表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピ・エ・ロ ~流の場合~  作者: 岩石
遊貴の場合
18/33


 たどり着いたアパートのドアを開くと、うだるような外の暑さとは対照的な冷たい空気が流れ出てきた。

 部屋の中へと駆け込み、求めていた姿を見付けて走り寄る。


「流〜!」


「おー、お帰り〜」


 のんびりとオレを出迎え両腕を広げる流。オレはその胸に飛び込んだ。流を吹っ飛ばさないように、直前でブレーキをかけるのは忘れない。

 包み込むようにゆるりと抱きしめられた。

 暑さで火照ったオレには、エアコンで冷やされた流の体はひんやりとしていて気持ちがいい。

 オレを包み込む腕。ゆっくりと頭を撫でていく手の感触。服越しに伝わる命の鼓動。

 それらを全身で感じて漸くホッと息をつけた。

 子供扱いされているのは理解しているが、甘やかされているだけなので気にならない。


「って、お前ら何してんだ! 離れろ!」


 まるで母親に甘える幼児だなと内心で自嘲していると、誰かの怒声が響いた。


「わっ」


「ぅお」


 割り込んできた腕によって強引に流から引き剥がされ、数歩後ろへとたたらを踏む。

 目の前に現れたのは西岡だった。彼は転びかけた流の腕を掴んで支えている。

 何で彼がここに? 流は今日1日オレの為に空けてるはず。

 体勢を立て直した流が西岡の腕を振り払った。


「切人! いきなり何すんだ」


 流の言葉にギクリとした。

 今、『切人』って呼んだ? そんな……嘘だろ。


「何すんだじゃねぇ! 俺が居るのに二人の世界に入ってんじゃねーよ」


「だからさっさと帰れって言ったでしょ。居座ったの君ですよ、切人君?」


「ふざけんな! 遊貴の心配してたのは、お前だけじゃねーんだよ!」


 オレは二人が言い合うのを黙って聞いていた。

 ……二人の距離感が近くなってる。どうしてだ。一体いつの間に?

 少なくとも、付き合い出した先月はどこかよそよそしかった。夏休みになってからも部活やバイトですれ違ってばかりで、デートどころか会ってすらないと聞いている。

 それなのに何で?


「……何で……」


 ポツリと無意識に声がもれた。

 オレの小さい呟きに反応したのは流だ。


「ああ、切人? 遊貴達の待ち合わせ場所教えろって押しかけて来たんだよ。マジうるせーの」


 オレの呟きを別の意味で受け取った流は、西岡がここに居る理由を話した。


「なっ……当たり前だろ! 一人で行かせたって聞いて、黙ってられるか! ……遊貴、怪我してないか? 春紀って奴に酷い真似されなかったか?」


 前半は流に後半はオレに向かって言う西岡。

 本当にオレを心配していたか? そのくらい電話するだけで事足りるだろ。流に会いに来るための建前じゃないのか?

 胸に渦巻くモノを押し殺し、オレはニコリと笑顔を作る。


「大丈夫。何もなかったから。凄くあっさりとした別れだったよ」


 オレがそう言うと西岡は安心したように表情を緩めた。

 その顔に本当に心配していたんだと悟る。それと同時に自分の卑屈な考えに羞恥を覚えた。


「心配かけてごめん。来てくれてありがとう」


 せめてと今度は心からの笑顔を西岡に向けた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ