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ハズレ勇者の気まま暮らし  作者: 桜惡夢
~Another World Life~
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島を探検


 セナイン島に向かった俺は、ケロロン族の助けを求める声に応え、地震の元凶と思しき主(ぬし)の居るトホウク島へ。

 我ながら、「何を遣っているのやら……」と思う。

 勇者って、呪われた因果でもデフォルトで持ってる?

 そんな風に思ってしまうのも仕方が無いと思います。


 トホウク島には光の翼を出して飛んで行きます。ええ、一度見られたら、もう気にもしなくなりますよ。

 あとは、“使える物は何でも使え”精神です。


 トホウク島はセナイン島よりも大きく、火山島みたいな印象を受けますが、非常に緑の豊かな島です。

 セナイン島が人為的に管理されている緑地とするなら、トホウク島は秩序が調和した自然美の緑地。

 各々の良さや利点が有る以上、比較は無粋でしょう。


 セナイン島側の海岸に一ヶ所だけ有る人工物。

 船を着ける為の桟橋が見えたので、其処に降ります。

 そのまま島の中心部まで飛んで行ってもいいんですが、ケロロン族が主と共に築き上げ、守ってきた礼節と伝統に敬意を払って、という感じです。

 まあ、地震と無関係だった場合に此方等が礼節を欠いたという事に為らない様にする為です。

 ちょっとした事で話が拗れる事は、よく有りますから。緊急時だろうと、自分達の都合や価値観を押し付ける事は後々の火種や対立を生むだけですから気を付けましょう。つい、うっかりで遣り勝ちの事なので。



「此処がトホウク島の入り口か」



 桟橋に立ち、視線を山の方へと向ける。

 桟橋から山に向かって続くのは岩を削って造った階段。手作業による物だと判る凹凸の跡が長い時と風雨によって緩やかに削られて出来た味わいが良い。

 俺達の造った神殿等も、こういう風に成って欲しい。


 それと綺麗な真っ平らではない為、滑り難いのも良い。見た目と機能性は必ずしもイコールだとは限らないので。実際に使ってみて気付く問題って有りますからね。


 因みに、セナイン島には数ヵ所の船着き場が有った。

 船はゴンドラ型の物ばかりだったから、島の回りでのみ漁をしているのだと思う。

 そんなにもケロロン族の戦闘力は高くなさそうなので、大型種の居る可能性が高い深度が有る場所には近付かない様にしていたのでしょうしね。

 上空から見た感じだと、二つの島の周囲は浅めであり、両島の中間を中心にして1キロ程すると、一気に深くなる様に海の色が濃くなっていましたから。

 これまで外洋に出る理由も無かったんでしょうね。


 そんな事を考えながら石段を5分程、上って行ったら、開けた円形の広場に出ました。

 直径は10メートル程。一回り内側に相撲の土俵の様な円形の一段高い舞台が有る。

 自分が上がってきた、その対面には山から続く洞穴が、奥の見えない暗い口を開けている。



「島の主は彼処から遣ってくる、という事なのかな?」



 誰が答えてくれるという訳でもないので独り言。

 まあ、それに反応して主が現れてくれれば……と。

 そんな都合の良い展開を期待する様な気持ちが全く無いという訳ではない。出来れば、そうなって欲しかった。

 何故、そう成って欲しい時には振っても無駄なのか。

 どうして、その逆でばかり、振りは成立するのか。

 誰か、この難問を解いてくれないでしょうか。



「……まあ、来た以上は殺るしかないんだけどね」



 正直、放置──と言うか、共存が可能なら、態々殺して人化させる必要は無いんじゃないかな?

 そう言いたいけど、皆は反論すると確信出来る。

 この件に関しては、俺の味方は居ません。


 何にしても、地震の原因は調べる必要は有りますから。この先に進まない、という選択肢は有りません。残念。




 洞穴は入り口でも直径10メートル近い大きさ。

 入り口──広場への出口から緩やかな登りの傾斜が大体100メートル程続いた所で、下りに変わる。

 その登頂部分には半径20メートル程の空間が有って、巨体の主でも容易く方向転換が出来ると思える。

 悩ましいのは、道が二つ(・・)有るという事。

 一つは登ってきた道と同じ位の傾斜の下り坂。真正面に有る事から如何にも本命っぽい。


 もう一つは右手の斜め奥に見えている、平坦に近い位に緩やかな下り傾斜で、直ぐに曲がっている道。

 脇道に逸れるっぽい道だけど──気になる。

 ゲームだと、こういう道の先にこそ良い物が有るのは、よく有る話ではないでしょうか?


 何方等に進むか?

 フッ、悩むまでもない事だ。

 状況を考えれば即断即決──右手奥の道だっ!

 はい、欲には勝てませんでした。






「欲張った俺が愚かでした……」



 そう思わず口にしてしまう程の猛省を強要される。

 まるで絡まったまま、揺すりに揺すられた結果、物凄い絡まり方をした紐状の何かみたいにグネグネとした道。

 一本道だったけど、それだけに突き当たりまで来てみて何も無かった事にはショックを隠せません。

 ……冷静に考えてみると可笑しいんですけどね。

 最初は気付きませんでしたが、道は曲がる度に少しずつ縮まっていっていて、今は匍匐前進でギリギリ進める位のスペースしか有りません。

 はい、そうです。島の主が通れる筈は有りません。

 つまり、この道は主とは無関係という事。

 その道自体も掘り進めて出来た物ではない事が壁を見て判ります。これは水で削れたか、溶けて出来た跡だと。

 それも、地下水脈が有って、という訳では有りません。雨量が一定量を超えた場合に限り、この道に染み出して、流れが出来るのでしょう。

 最初は小さな空間、小さな流れでも、長い年月を経て、此処までの規模にまでなったのだと考えれば自然の凄さを感じられる場所だと言えます。

 …………はい、判っています。

 何を言っても言い訳ですし、時間の無駄なのは。

 落胆する資格は俺には有りません。欲に負けた身です。潔く認め、浪費した時間を取り戻す為に戻りましょう。




 大空間に戻り、気合いを入れて本命の道へ。


 「最初から行けよな」と思った、其処の貴方!

 そんな貴方は俺の同類、欲に負けるタイプです。

 何故なら、結果を見てから文句を言うのだから!


 ──なんて事を考えながら下って行きます。

 外の広場から考えると、丁度“へ”の字の様な道。

 上り下りの傾斜は殆ど同じで、下りの方が倍以上の長さをしていますから。


 凡そではありますけど、やはり、島の中心部の地下へと道は続いている印象です。



「──で、また選択を迫られる訳だ……」



 真っ直ぐに下った先で左右に分かれた道。

 パッと見では道の大きさには差が有りません。

 他の情報──壁や床や天井等を見ても……難しい。

 主が通る際に擦ったり、削ったりした後が有れば一目で判別が出来るものを……

 いや、文句を言える立場では有りませんけどね。


 ──とは言え、此処で考え込んでいる時間も無駄なので兎に角、何方等かに進んでみます。

 よし、リベンジでチャレンジという事で右に決めた!




 …………これは正解を選んだのかな?


 そう思う俺の前には再び分かれた道が現れている。

 右は下り、左は上り。立体駐車場の通路みたいだ。


 此処までは左右に曲がりながらも緩やかな下りのみ。

 此処で上りというのは、とても気になります。

 気になりますけど……主の住処が上に?

 「絶対に無い」とは言えませんが、可能性は低いかと。話を聞いた感じだと如何にも火山関連っぽいので。

 ──とは言え……という訳で、棒倒し(他力本願)で決めます。

 ……左か。神々は俺に「上に進め」と。

 判りました。それを信じて進みましょう!




 神様が助けてくれるなんて有り得ないっ!


 はい、行き止まりでした。

 ああいや、正確には外に繋がっていましたよ。出た先は断崖絶壁でしたけどね。

 それだけに眺望は素晴らしかったです。

 あと、島の周囲を飛びながら観察してくれていたというパーピア族の妻達の姿も有りました。

 軽く情報交換をした所、待機していたネーレイア族にも来て貰っているそうです。

 フェリスさん、有難う。素晴らしい内助の功です。

 でも、あまり語る(・・)のは控えて下さい。マジで。


 分かれ道まで戻り、右の下りを進みます。

 程無くして、通路内が熱気を帯びてきました。

 「ついに来たか!」と口角も自然と上がります。



「上り下りだけに、上げて落とすとか……」



 思わず膝と手を着き、項垂れながら、怨嗟の如く文句を言ってしまうのは仕方が無いと思います。

 期待させておいて何も無し。単なる行き止まりでした。チックショーッ!!



 結局、二つ目の分かれ道まで戻って、左へ。

 渦を巻く様に一方向にのみ曲がり続ける道。

 しかし、その角度がキツくなる程に道は大きくなる。

 主が、その巨体を擦らない為、なんでしょう。

 加えて、深くなる程に熱気が強まってきます。

 「今度こそ……」と言うか、「いい加減に……」と。

 そう思いながら一本道を進んで行った先に──



「…………え? マグマ? これ、マグマ?」



 思わず、そう言ってしまう光景が待っていました。

 ブクブクと煮え滾る様に気泡が沸き出しては破裂する。その様子は確かにマグマっぽい。

 でも、ぽいだけです。

 はい、体感する熱量が低過ぎ(・・・)ます。

 これ多分、サウナ以下です。天然の温泉──源泉よりも此処の温度は低いかもしれない。


 いやまあ、普通に亀なら茹で上がるからマグマになんて棲めませんけどね。主は普通ではない……筈……

 ……もしかして、普通の亀なのかな?

 異世界だからとは言って、何もかもが異常・異質だとは限りませんよね。


 地下の筈なのに岩壁は赤みを帯びて明るく照らされて、周囲が見易い事は助かります。

 でも、コレがマグマではないのだとしたら、何故、赤く光っているのかが気になります。

 もしかしたら、この水面…………水でいいのかな?

 いや、気にするのは止めましょう。

 水の中──底に光源が有るのかもしれません。

 ……そうすると、主が光源? 身体──甲羅に光苔等が付いているとか?


 ……それを、どう遣って確かめるのか。

 …………あ、見た目以上に冷たい。


 皆が見たら、絶対に注意されている所でしょうね。

 何とかなると思いながらも、危険な可能性が高い場所に手を突っ込んだ訳なので。

 まあ、詳しく説明する必要は無いので黙って置きます。言ったら、怒られると判っていますからね。


 触れた感じ、水で間違い無さそう。真水か海水かまでは判りませんけど、水は水です。

 特にはピリピリしたり、ネバついたりといった違和感もしないので触れても大丈夫そうです。


 赤いのは、そう見えているだけ──ではなく、赤い水。手で掬って見ても赤いので。

 しかし、錆臭さや異臭の類いは無し、と。

 水温は……地下水としては温かいかな。

 多分、10℃前後だと思います。


 ──となると、この気泡は主の物? 呼吸かな?

 もしかして、普段は眠っている?

 年に一度しか食事をしないとか?

 まあ、その辺りも含めて、会ってみれば判る筈です。


 マグマではなく、水なら潜れますからね。

 いざ、主と御対面と行きましょう。



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