ってやつだな。
先祖代々、"越中富山の薬売り"らしい。つまり秘薬とか霊薬調剤する家系だな。
"真除"の秘薬は業界じゃそれなりに知名度あるらしい。
俺はまだ見習いだから、しらねーけど。
それ以外で見知った奴とか目立つ奴とかは……
ん? 入り口に、なんかでけーヤツが来た。
「おい葛葉。
なんか、黒いツナギの、でけーオッサンが来たぞ……」
「ほんとだ。大学生、でもなさそうね。
……あ、肩に白猫乗せてるわよ」
黒のツナギで、肩に白猫乗せてる大荷物のオッサン……?
しっかし、あんな感じのツナギ、どっかで見たことある気がすんだよなー。
気のせいか? まあ、黒いツナギなんてどこにでもあるか。
あんなん着るのは、外国の養成機関か、師匠が組織に所属してねーから正装がねー奴か、試験の慣例知らねーで普通に作業着で来たか、だな。
にしても、あの歳で"乙級"受けんのか……?
ここで俺は閃いたぜ。
「ああ! 試験官じゃね?
なんでこの待機所に来たのかは、しらねーけど」
「胸に受験番号のバッチつけてるから、受験者みたいよ?
見た感じ、三〇歳前後かしら?
あの年齢の受験者は初めて見るわね」
「やっぱし受験者なのか……
あの歳で合格しても、その後厳しい思うけどなー」
「あの年齢で受験してるくらいだから、きっとオジサマには何かつら~い事情があるのよ。察してあげましょ?」
オジサマか……葛葉はあのオッサンのこと気に入ったんだな。
イケメンっつーか男前な感じだが、気に入るのも、わからんでもねー。
なんかいい感じに落ち着いた雰囲気だからな。
はっきり言葉で説明はできねーけど。
「あと、猫ちゃんもかわいいしねっ!」
そんな話してる間に、オッサンは場内を見回してから、後ろの方の席に行ったみてーだ。
久氷、真除とは反対の隅か。
オッサンが座るのを見てたら、葛葉が呻くような声で呟くのが聞こえてきた。
「うえー……あいつらも来たわよ。あーやだやだ」
葛葉の、この毛虫でも見たような口調は……やっぱしか。
今来たのは、十人くれー取り巻き引き連れた、図体でけーし態度もでけー奴。
当然、皆に嫌われてる。
ガッコでイキるならまだしも、試験会場でイキってどうすんだろな。
あと、連中は全員私服だ。
すげー目立つ。
初めに見たのは強化合宿だったっけな。
あいつ等は俺等が受験する前から居るらしいが、俺等から見ても明らかに修行足りてねーってわかんのに、奴等の師匠は何考えて試験に出してんだ?
「あいつら、あのオジサマの方に……行ったわね……」
奴等、新顔で目立つオッサンに突っかかってく気だぜ。
頭数揃えてっから、絡まれたらめんどくせーんだよな……
俺も前に絡まれて、周りの奴まで巻き込んで大騒ぎしたなー。
初受験だろうに、あのオッサンも運がねえ……いや、初受験だから絡まれんのか。
オッサン、色々目立つしな。
手出しされたら割り込むか……
「おいオッサン! この辺の席は俺等が使うからよ!! そこ退けや!」
相変わらず、うるせーけど、薄っぺらい声だ。
他の受験者にも聞こえるよう喚いてんだろ。うぜー。
みんな、奴等の方見てんな。
【特殊調査員】って、一般人には極秘の国家資格だぜ?
あーいう示威行為するような性格が行動評価で大幅なマイナスになってんのも、わかってねーんだろーな。
オッサン、不思議そう顔して首傾げてんなー。
そりゃそうだ。他にも、空いてる席は結構あるもんな。
奴等に何か話しかけてるみてーだが……
「俺等がそこ使うってんだ! うだうだ言ってんじゃねえ! さっさと退け!」
さて。オッサンどう出る? 葛葉も飛び出そうかって身構えてんな。
葛葉のそういうとこ、好きだぜ。
ああああ、す、好きってのは、そういう意味じゃねーぞ!
って、いつの間にかオッサンが席立ってら。
はは、オッサン苦笑してるぜ。
逃げたっつーか、譲ったって感じだな。
「オッサン、大人だな……実際、大人なんだけどよ」
「そうね。試験前にトラブルが起きなくて良かったわ」
「でけー図体して、尻尾巻いて逃げんのかよ!
とんだ腰抜け野郎だな!
ツレの猫ちゃんと、にゃんにゃんしてろや! ぎゃははは!」
大荷物持って移動してるオッサンに、罵声浴びせて大笑いしてやがる。
それでもオッサンは沈黙か。
他の受験者もオッサンの様子に気付いてるみてーだし。
こうなると、奴等はうるせーだけのチンピラ集団だな。
「俺等の出る幕じゃねーらしいや。なあ、葛葉……」
「翔大きゅんの激レア、心配そうな表情いただき! 癒されるわ~」
……こいつは……
――それからちょっと待ってたら、マイク持った職員が出てきてアナウンス始めた。
「受験生の皆さん。それでは"力"の測定を開始します。
受験番号を読み上げますので、出入り口から廊下に出て、職員の指示に従ってください」
お。もうそんな時間か。
いよいよ試験開始だな。
本作品をお読みいただき
ありがとうございます
もし気に入っていただけたのであれば
評価や感想など
何かしらの反応をいただけると
とても嬉しいです




