寒い日に食べると美味しい料理
真冬のアルカディア朝起きると一面は銀世界だった。
「おはよう、トマス、メリッサ」
「おはようございます旦那様」
「温室の完成が間に合って良かったな」
「そうで御座いますね、この雪ですとビニールハウスだと難しいところでした」
「ハウスの野菜は全て収穫済みですし、キャベツや白菜、大根などは雪の下で甘く成りますからね」
この状況を救ってくれたのが新しく入って来た移民のローズマリー先生だ。
ローズマリー先生は錬金術師の先生で、やっとステータスにあった錬金術に着手出来る事になったんだよな。この世界の錬金術は無から有を作ったりは出来なくて、物質の分離、解析、融合、変化を操るものらしい。科学との違いはここに魔力や魔石などの要素が加わる感じのようだ。この錬金術によって完成したのが温室である。主に役立ったのが変化と融合で作れた強化ガラスで出来てしまえばあっという間で作れた。これを利用して魔物を倒した時に取れる貯まりまくった魔石が役にたった。魔石を火の魔石にして豚舎や鶏舎、羊の小屋に設置したら室温が安定して雪が積もらない小屋ができた。うーん、ファンタジー。物質構造のイメージはネット検索が非常に役立った。
「そういえば、ノトスは今どうなってるんだろうか?食料足りてるのかな?」
今日はコランドに相談してからノトスに行こう。
ルシェは寒いからとお留守番するらしい。
下山して屋敷でコランドから説明を受けたところ、やはり冬になって雪が積もってからは冬籠りが始まっているようで、食料生産率はほぼアルカディア頼りになっているらしい。
本来、春になって雪解けが始まるまでは冬籠りとして保存食で過ごすのがこの世界の常識のようで、新鮮な魚や肉、野菜などは冬に食べれる事自体おかしいらしい。
今回ノトスに行くメンバーはこうだ。
俺、ニーニャ、ファルカ
コランド、リーゼ、ロンダ、ミランダ、ターリャ
の8名である。赤き剣はファルカたち騎士団と合同でウォーターリザードを討伐出来たらしく、冒険者ギルドに卸売りするらしい。なぜだろう?ファルカと目が合う度に赤き剣のメンバーたちはヒッ!ってなっているのは気のせいかな?
雪をタイヤで踏み固めながら進んでやっと到着。
先に男爵に挨拶をしないとな、コランドと赤き剣のメンバーたちは先に冒険者ギルドに行くらしい。コランドは収納保持者らしく馬車1台分くらいは収納出来るらしい。ウォーターリザードはコランドが預かっているようだ。
グレオール男爵邸に着き、取り次ぎを申し出る。
直ぐに中に通してもらい、グレオール男爵と挨拶をする。
「お久しぶりでございます、グレオール男爵。先触れも無しに失礼しました」
「りょうどのお久しぶりでございます。先触れなど必要ございません。これ程お世話になっておるのですから」
「移民はどうなりましたか?あれからセバスやコランドに任せておりますので、問題なくとは聞いていますが」
「結局グリーンゲートの発展速度の早さに助けられました。ほとんどがグリーンゲートへ移住を希望してグリーンゲートで受け入れして頂きました」
申し訳なさそうな男爵にお気になさらずと声をかける。
「セリシア夫人、これはアルカディア産の豚肉です。お受け取り下さいご子息のシルバさんとご令嬢のミリスさんもまだまだ育ち盛りでしょう。広場のお店で売ろうと思っていますので味見してくださいませ」
「こんなにも良いものをいただいて嬉しゅうございます」
挨拶を済ませ、広場のお店に移動し店員に顔を見せると大歓迎を受けた。
「相変わらず大盛況だね。嬉しいよ」
「これもマリーさんとミリーさんの指導のお陰でございます」
「今日は横で俺も料理売るからよろしくな」
「旦那様の料理が食べれるとなると今日は凄いことに成りそうですね」
隣にコンロと油鍋と寸胴を出して寸胴に水を入れ火に掛ける。ニーニャとファルカで野菜を切ってもらい中華鍋で豚肉の薄切りと野菜を一気に炒める。沸いてきた寸胴に投入しローリエも入れる、ファルカから玉ねぎを刻んだものを大量に受け取り中火でじっくりと炒める。ここからはニーニャに交代し飴色に成るまで炒めてもらう。
ファルカにブタ肉のブロックを渡して100グラム位に全部切ってもらう。肉には塩コショウをしてパン粉と溶き卵を準備。そう、トンカツである。
隣の寸胴ではカレーを作る。炒め終わった玉ねぎを投入し、ファルカにことこと混ぜて貰う。
ニーニャは土鍋でご飯を炊き出した。
寸胴にコクとまろやかなカレールーの中辛と甘口をブレンドして投入。多分スパイスの刺激に慣れていないこの世界の人にはこのくらいだろう。
辺りにカレーのスパイスの香りが広がる。鍋を混ぜているファルカとお米を炊いているニーニャまでヨダレを垂らしている。よし出来上がりだ。
素早くトンカツを4枚揚げてお皿にお米をよそってもらい、揚げたてのトンカツをザクザクと切ってお米の上に乗せルーを掛ける。
賄いの時間だ。店の前には人だかりが凄いことになってきている。ニーニャはカレーを一口食べると
「んまー!美味しいですわ!少しピリリと辛いですが旨味が凄くてたまりません。トンカツもサクッとじゅわーで最高。カレーと合わさると天国のお味です」
「これは…凄いですね。止まらないわ!どうしましょ!はっ!訓練を2倍にすれば!」
とガツガツ食べ出した。
開店済みだけど店員にも味見で1杯を渡して分けて味見。
「なんじゃこりゃ!うますぎる!」
「身体が暖まって美味しくて最高!」
「こんなにも高級なスパイスを使うなんて」
「うーまーいーぞーー!」
ん?味の王様がまじってないか?
俺も食べよう。
「うん!ウマイ!俺には刺激が足らないから追いスパイス!これだ!あー美味しい」
開店だ!
トンカツ一枚、小銅貨5枚、
カレーライス、小銅貨5枚、
カツカレー 小銅貨10枚。
「うますぎる!」
「辛い!でもウマイ!」
「身体がポカポカで美味しいわ」
「カレーライス…これは神の一皿…」
大盛況だね、てか、一人は味評論家みたいなの混じるな。あはは!
秒で売り切れ御免。わかってはいたけどね。
男爵一家総出で並んでたもんな。
おかわりがしたいコールがあったけど今日はここまで。ルーには限りが有るからね。
スパイスも温室で育て出したから解禁したんだよ。異世界と言えばカレーだもんな!
やってやったぜ!
片付けをして冒険者ギルドへ行くと中では言い争いの声が響いていた。
「だからー!本当に私たちが騎士団と合同で倒したんだって!」
「ふん!バカ言うなよ!B級に上がったからってウォーターリザードだぞ!B級の魔物だ!A級パーティーが二つはいるぞ!どうせりょう様のおこぼれだろ?」
「ざけんな!やってやんぞ!」
「んだとゴラぁ!」
赤き剣と鷹の旅団が言い争いをしていた。
「あら、いつの間にか差が付いてしまいましたね」
「まだC級のままだなんてかわいそうね」
「くそが!訓練場に来いや!」
もはや言い争いでは治まらず訓練場での決闘になるようだ。
「ほう、何をしているのだ?」
「ひゃい!」
ファルカが一言発するだけで赤き剣のメンバーは壊れたオモチャの様になった。
「あっ、あっ、あの、その、バカにされて…」
「そっ、そっ、そうなんでしゅ!」
「ふん!ではターリャ!」
「ひゃい!」
「お前一人で殲滅せよ」
「ひゃい!」
「お前たち鷹の旅団とやら全員をうちの僧侶のターリャがお相手しよう」
「ふざけやが…ちっ!わかったよ!」
ファルカの威圧で大人しくなった。ファルカ…怖い子なの?
訓練場では
鷹の旅団
リーダー
C級 ダリル 男 戦士 26歳
D級 スミス 男 シーフ 30歳
D級 メリル 女 エルフ魔法使い見た目若い 50歳
D級 ポルタ 男 僧侶 20歳
に対して
D級 ターリャ 女 僧侶 22歳
の一人だ。ターリャは腰のナイフに手を掛け構える。
「はじめ!」
最初に動いたのはターリャで横並びに隊列を組んでいた鷹の旅団に対し、一列に成るように移動、虚をつかれた僧侶のポルタのみぞおちに前蹴り。
倒れたポルタを踏み台にし、頭上からメリルにナイフの束でこめかみに打撃。気を失ったメリルを掴みそのまま突進。体当たりとなりスミスとダリルが倒れそのままナイフの束で意識を奪う。
一瞬の出来事であった。
場内の野次馬やギルド長は呆気にとられている、
静寂の中では一人ターリャが立っていた。
「勝者、赤き剣 ターリャ!」
歓声が響く中、「ふんす!」とガッツポーズで戻って来たターリャに赤き剣のメンバーは「良くやった」「強かったぞ」「流石ターリャ!」と声をかける。
「遅い!」
「ひゃい!」
「帰ったら鍛え直しだ!愚か者!もちろん全体責任だ!」
「ひゃい!」
ファルカの一言に訓練場はキョトンとなり誰も話さなかった。無事にウォーターリザードは高値で売れ。騎士団と山分けとなったようだ。
憐れ…赤き剣!頑張れ!赤き剣!




