今隠そうとしてたにゃ!
食事を済ませてデザートを出そうと冷蔵庫に向かい、業務用冷蔵庫を開けるとそこにはキラキラに煌めくデザートが冷えていた。
「キンキンに冷えてやがる」
りょうは少し恥ずかしそうにトレーごとデザートを出した。
プリンのようなカップデザートである。
キラキラと輝くのはザラメ砂糖をブリュレしたものだった。
クレームブリュレである。
「さあどうぞ」
表面をパリッと割りカスタードクリームをすくい食べる。冷たいクリームと、カリっと香ばしく焼かれた飴がほろ苦く美味しい。
「何これ!プリンのようなカリっと香ばしくて」
「とろとろ…カリとろ…」
トロンとした顔で食べるニーニャとファルカが幸せの吐息をもらす。
食卓には静寂が訪れている。
カチャカチャとカトラリーが鳴る音だけが響いている。
「あぁ…食べ終わってしまった」
「おかわりはあるのかしら?」
「訓練を倍にすれば…」
様々な感嘆の声が聞こえる。
「おかわりは一人一つまでね」
みんなの顔が明るくなった。
「「「「「おかわり!」」」」」
声が重なり雰囲気も明るくなる。
幸せな甘い香りが再び食卓に訪れたその時、玄関の呼び鈴が鳴らされた。
「こんばんは、旦那様」
コランドが獣人族を連れてやって来た。
「エルフにゃ!」
「良かったにゃ!無事だったにゃ!」
嬉しそうに声をあげるニャーレたち猫耳族は、クレームブリュレを頬張ろうとするエルフたちと目があった。
「何か美味そうなものを食べてるにゃ!」
「こちとら心配で飲まず食わずで駆けつけたのにゃ!」
「フシャー!」
とエルフたちに飛び付くニャーレたち。
「すまなかった!忘れていたのだ!」
「にゃにが忘れていたのだにゃ!」
「フシャー!」
と顔を引っ掛かれているエルフたち、ファルカによって引き剥がされ事をなきを得た。
「いったいどういう経緯なんだ?」
りょうは冷静にと経緯を聞いた。
「そりゃ怒って当然だよ」
呆れてエルフたちを冷たい目でみる。
「それはなんにゃ?」
ニャーレの視線が、エルフたちが食べようとしていたクレームブリュレに向けられる。
「……」
エルフたちは、何も言わずにクレームブリュレを隠そうとした。
「ちょっと待つにゃ!」
ニャーレが手を伸ばし、慌てて隠そうとしたエルフからクレームブリュレを奪い取る。
そして、表面の飴をパリッと割って口に運ぶ。
「……美味すぎるにゃ!」
幸せそうな顔になったニャーレだったが、すぐにエルフたちを睨みつける。
「て言うか、今隠そうとしてたにゃ!」
「してない……」
「ウソをつくにゃ!」
またしてもエルフと獣人族の揉み合いが始まった。
それを見かねたりょうが声を掛ける。
「腹を空かせてるなら、飯でも食べるか?」
「良いのかにゃ?」
「ああ。せっかく来たんだ。食っていけ」
こうして庭では急遽、バーベキューが始まった。
りょうは魚を次々と焼いていく。
香ばしい匂いが庭いっぱいに広がり、焼き上がった魚が獣人族の前へ並べられていく。
「こんなにも美味しくて大きな魚、初めてにゃ!」
夢中になって魚を頬張るニャーレたち。
すると一人の猫耳族が、魚を食べながらりょうを見つめる。
「にゃーの初めてを奪ったにゃ!」
「……」
「もうお嫁にいけにゃいにゃ!責任とるにゃ!」
「いや、魚を食べただけだぞ?」
りょうは困った顔をする。
そんなやり取りをしながらも、獣人族たちは次々と焼かれていく魚を夢中で食べていく。
そして、誰かがぽつりと言った。
「……この街に住みたいにゃ」
その言葉に、周囲の獣人族たちも顔を見合わせる。
「住みたいにゃ!」
「こんな美味しいものが毎日食べられるにゃ?」
「みんな連れてくるにゃ!」
魚を食べて満足したニャーレたち獣人族は急いで自分の集落に帰って行ったのだった。




