7月
本編よりも数カ月前の時間軸からのスタートです。
今日は終業式。
明日からの夏休みを前に、幼馴染みの流を家に呼んだオレは、今、待ち合わせ場所に向かっている。
着信音に携帯を見ると流からメールがきていた。
内容は恋人を紹介したいから一緒に連れてくる、とのこと。相手が西岡だとも。
「え!?」
マジで!? ようやく付き合う事にしたんだ。
思わず頬が緩む。
流から西岡君に口説かれてるって前から相談されてたんだ。
オレは彼とは直接会った事は無いけど、その内容から伝わる彼の人柄は申し分ないって思う。同性相手でも臆さず告白する、その勇気を称えたいくらい。
それに流もだんだん彼に惹かれていってるって判ってたし。
だから、同性だからと躊躇する流を前にして凄くもどかしかったんだ。早く付き合っちゃえばいいのにって。
元々ノンケだから仕方ないんだけどね。
でも流にはちゃんと好きな人と幸せになってほしくて、二人が恋人になる日はいつになるやらと、ずっとヤキモキしてたんだ。
※ ※ ※ ※ ※
「久しぶり! 流の幼馴染みだって聞いてから、また逢いたいって思ってたんだ!」
はじめましてと挨拶する前に怒涛の勢いで言われた。取られた両手をぎゅっと握られる。
ニコニコと笑い掛けられてちょっとトキメク。
笑顔やめてー。イケメンなだけに破壊力が……って、どこかで会ったっけ? 記憶に無いんだけど。
「どうも、久しぶりデスね。西岡君」
「覚えててくれたんだ! 嬉しいな」
「西岡君こそ覚えててくれたんだね。忘れられてるとばかり思ってたよ」
覚えていません。とは言えず、愛想笑いを顔に張り付けたまま言った。
「そういや前に二人が会ったのってゴールデンウイーク直前だっけ? もう2ヶ月半……いや3ヶ月近くたつんだな」
オレが覚えてなかったのを察したんだろう。流が助け船を出した。
GW直前? ……ああ! アレか!!
「みんなでカラオケ楽しかったよね」
あの日、オレは流と二人で遊びに行こうとしていた。その途中で流のクラスメート達に会って……無下にも出来ず、何だかんだで無理やり連れて行かれたんだよな。
舌打ちしたくなる気持ちを押し込めて、オレは笑顔をキープする。
流の恋人に悪印象、持たれたく無いからね。
※ ※ ※ ※ ※
オレと流は今、二人並んでオレの家に向かって歩いている。
西岡とは挨拶を終えた後、駅で別れた。
「よかったのか? お付き合い初日に」
デートしたかったんじゃないか? オレとの約束はキャンセルしたってよかったんだ。流の幸せの為ならそのくらい我慢するのに。
「いいんだよ。俺も西岡もベタベタするの苦手だから」
オレは両手に視線を落とした。
そうなのか? 凄くスキンシップ好きな感じだったけどなぁ。
「なら家に招待すればいい」
「いきなりじゃ、迷惑だろ?」
考えるより先に言葉が出ていた。それはとても名案だと思った。
なのに流は否定的だ。
「何でだ! 好きな人と一緒に居たいと思わないのかよ」
流の鞄に飛び付き、中から携帯を取り出す。
「ちょ、遊貴? 何すんだ」
流が何か言っているけど、無視無視。恋人からの呼び出しに喜ばない訳ないだろ。
呼び出し音が止まり、話し出す。
「あ、西岡君」
「!! ちょっとまっ……」
空いてる手で流の口を塞ぐ。
うるさいなぁ。ちょっと静かにしててくれ。
「うん、遊貴だよ。今、話して大丈夫? ……あのさ」
流が暴れ出す前にさっさと用件を伝えるべく、話し出した。
~補足~
・『西岡』は本編の『切人』と同一キャラです。
・主要キャラ三人の内、流・切人は本来ノンケで、遊貴だけ真性のゲイです。
・遊貴の一人称が本編の『僕』から『オレ』に変わっています。理由については後々、本文中にちょろっと出てきます。




