出来る事と出来ない事
鍋が終わってから根本的なこの国の総人口すら分かっていないりょうがリディア王女に聞いてみた。
「リディア王女殿下。教えて欲しいのですが、アストリア王国の総人口って今は何人居るんですか?」
リディア王女は徴税官を呼び詳しく聞いている。
途中表情を曇らせるがりょうに内容を整理して話す。
「正確な人口は飢饉の始まる前の人口しか分からないのが現状です。4年前で約60万人でした。今はどれほど減っているか…私たちが王都を出てノトスに向かっている道中だけでも多くの廃村がありました…」
この記憶がリディアの表情を曇らせたのか…とりょうは理解した。
「そんなに…」
正直アルカディアは食糧過多だ。しかし、流石に60万人分の食糧は賄えないのが現状。今後の他領地の努力に期待をしよう。
何もしないと言うのもりょうの性分には合わないので出来る事だけやっていこうと心のメモに書き記した。
「リディア王女殿下。帰りの際に食糧をお渡ししますので道中で困っている村に王女の采配で配って貰えないでしょうか?あとノトスは移住者を受け入れる用意が有ると広めて下さい。あくまで受け入れるのはグリーンゲートですが…」
リディア王女の表情が明るく変わる。
「食糧!宜しいのですか?」
嬉しそうに聞き返すリディア王女。
「ええ!でも肉ですが…」
住民も増えたので来年は畑も拡張を予定している。辺境なので土地だけは広大だし自然は豊かだ。ヤギとひつじも増やさないと。乳牛が欲しい所だ。
「ありがとうございます。」
リディア王女は嬉しそうに部屋へと戻って行った。
残ったりょうはコランドを呼び、アルカディアから豚を10匹程明日の朝に届けさせるように指示をだした。
「後、今後も移民が増えていく予定だからアルカディアもグリーンゲートもどんどん町を大きく拡張するようにとセバスに伝えて欲しい。」
「かしこまりました」
現状アルカディア300人、グリーンゲート500人しかいないんだよな。グレオール男爵に移住者募集って言っておこう。
りょうが部屋に戻るとニーニャとファルカが起きて待っていた。ルシェはぐうぐう寝ている。
「ニーニャ、ファルカ明日また調理を手伝って欲しいんだけど良いかな?」
「もちろんよ」
「任せてください」
二人にノトス以外の現状を伝えて明日豚肉を加工して配給する保存食を作ると伝えた。
「それは良いことね」
「また移民が増えそうですね」
ニーニャもファルカも応援してくれるようだ。
その日は早くに寝た。
まだ暗い早朝、りょうは一度山に入ろうと防寒着を着てアルカディアの自宅に一人で戻っていた。
狩をしに山に入って行く。雪の積もる真冬の山は寒い。カイロをいつも貼ってはいるが動くと汗をかいて余計に冷えるのでそこまで貼れない。
最近は忙しくて全く狩をしていない。山に入ればすぐに鹿とイノシシがうじゃうじゃいた。
「間引いていないから増えすぎて居るな…」
ライフル銃を構えてどんどん撃つ。特に鹿が多い…多すぎる。奈良公園かと思うほど居る。これ以上増えると山の木々が枯れだす。
間引きも兼ねて見える範囲だけ狩る。
ささっと収納して川に移動して血抜きをし林の中で穴を掘り頭と内臓を処理する食べれるレバーやハツなどは取っておく。ささっと解体もして収納していく。数が多すぎる。
鹿30頭 イノシシ10頭 本格的に間引かないと駄目だな…山に入って直ぐでこれだ。普通に考えておかしい。
直ぐに自宅の倉庫に戻って倉庫から塩と砂糖を10キロの袋を出して置いて行く。もはや収納がメインで倉庫には使う分だけ置いて行くスタイルだ。
減っているものが無いかチェックして補充し、ノエルにもうしばらく帰って来れないかもと伝えグリーンゲートに戻った。帰ると時間は8時だった。
大きめの壺を町の工房から10個購入して来る。
屋敷に入るとニーニャ、ファルカ、ルシェは起きてバンケットホールでお茶を飲んでいた。
「みんなおはよう」
「おはようりょう。何処かに行っていたの?」
「おはようございます。りょう様」
「パパ、おはよう」
「そうなんだ、久しぶりに山に入って来た」
みんなで朝食を食べてコランドを待つ。リディア王女は朝が弱いみたいだからたぶん昼まで起きて来ないだろう。
「おはようございます旦那様」
「おはようコランド、手間を取らせてすまない」
「いいえ!毎回旦那様が何をするのか楽しみです」
ニコニコとコランドが答える。コランドの助力は毎回、本当に助かってるんだよな。
「今回は広場の広いキッチンで作業をしようと思うんだ」
みんなで広場の広いキッチンに移動する。
コランドから解体した豚肉とホルモンを受け取る
凄い量だ。
「えーっと、今回作るのは塩漬け肉とソーセージだよ」
「ソーセージ!」
ルシェが妙に反応している。
「また今回もトントン叩くの?」
「ニーニャ、良いことに気付いたね!今回は」
でん!と収納から業務用のハンドミンサーを3台取り出した。
「これはなんですか?」
ファルカが物珍しいらしく興味津々でみている。
「これはミンサーという道具で」
ミンサーを台にセットして試しに豚肉を入れて
クルクルクルクル
側面のハンドルを回すとミンチ肉がめりめり出てくる。
「すごーい!凄いです!トントンしなくてもこんなにも早くミンチ肉が!」
「妾も!妾もやるのじゃ!」
ルシェも同じように肉を入れて
クルクルクルクル
「面白いのじゃ!」
「ふふん、それじゃあ三人でどんどんお願いするね」
「わかりましたわ!」
ファルカもニーニャも楽しそうに次々と肉を入れ
クルクルクルクル クルクルクルクル
もくもくと作業が始まった。
その間に豚の小腸にクリーンの生活魔法を掛けて
鍋に水を張り火に掛ける。
ゴム手袋を装着してみんなのミンチ肉のボウルを交換して計りに掛ける。今回は日持ちがするように肉に対して3%の塩を入れてこしょうとハーブを適量入れて混ぜる。白っぽくなるまでこねる。
業務用のソーセージフィーラーを出して豚の小腸をセットして先を括る。
「みんなー、こっからが一番楽しい時間だよ」
みんなが手を止めて集まると、りょうはソーセージフィーラーでむにゅむにゅとミンチを腸に流し込む。ちょうど良い長さでクルクルとねじっていく。
「うわー!ソーセージの形になっていくわ」
「早く食べたいのじゃ!」
「これをボイルして乾かしてからオイル漬けにするよ」
三人でどんどんソーセージを作っていく。大仕事である。全てをソーセージにするまでに昼までかかった。凄い量だ。吊るして乾かしたりしない。
ニーニャの風魔法で乾かせるのは魔法の世界の凄い所だ。りょうはその内の一部を木を組み上げた燻製器に吊るして桜チップで薫製する。
燻製していると
「おっ、おはようございます。りょう様」
とリディア王女が罰の悪そうな顔でやって来た。
「おはようございます。リディア王女殿下」
「「「「おはようございます。王女殿下」」」」
みんなで元気良く挨拶する。
「ちょうど今から試食がてらにお昼ごはん食べるんでご一緒にどうですか?」
「あら、お手伝いもしませんで……いただきますわ」
「王女殿下にお手伝いなど恐れ多いですよ」
土鍋でごはんを炊き、薫製したフランクフルトソーセージを焼いてソファーに移動する。
「いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
みんなでソーセージにかぶりつく。リディア王女はナイフとフォークで食べている。
「美味しい!」
「りょう、これ凄く美味しいわ」
「美味いのだ!」
「中々の出来で良かったよ!これをオイル漬けにするから1ヶ月は日持ちするだろう」
午後からは塩漬け肉を作って夕方にリディア王女に渡した。
「リディア王女殿下、まだ収納に余裕は御座いますか?」
「残念ながら...ノトスに戻って他の者に聞いてみましょう」
リディア王女御一行のグリーンゲート視察は終了となった。
車でノトスを離れる時にはかなり名残惜しそうにしていた。




