表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/41

17-2 ゴブリン?

「なんだよ、今の!」


 飛ばした闘気が家を抉り、人を吹き飛ばした。初めて見る闘気の使い方に、勇希は、度肝を抜かれた。――あれが闘気なのか。


「私、キールを見て来るわ!ユーキは、ダルトンの援護!」


 おれも!っと、言おうとしたが、先にミーファに指示を出されてしまう。勇希が返事をする間もなく、ミーファは、崩れた民家の裏へと走り去ってしまった。

 せめて頭上のステラだけでも手渡せば良かった。と、後悔しながらステラを抱き抱え、ステラと顔を突き合わせる。


「援護って言われてもな。おまえを乗せたまま、おれがあんな奴と戦えると思うか?」


「キュッキュ!」


 勇希には、ステラが『出来る』と、励ましてくれている様な気がした。


「分かったよ。ステラもいつも通り上手くやれよ?落っこちたって、助けてやれないんだからな。」


 ステラが何度も頷く。

 勇希は、ステラを頭の上に戻した。


 村の中央では、大男がダルトンたちに近寄り品定めを始めた所だ。


「コビットに、漁村の連中か?カストールの変人どもが、こんな所に集まってるとはね!っはっはっは!」


 未だに死んだ兵士をぶらぶらさせて、大男が笑っている。


 それに対して、赤毛の女性が激怒した。三本に分かれた矛先を大男へと向けて啖呵を切る。


「誰が変人だよ!このっデブ!そっちのが変人じゃないか!こんな化物に村を襲わせやがって!」


「化物?君こそ失礼じゃないか?そいつらは、(れっき)とした人間だぞ?化物呼ばわりするなんて、酷いのじゃないか?」


 ――このゴブリンが人間!?どう言う事なんだ?

 勇希は、耳を疑った。


「人間だと!?」


 ダルトンがゴブリンの死体を見て声を荒げた。


「君たち、知らずに戦ってたのかい?良いだろう。見せてやるよ。こいつ、死んじまったかな?んー、微かに息があるか?」


 大男が左手に持つ兵士に問い掛けている。


「まあ、やってみれば分かるか。」


 開き直った大男が紫色の小さな欠片を取り出し、矢の刺さった兵士の口の中にねじ込んだ。無理やり突っ込んだ太い指を口の中から抜き取る。

 すると、死んだ兵士の体がゴキゴキと骨を鳴らして、骨が皮膚を突き上げ変形し始めた。どんどん皮膚が暗い緑色に変色して行く。


「お!お!いいね、いいね。」


 大男は、わくわくしながら、その様子を楽しんでいる。


「グギェアアア!!」


 矢の刺さった兵士が産声を上げた。帽子から角を突き出し、ゴブリンへと姿を変えて叫び狂う。


「なんて悍ましい事を!」


 銛を構えた男性が悲痛な叫びを上げた。

 そんな男性に大男が軽蔑した視線を向ける。


「君たちも似た様なものだろ。そう突っかかるなよ。」


「俺たちをこんなのと一緒にするな!こんな非道、許される訳がない!」


 そう言い返した男性に同調して、女性が攻撃の意を示す。


「あの世で、女神様の裁きを受けな!」


 武器を構え直す二人の体をよく見ると、所々に人の体と違った特徴が見える。

 銛を掴む指の爪は、鋭く尖り、指と指の間には、水掻きの様な膜がある。その逞しい腕には、体毛の代わりに鱗が薄っすら生えていたり、少し尖った耳の下には、エラの様な三本の切れ目が入っている。


「君は、そこのコビットをやるんだ。私がこの男の相手をしよう。」


 大男は、残った一人の兵士に指示を出した。


「はっ!」


 と、兵士は、勢いの良い返事をし、ダルトンに体を向けて刀を抜いた。

 奥では、既に女性とゴブリンの戦闘が始まっていた。


「俺は、コメティアの戦士ナイツ。名を聞いておこう。帝国の兵士よ。」


「ふむ。いいだろう。私は、帝国軍魔科学捜査隊小隊長ゴゴメール様だ。私のお眼鏡に適う実力なら、あとで研究素材にしてやろう。まあ、それほどの実力があるように見えないがね。」


「けっ。言ってくれるな。」


 こうして、三つの戦いが始まった。


 勇希の事は、眼中に無いみたいだ。一騎討ちに横槍を刺していいものなのか。援護しようにも、武器がナイフしかない。――近づくと、邪魔になるよな?

 どうしたものかと、勇希は考える。とりあえず、使える物がないか、辺りを探してみる事にした。この際、使えるのなら、彼らの武器でも何でも良かった。


 女性の戦士は、モヒカンの襟足から伸びる二本の編まれた髪の毛を揺らしながら、ゴブリンの攻撃を銛で上手く受け流す。


 ドーン、ドーン、ドーン!


 ゴブリンが斧を豪快に振り下ろす度に、地面がひび割れ砂埃が舞う。――相変わらず、とんでもない怪力ね!

 女性は、銛をクルクル回転させてから、左手を前に突き出し、右手で銛を脇に挟んで構えた。荒れ狂う水流を連想させる様な闘気が身体中から流れ始める。


昇竜瀧(しょうりゅうそう) (えい)


 彼女が銛を突き出すと、水流が矛先を追って流れ出す。その矛先は、高速で回転し、三つに分かれた銛先が一本のドリルの様な渦と化す。

 勢い良く突き出し、ゴブリンの左肩をドリルが貫く。ゴブリンは、痛みで悲鳴を上げる。


「グギァアアア!」


 水流が肩を突き破り、ゴブリンの左肩から先が宙を舞う。その最中、ゴブリンの右手が彼女の背中を掴んだ。


 バシッ!


「なっ!?」


 これには、彼女も油断した。


 ゴブリンは、彼女が銛を突く勢いを利用して体を一回転させた。彼女を掴んだ右手が右肩を追って回転する。女性の脚と腕は、遠心力で大きく外に投げ出され、まさに宙ぶらりんの状態となった。

 その無防備な状態のまま、ゴブリンは、民家へ向けて彼女を放り投げた。


 ドゴーン!


 鈍い轟音と共に、壁に穴が空く。バキバキと、音を立てて民家の天井が崩れ始める。

 巻き上がる粉塵と共に民家が崩れ、彼女の体は、瓦礫の下敷きとなってしまった。


「グギェエエエ!」


 ゴブリンが叫ぶ。

 勝利の雄叫びかと思われた叫びだったが、そうでは無かった。ゴブリンは、左肩を押さえ悶えていた。足の裏を地面に叩きつけ、痛みに苦しんでいる。


「ビビアン!!」


 ナイツが女性を心配して名前を叫んだ。


「私を相手に、余所見をしている余裕なんて、あるのかねえ?」


 ゴゴメールがハルバードを突き刺してきた。ナイツは、瞬時に避けるが、ハルバードの斧の刃が胸元を掠める。


「くっ!」


 ピッと、一本の切り傷が胸に描かれる。


「大技の後は、隙が生まれ易いと教わらなかったのかね?私の部下は、優秀だろう?あの様な姿になっても、しっかりと体が覚えている。日頃の訓練の賜物だねえ。」


「そんな部下を使い捨てみたいにしやがって。人の命を何だと思ってる!」


 ――その時だった。


「うおおおお!!」


 勇希が大声を上げながら、ゴブリンに向かって駆け出した。


「ん?なんだい、あの小僧は?武器も持たずに滑稽だねえ。っはっはっは!」


「おい!無茶だ!」


 勇希は、再びゴブリンの顔面を拳で殴り飛ばした。勇希の拳には、革のベルトがぐるぐる巻きにされてある。ベルトは、倒れていたゴブリン兵から拝借した物だ。

 その為、怪我の心配もなく、思いっきり力を込めて殴る事が出来た。斧や槍も見かけたが、使えない武器を拾うよりマシだと判断したのだ。


 勇希に殴られたゴブリンは、村の反対側の出口付近まで飛んで転がり、動かなくなった。

 ゴゴメールは、これを見て、目が飛び出すほど驚いた。


「ええー!?私の兵を殴り飛ばしたね!!」


「あはは……すげーや。」


 ナイツも言葉を失うほど驚いている様子だった。

 そんなナイツに勇希が声を掛ける。


「彼女の事は、任せて!」


 勇希は、崩れた民家に向かって走り出した。


「ああ、頼んだ!」


 ナイツは、キリッとした顔をゴゴメールに向けた。ゴブリンを殴り飛ばした勇希の姿を見て、感化された様だ。――俺もこんな奴に、負けてはいられない。

 ナイツは、気合いを入れ直す。


龍人化(ドラゴニックフォーム)


 ナイツの皮膚の鱗が硬くはっきりとしたモノに変化して行く。顔付きも変化し、目と鼻の形も変わった。目は丸くなり、鼻は平らとなる。唇は、耳の方へ伸び、まるでトカゲの様な顔だ。

 背中には、背骨に沿ってヒレの様な突起が幾つも出現しているが、尻尾は生えていなかった。


「全力で行かせて貰うぜ!」


「おうおう。帝国泣かせの龍人化ですか。怖い怖い。」


 そう言うゴゴメールは、全く怖そうにせず、ナイツを嘲笑った。


 そして、ハルバードと銛がぶつかり合う。


 村の中央に、青と紫のオーラが立ち昇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ