燃えるような赤と白
燃えるような、煮えたぎるような赤。
赤い液体はグツグツと煮えたぎる。まるで血のような赤。山の屋敷の一角ではむせ返るような匂いに包まれていた。その赤い液体には臓物が浮かびそこに切り刻まれた肉片がさらに入る。
グツグツと真っ赤な液体に白く今にも崩れそうな物体Xがゆっくりと沈められた。
「………旦那様、これ以上は………」
「ふふふははは、はーはっはっはー!」
主は許さなかった、握る刃を止めることなく切り刻まれていく…
「もう少しだ…もう少し…」
更に液体は赤身を増す………
「こっ、こんなにも……血のような……」
少女の顔は恐怖のあまり引きつる
「ふふふははは、はーはっはっはー!」
男の笑い声が少女の消え入りそうな声を上書きするかのように掻き消す。
「あれも…これもだ……まだ足りない…」
「きゃーーーーーーーー!」
「出来たーーーー!」
りょうの声が響き渡る。
大きな鍋を両手で掴みながら…
「晩ごはんだよーーーー!」
「何なのだこの赤い汁は?」
「ホルモンチゲだよ!辛いよ~!」
辛党のノルンがきゃーきゃーと歓声をあげている。ちゃんと子供たちはトマト煮込みにしている。
大人のピリ辛ホルモンチゲは辛口に仕上げた。
「わたし食べれるかしら?」
「私は辛いの好物ですわ」
「ブレスを吐くドラゴンを舐めてもらっては困るのじゃ」
「今日もわくわくですー!」
いつもの家族の中に5人ほどエルフが混じっている。
先日から住み着いた500人のエルフからくじ引きで毎食5人我が家の晩餐に招待することになった。
りょうのご飯が人気で引っ切り無しにせがまれた結果こうなった。
「では、お手々を合わせて下さい!」
ノルンが大きな声で合図をする。
「いただきます!」
「「「「「「いただきまーす」」」」」」
一斉に鍋に手を伸ばす。
「私がよそおう!」
ファルカであった。最近分かってきたのだがファルカはアレなのだ!アレアレ!
そう! 鍋奉行!
全員によそわれて各々食べ始める。
「からーい!でも美味しーい」
「妾はもう少し辛くても食べれるのじゃ!」
ルシェは少し涙目で言う。
「辛いだけじゃなくて甘辛い?美味しいわ」
ニーニャも食べれたようだ。
アルトは興味津々で見ている。9歳には早いと思う。トマト鍋を美味しそうに食べる子供たちは、タントの話で盛り上がっている。
「にーちゃ、いっぱい活躍したらしいよ!」
「にーちゃ、かっこいいねー!」
「本当にね、あなたたちも頑張ってお勉強しましょうね」
ミリーとマリーがお世話をしながら言い聞かせている。
我が家の食卓は賑やかで幸せに溢れている。
「森の王よ!これは大変美味しゅうございます」
「そうだな、臓物料理と言えばあの者たちも好きだったな………」
「「「「「あっ!」」」」」
エルフたちは何か大切な事を同時に思い出したようだ。冷や汗をかきながら気まずそうにチゲを食べている。
「どうかしたのか?」
りょうが心配そうに尋ねるとエルフたちは猫の方を見ながら呟いた。
「………実は」
少し前、
エルフの集落跡地では獣人たちが一大決意を決めていた。
「やっぱり心配にゃ!」
「そうにゃ!お隣さんは大切にゃ!」
「みんなで探しに行くにゃ!」
「にゃーたちは先に足跡と匂いを追うにゃ!お前たちは長を呼んで追ってくるにゃ!」
「わかったにゃ!」
にゃ!っと合図をして獣人たちは駆け出したのであった。
そして今である。
「こっちにゃ!こっちにゃ!」
「お隣さんの足跡と匂いはこの先に続いているにゃ!でもこれ以上進めないにゃ!何でだにゃ!」
「お前たち、よく知らせてくれたにゃ!」
獣人族の長が村人を連れて合流した。
「エルフたちはこの先にゃ!」
「進めないにゃ!」
何か壁のようなもので進めなくなっている獣人族。
そこに、馬車が通り掛かった。
コランドたちであった。
「おや?この国で獣人族とは珍しいですね。この先に用ですか?」
「あっ...こんにちはにゃ!」
「にゃーたちは何も悪いことしていないにゃ!」
「お隣さんが行方不明で探して追ってきたにゃ!」
この国で獣人族は立場が弱く奴隷にされたり酷い扱いを受けている。コランドたち人間に警戒気味に訴え掛ける。
「ああ!エルフさんのお友達ですかね?」
「そうにゃ!心配にゃ!」
コランドはくすりと笑い
「良かったら着いてきて下さい」
さっきまで進めなかった場所が進めるようになった。
「不思議だにゃ!」
「着いていくにゃ!」
しばらく歩いている獣人族たちは鼻をひくひくさせている。
耳としっぽもピョコピョコ動いている。
「………魚の匂いがするにゃ」
ヨダレを垂らした族長がつい呟く。
「あはは!流石は獣人族ですね」
「ぐぅー、いい匂いにゃ!」
「あはは!お腹が空いているのですね、これ食べますか?」
コランドはメザシの束を獣人たちに見せてみた。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…喉をならしながらヨダレを垂らす獣人たち。
「お金はないにゃ!でも欲しいにゃ!」
「あはは、いいですよ。これは挨拶代わりのプレゼントと言うことで、えーと何人いるかな?30人ほどですね」
コランドは積み荷からメザシの束を30束族長に渡した。
「ありがとーにゃ!私は猫耳族の族長のニャーレですにゃ!」
メザシを全員に配るニャーレ
受け取ったメザシをみんなゴロゴロゴロゴロ言いながら食べだした。
「うまいにゃー!川の魚と違うのかにゃ?塩味が良いお味にゃ!」
「おっ!分かりますか、気に入ったのなら良かったです」
「「「気に入ったにゃー」」」
「「「「うまいにゃー」」」」
とコランドたちと獣人族たちはアルカディアに入った。
「なんだにゃ!魔素が消えたにゃ!」
「清々しいにゃ!」
気持ち良さそうに歩いている。
潮風が吹いて来る。磯の香りと魚の匂いが獣人族たちの鼻を刺激する。
「何か良い匂いがまたして来たにゃ!」
「ああ、海の潮風が吹いて来ましたね」
やはり鼻の良い獣人族。匂いの変化には鋭い。
町の住人たちが珍しそうに獣人族を見ている。
そして時間は山の屋敷の食卓と同期する。




