↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスワールドーー48歳のサバイバル馬鹿が異世界に放り込まれた結果、まず飯を作り始めるーー  作者: こっちのあっきー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/60

血脈魔法

バーベキュー大会は盛り上がり、酒も入って賑やかさは加速していく。ドンチャン騒ぎであった。


そんな中、


しばらくして、ようやく腹も満たされたのか、森のエルフたちは少し落ち着きを取り戻した。


りょうは彼らの方へ歩いていく。


「さて、そろそろ話を聞かせてもらおうか」


「っ!」


森のエルフたちの身体が一斉に固まった。


「やっぱり……気付いていたのか」


「最初からな」


りょうはあっさり答える。


「何でこそこそついて来るのかと思ってたんだ」


エルフたちは顔を見合わせる。

そして、一人の年長らしきエルフが前に出た。


「勝手に侵入してすまない。我々は迷いの森のエルフです」


「迷いの森?」


「はい。古くから、あの森で暮らしてきました」


りょうは頷く。


「それで、俺たちについてきた理由は?」


エルフは少し迷った後、口を開いた。


「……あなた方が、あまりにも不思議だったからです」


「不思議?」


「はい。魔物を恐れず、あれほど大きな群れを率いて森を歩く。そして、このような豊かな土地を持っている」


エルフは周囲を見渡した。


「あの川も、道も、建物も……私たちの知る世界とはあまりにも違いました」


「なるほどな」


りょうは苦笑する。


すると、別のエルフがニーニャを見つめた。


「……ところで」


「はい?」


「失礼ですが……あなたのご両親の名前を聞かせていただけませんか?」


ニーニャは少し考えてから答えた。


「おとうさんはアランです」


「……アラン?」


エルフたちの間に小さなどよめきが起こる。


「おかあさんはシルフィです」


その瞬間。


「シルフィ?!」


「まさか……」


エルフたちの表情が一変した。


「シルフィ様……」


「間違いない……」


ニーニャは驚いた顔でエルフたちを見る。


「シルフィを知っているんですか?」


その言葉に、エルフたちはさらに驚く。


「シルフィ様を……呼び捨てに?」


「え?」


ニーニャは不思議そうにする。


「私のおかあさんですけど……」


りょうも隣で苦笑する。


「そりゃそうだよな」


森のエルフたちは顔を見合わせた。


そして、年長のエルフが静かに口を開く。


「シルフィ様は……我々の村に残った最後のハイエルフでした」


「最後のハイエルフ……?」


「はい」


シルフィは村では姫として扱われていた。

古き血を最も濃く受け継ぐ者。

誰もが敬い、守るべき存在。


そんなシルフィのそばに仕えていたのが、アランだった。


二人はいつしか惹かれ合った。


しかし、周囲は二人の関係を認めなかった。


「シルフィ様はハイエルフの姫。アランは従者です。誰も二人の関係を認めようとはしませんでした」


「それで……」


「二人は村を出たのです」


ニーニャは黙って話を聞いている。

自分の知らなかった両親の過去。

その事実に、ただ驚いていた。


すると、一人のエルフがニーニャの前に跪いた。


「……血脈魔法を使わせてください」


「血脈魔法?」


「古き血を受け継ぐ者を確認するための魔法です」


エルフが両手を広げる。


淡い光がニーニャを包み込んだ。


しばらくすると、その光が強く輝き始める。


「これは……」


エルフたちが息を呑む。


「間違いありません」


「古き血が……」


「ハイエルフ……」


その場にいたエルフたちが、一斉にニーニャへ向き直った。


そして深く頭を下げる。


「ハイエルフの姫……」


「え?」


ニーニャが戸惑う。


「貴女のお名前は……?」


「ニーニャです」


「ニーニャ様」


「わ、私は……」


「我々にとって、あなたは姫です」


ニーニャは困ったようにりょうを見る。


りょうは苦笑した。


「ニーニャ、姫様になっちゃったな」


「りょう……」


「まあ、ニーニャはニーニャだけどな」


ニーニャが少しだけ笑う。


しかし、森のエルフたちの視線は今度はりょうへ向いた。


一人が震える声で呟く。


「……では」


「ん?」


「ハイエルフの姫が、あの方を慕っている……」


別のエルフが息を呑む。


「そして、あの方には……」


その視線の先。


ルシェがいた。


両足を大きく広げ、胸を張り、身体を反らしている。


「でーんっ!」


「…………」


エルフたちは固まった。


次の瞬間。


「神竜様ーーーーーー!!」


「ははーーーーーー!!」


エルフたちが一斉に地面へひれ伏した。


「え?」


りょうが目を丸くする。


ルシェも目を丸くした。


しかし次の瞬間には、いつものように胸を張る。


「気に入った!」


ルシェはさらに胸を反らした。


「妾は神竜なのじゃ!」


「神竜……?」


ニーニャが呟く。


年長のエルフが説明する。


「ホーリードラゴン……それは我々が古より神竜と呼んできた存在です」


「なるほど……」


りょうがルシェを見る。

ルシェは完全にその気になっていた。


「神竜なのじゃ!」


「はいはい」


「もっと崇めるのじゃ!」


「調子に乗るなよ」


「でーんっ!」


全く聞いていない。


すると、そこへモコモコが歩いてきた。


「クゥン」


エルフたちが一斉に振り返る。


「神獣様ーーーーーー!」


「ははーーーーーー!」


またしても全員が地面に伏した。


「クゥン?」


モコモコは首を傾げる。

何が起きているのか、まったく分かっていない。


その横ではルシェが満足そうに胸を張っていた。


「あれも神獣なのじゃ!」


「お前が言うな」


りょうは呆れながらルシェの頭に突っ込みを入れる。


「ペチン」


「はぅ!」


そしてエルフたちは、りょうを見る。


その表情には畏敬の念が浮かんでいた。


「……ハイエルフの姫を守り」


「神竜様と神獣様を従え……」


「これほどの豊かな土地を作り上げた……」


一人のエルフが呟く。


「あなたは……」


その場にいた全員が息を呑む。


「森の王……」


りょうは固まった。


「……は?」


ニーニャが隣で小さく笑う。


「りょう様、王様になっちゃいましたね」


「いやいやいや、俺はただの……」


「森の王様ーーーー!」


「ははーーーーーー!!」


エルフたちの声が響き渡る。

りょうは頭を抱えた。


「……なんでこうなった」


ニーニャは笑っている。

ルシェは胸を張っている。

モコモコは、


「クゥン?」


と首を傾げている。


しばらくして、エルフたちも落ち着きを取り戻した。


すると、年長のエルフが改めてりょうの前に立つ。


「りょう様」


「ん?」


「お願いがあります」


「何だ?」


「我々を……ここに住まわせていただけないでしょうか」


りょうは少し驚いた。


「ここに?」


「はい」


エルフたちは顔を見合わせる。


「迷いの森では、魔物が増えています。以前のように狩りをすることも難しくなりました。食料も減り、我々の暮らしは厳しくなっています」


りょうは黙って聞いていた。


「それに……」


エルフがアルカディアの町を見る。


「ここには食料があります。安全があります。そして……これほど豊かな土地があります」


エルフは深く頭を下げた。


「どうか、我々を受け入れてください」


りょうは少し考える。そしてニーニャを見る。

ニーニャも静かに頷いた。


「いいんじゃないか?」


りょうが答えた。


エルフたちが顔を上げる。


「本当ですか?!」


「ああ。ただし、住む場所や仕事については、アルカディアの決まりに従ってもらうぞ」


「もちろんです!」


「それと、いきなり全員じゃなくていい。まずは村に戻って、みんなと相談してからで良いんじゃない?」


「分かりました!」


森のエルフたちは何度も頭を下げた。


その日のうちに、彼らは迷いの森へ戻っていった。


そして数日後。


りょうたちが山で作業をしていると――


「りょう様ーーー!」


森の奥から大勢のエルフが歩いてきた。


「……多くないか?」


りょうが呟く。

ニーニャも目を丸くしている。


「あれ……全員ですか?」


先頭のエルフが駆け寄ってくる。


「りょう様!」


「どうした?」


「我々は決めました!」


「何を?」


「この地へ移住します!」


後ろを振り返る。


そこには、次から次へとエルフたちが現れていた。


「……何人いるんだ?」


「約500人です!」


「500?!」


りょうは思わず声を上げた。


「いや、ちょっと待て。500人って……」


「村の者たち全員です」


「全員来たのかよ……」


りょうは頭を掻く。


しかし、エルフたちの顔には迷いがなかった。


「ここで暮らしたいのです」


「山が……あまりにも豊かです。水もあります。食べ物もあります」


「そして何より……」


エルフたちはニーニャを見る。


「姫がおられる」


ニーニャが困ったような顔をする。


「私……姫なんですね」


「はい!」


即答だった。


「……そっか」


ニーニャは苦笑する。


りょうは周囲を見渡した。

アルカディアの山。豊かな森。清らかな水。

十分な土地がある。


「まあ……住む場所なら何とかなるか」


「ありがとうございます!」


エルフたちから歓声が上がる。


こうして、迷いの森で暮らしていたエルフたちの移住が始まった。


まずは住居を作る。


山の中でも、アルカディアの町から少し離れた場所。


りょうの家がある山の周辺だ。


エルフたちは森で生きることに慣れている。

木々を見れば、どこに家を建てればいいのか分かる。水の流れを見れば、水場もすぐに見つける。

そして何より、彼らは弓と魔法を使う。


作業は思った以上に早く進んだ。


「ここなら暮らせそうです」


「森もあり、狩りもできます」


一人のエルフが尋ねる。


「でも、魔物は?」


りょうは答えた。


「アルカディアの中には魔物は入れないんだ」


「……え?」


「結界があるからな」


エルフたちは顔を見合わせた。


「では……」


「ここでは安心して暮らせる」


「そういうことだね」


エルフたちは感動したように空を見上げた。


「……なんという場所だ」


「まるで神々の住まう地……」


その日の夕方。


りょうは移住してきたエルフたちのために料理を用意した。


大鍋で煮込んだ料理。


焼いた肉。


そして、河原で食べたバーベキューの残りも並べる。


「今日は歓迎会だ!」


「おおおおおお!」


エルフたちから歓声が上がる。


ニーニャも料理を配っていく。


「たくさんありますから、いっぱい食べてくださいね」


エルフたちは嬉しそうに料理を受け取り、次々と食べ始めた。


やがて、あちこちから笑い声が聞こえてくる。


こうして、森エルフたちの新しい暮らしが始まった。


彼らはりょうの暮らす山の周辺に住居を構え、森と共に生きる生活を始めた。


狩り。採取。農業。


そして、アルカディアでの新しい仕事。


これまで迷いの森で培ってきた知識と技術も、アルカディアにとって大きな力となっていった。


何より、彼らにとって大きかったのは……


もう、魔物に怯えながら暮らさなくてもいいということだった。


そして夜。


新しくできたエルフたちの集落から、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。


その中心にはニーニャがいた。


りょうはその光景を眺めながら、静かに呟いた。


「山も、ずいぶん賑やかになったな」


山から見下ろす町には、たくさんの明かりが灯っている。


人間。


エルフ。


そして、これから増えていく新しい仲間たち。


アルカディアは少しずつ、その姿を変え始めていた。


そして…


迷いの森のエルフ集落跡地に、カゴを背負った猫の獣人たちがたたずんでいた。


「あれ? あれあれ? あれーーーーーー?!」


迷いの森の中に獣人の声が響き渡る。


「ないにゃ!」


「何がないの?」


「村がないにゃ!」


「いや、村はあるでしょ」


「ないにゃ! エルフの村がないにゃ!」


猫の獣人たちは、辺りを見回した。


確かに建物は残っている。

使われていた家も、倉庫も、井戸もある。


だが……人の気配がまったくない。


「おかしいにゃ……」


一人の獣人が首を傾げる。


「ここにエルフたちが住んでたんだよね?」


「うん。間違いないにゃ」


「じゃあ、どこに行ったの?」


「知らないにゃ!」


「知らないの?!」


「知らないから困ってるんにゃ!」


猫の獣人たちは顔を見合わせる。


そして、その場に残されていたものを調べ始めた。


「……食料もないにゃ」


「道具もほとんどないね」


「逃げたのかな?」


「でも、これ……」


一人の獣人が地面に残った足跡を見る。


森の外へ向かって、いくつもの足跡が続いていた。


「……みんな、どこかへ移動したんだにゃ」


「じゃあ追いかける?」


「追いかけるって、どこまで?」


「分かんないにゃ」


「分かんないのかよ!」


また、森に声が響いた。


猫の獣人たちは困ったように耳を垂らす。


そして、その中の一人が、ふと顔を上げた。


「……でも」


「ん?」


「エルフがいないなら……」


猫の耳がピンと立つ。


「ここ、空いてるってことだよね?」


全員が顔を見合わせた。


「…………」


「…………」


「住めるにゃ?」


「住めるんじゃない?」


「ご飯は?」


「……探せばいいんじゃない?」


猫の獣人たちの目が輝いた。


「住めるにゃーーーーーー!」


迷いの森に、再び大きな声が響き渡った。


「違うにゃ! 住んでどうするにゃ!」


今日はエルフたちから食糧を売ってもらうはずだった。だが、集落に着いてみれば、もぬけの殻。


このままでは村に帰れない……エルフの弓で狩る獲物は、獣人たちが捕まえる獲物とは段違いに大きい。


昔から取り引きをして共存して生き残ってきた二つの種族。

その一つが、突如消え去ったのだ。


「はぅ! まずいにゃ!」


にゃーにゃーと相談する獣人たち……だが――


「いったい何処に行ったのにゃーーーーーーー!」


森の中に獣人の叫び声が木霊するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。