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通話を終わらせ流に向き直ると、彼は口を尖らせていた。
「ほら、いいってさ。早く迎えに行こ? 待たせたら彼に悪いし」
拗ねた様子の流にニコッと笑い携帯を返した。彼の手を取り駅へと今来た道を歩きだす。
普段は手を繋いで歩いたりしないけど、こんな時は別だ。
流は大人しくついて来るが顔を明後日の方向に向けている。今だに拗ねているようだ。
「……流? 何、怒ってんだ?」
オレが問うと、はっとしたようにこちらを向いた。
「いきなりで面白くなかっただけ。怒ってるように見えたなら謝る。……悪かった」
緩く首を振ってから、謝る流。
流にとっては急展開過ぎてついて来れなかったみたいだ。
「あのさ、好きならちょっと強引にいかないと、好意は示せないよ?」
「別に。……西岡はそんな事、気にしてないし」
「気にしてないフリだったらどうする? 素直になれよ。気持ちが離れてからじゃ遅いんだぞ。恋愛には駆け引きも大事だけど、恋愛初心者の流じゃ無理だろ。ストレートにいくのが一番だ」
好きな人に関する事では誰しも些細な事で不安になったりする。相手からの好意が感じられなければ、なおの事。
平気そうに見えていても、本当は違うかもしれないんだ。
「駆け引きって……そんなんじゃない。西岡にだって付き合いがあるんだ。束縛するような真似、出来ないだろ」
流の言ってる事は解る。
だがしかし! 淡泊過ぎだろ!? 付き合い始めの今が一番楽しい時期なのに!
「流、西岡と一緒に居るのは嫌?」
「だったら付き合ってない」
流はオレの質問に即答した。でも、と続ける。
「ベタベタしたら周りに変に思われるだろ? 迷惑かけるのは嫌なんだ。……嫌われたくない」
好きになったから。と、続ける流。
不安なんだろう。どこか迷子の子供のように心細そうだ。
怖いよな、好きな人に嫌われるのは。でもな? それは相手だって一緒なんだ。流だけじゃない。
「それは西岡も同じじゃないかな」
驚いたような流を見てさらに続ける。
「気遣うのと距離をとるのは一緒じゃないよ? 相手を不安にさせるだけだ。今の流みたいに」
馬鹿だなあ流は。その不安は隠しちゃダメだ。ちゃんと西岡にぶつけて、二人で乗り越えなきゃ。
我ながら説教臭くて嫌になる。
だけど仕方ない。流が泣くような事態になるよりましだ。
「わかった、わかりましたよ。てか、お前は俺の母親か!!」
笑いながらズビシと突っ込む流。
ちょっと痛い。強めにしているのは照れ隠しだろう。ホント、素直じゃないんだから。
流のどこか吹っ切れたような顔をみてそう思った。
「行こう」
いつの間にか止まっていた足を動かしオレ達は歩きだす。
繋いだままだった手を引かれ、再び駅へ向かった。




