ノトスから王都へ
ノトスに戻って来たりょうたちは、グレオール男爵邸に向かった。
「リディア王女殿下はこの後どうされるのですか?」
「明日の朝には王都に向かい出発します。一か月近く掛かりますので」
「そうですか、道中お気をつけ下さい」
「りょう様にはお世話になりました。王都に戻ったらすぐにでも連作障害の改善案を各領地に通達しなければいけませんので。春まで時間が御座いませんもの」
グレオール男爵に難民の受け入れを行う予定だと伝えた後、護衛騎士団の余っている収納スペースを確認したところ、入るだけ鹿とイノシシを入れてもらった。
鹿10頭とイノシシ3頭が限界だった。
残りは真冬なので馬車に積んでもらったがやはり鹿5頭とイノシシ1頭が限界だった。
道中の食糧と困っている村に分けて貰う約束をして、感謝の雨を受けながらリディア王女御一行と別れた。
今後の王国に、リディア王女殿下のような王族がいる事に嬉しさを覚える。
月明かりがうっすら道を照らすなか帰るのには遅くなったので、近場でキャンピングカーを出して、食事をとった。
作り置きのハンバーグを焼きながら家族で会話を楽しむ。
「リディア王女たち、明日の朝に出発って言ってたけど起きれるのかな王女殿下」
ニーニャが心配そうに言う。
「ふふふ。確かに心配ですわね、ずっと昼過ぎまで寝ていらしたもの」
「あのものは妾より寝坊助なのじゃ!」
ファルカとルシェが笑いながら言う。
「確かに想像すると笑えるよな、っとお待たせ」
りょうが焼いたハンバーグとサラダに目玉焼きをのせて持って行く。
「ニーニャ、ごはん入れていって!こらこらルシェ!みんな揃うまでまだ食べちゃ駄目でしょ!」
「ごめんなさいなのじゃ!」
「ふふふ。食いしん坊さんね」
ファルカがスープをよそって配る。
「それじゃあ!いただきます!」
「「「いただきます!」」」
「美味いのじゃ!」
「ハンバーグにもたまごは合うのね」
相変わらずたまご大好きニーニャちゃん。
今日もうちの食卓は笑顔でいっぱいである。
食後、みんなで星を見ながらお茶を飲み、そのままお風呂に入って就寝した。
朝の冷たい空気の中、王女殿下御一行は王都に出発をした。遠くから見送って無事を祈る。
とにかく、やっと慌ただしい日々が終わり、りょうはしばらく引きこもるぞと心に誓いながらアルカディアに戻った。
領主屋敷に着くと、セバスと今後の打ち合わせをし、方向性を示す。
①今後の移民の受け入れ。受け入れ態勢の準備
②養豚場と養鶏場の拡張と放牧などの方向性
③グリーンゲート拡張範囲の設計。田畑の拡張。
④春に山狩りを行いたいという提案
⑤学校と病院の建設
とりあえずはこんな所かな?、後はセバスが指揮を取ってうまくやってくれるだろう。
それじゃあ!と席を立とうとした所。報告書と決裁が必要な書類をバサッと置かれてりょうは泣きそうになっていた。
ニーニャたちに助けを求めようとするりょう。
すかさず目をそらす家族たち。
結局夕食を食べても終わらない書類をする為に泊まる事になった。
「では私は日課の夜釣りに行って来ます。おやすみなさいませ」
セバスの日課って…
スキップをしながら出て行ったよな?今!
朝起きるとセバスが日課の朝釣りから帰って来た所だった。
「日課の夜釣りに日課の朝釣り…それでいて夕方には漁とか言いながら釣りに行く……」
セバスの恐怖を感じる生態を知ったところで朝ごはんが出てきた。
「うっ!」
出てきた朝食は何処かの高級旅館の朝食を思わせるものだった。
「美味い!また腕を上げたねシュロー」
「はっ!ありがとうございます」
本当においしかった。
だし巻き玉子、鯛の子をほぐして、子持ち昆布みたいにしていた。香の物は白菜の浅漬け。
焼き魚は鯛の西京焼きになっていたし。
椀物はイワシのつみれと柚子を浮かべたお吸い物。
何より豆腐の作り方を教えておいたら湯豆腐が出てきたんだよ。
やべーよ!シュロー!
もちろん豆腐と豆乳をたくさん分けて貰いましたとも。
とりあえず、鰹節の作り方と味噌ともろみ、醤油のレシピを伝えておいた。きっと彼ならやりとげるだろう。
ノトスから帰って来た行商からコランドが10名ほど人を連れてきた。
「旦那様、ただいま戻りました。ノトスでこの者たちが旦那様を探しておりまして話を聞いたところ、旦那様の元で鍛冶職人として働きたいとの事です」
「あっ!あの時のドワーフたち!確かモルツとホップ親子だっけ?」
「お久しぶりでございます。まさかこれ程の方だったとは、これから宜しくお願いします」
「ああ!宜しく。出来たらアルカディアとグリーンゲートの両方で頼むよ」
「はい仲間のドワーフたちも連れて来ましたので…
あのまたあのお酒を売って貰いたいのですが…」
「わかった。はい、これ!引っ越し祝いであげる」
果実水割りの小樽を一つプレゼントした。
「「「野郎共!今日は宴会だー!」」」
「宴会するの?じゃあこれもあげるよ」
りょうは鹿肉とソーセージを10人前、渡してあげた。
「………こんなにも!良いのですか?」
「そのフランクフルトソーセージ酒に合うよ」
「「「ありがとうございます」」」
ドワーフたちは嬉しそうに、コランドに連れられて出て行った。
アルカディアにドワーフが10人加わった。
アルカディアとグリーンゲートにドワーフの鍛冶工房が出来た。
その日の晩アルカディアではドワーフたちの宴が開催され、住民たちも料理を持ち寄って賑やかな交流の宴になったみたいだ。
一方リディア王女たちも最初の夜営地で、護衛騎士たちは火を囲み、鹿肉を食べながらノトスでの出来事を語る。
その光景を馬車の中から嬉しそうに見つめているリディア王女。
リディア王女と側仕えは鹿肉を上品に食べるのであった。
「行きとは気持ちと皆の表情が全然違いますわ」
遠く離れたりょうへの感謝の気持ちが胸を温かくする。今のリディア王女には、行きの悲壮感はなくこれから自分に出来る事と使命感が彼女の瞳に光を灯す。
冬の星空の下、各々が違った夜を過ごしている。
その頃王都では、連座を免れようと画策する上位貴族の集まりがあった。
「まずいぞ、このままリディア王女が視察から正しい情報を持って来られたら…私たちは直ぐに処刑され一族全てが連座処分される」
「何か良い案は無いのか!」
「ひっひっひ!一つ妙案が御座います」
「申してみよ!」
「どのみち我々の処刑は避けられますまい?ですが、それどころでは無くなればどうか?」
「続けよ!」
「そうですな~!例えば反乱が起こるとすればどうでしょう?王家は地方を捨てたと噂を流し、地方貴族と民が立ち上がりそれを影から援助する」
「わっはっは!良いではないか、良いではないか」
「ではその様に…」
上位貴族の暗躍が王都で渦巻き始める。




