今日も家族で朝ごはん
「コケコッコー!」
ニワトリの鳴き声で目が覚める。俺はタント、孤児らしい。でも辛かったり、悲しかったりはしない。弟も妹もいっぱいいるし、最近は美味しいご飯も暖かいお布団もあるから。少し前までは正直辛かった。ひもじくて、寒くて、悲しくて…弟も妹もみんな悲しそうで…いつも空腹で…そんな弟と妹たちを見ているのが一番辛かったんだ。俺たちの世話をしてくれているマリー姉ちゃんとミリー姉ちゃんもいつも空腹で辛そうで悲しそうだった。
いつも通りにみんなで広場に行って恵みを待っていた。運が良ければお金か食べ物を貰えるんだけど、昨日は何も貰えなかった。一昨日のお昼にバザーのおじさんが傷んで来たお芋を分けてくれたのが最後に食べたご飯だった。
「にいちゃ、ねえちゃ、お腹へったね」
「あたちもお腹へったー」
「ごめんねみんな、もう少しまっていよう…」
弟と妹が空腹を訴えてくるんだけど、ごめんな、何も出来なくて…本当にごめん。一つ下の妹のアルトが悲しそうに説得していた。
しばらく行き交う人を見ていたら、見たことのない兄ちゃんと俺より少し年上な見た目の女の子がバザーのテントを張りだした。なにを売るんだろ?美味しい食べ物で恵みをくれたら良いな…そんなことを考えて見ているとすごく良い匂いがしてきた。
「アルト、良い匂いだね」
「うん、お腹がなって恥ずかしいの」
ヨダレを滴しながらお腹の音で合唱がはじまった。あっ、お店の兄ちゃんと目が合った。反らされた…横を見たらいつの間にか、ミリー姉ちゃんマリー姉ちゃんも弟たち全員を連れて並んでいた。姉ちゃん、女の子がヨダレを滴しながら俺たちと並んでいたら流石にかわいそうさがすごいよ。お嫁に行けないよ。
あっまたお店の兄ちゃんと目が合った。すごく困った顔をしてる。これは何かくれるかもしれない。お芋一つでもくれないかな…お店の兄ちゃんは観念したのか、ため息をつきながら手招きをしてくれている。
あの時食べたミネストローネとウルフ肉の串の味は一生忘れない。あの日から今日までお腹がすいて悲しい思いはしていない。一生懸命働いて必ず恩返しをしようって皆で誓ったんだ。
「おーい、朝だぞ。アルト!起きて!お前達も起きろー!」
「おはよー…」
寝ぼけ顔の弟たちを連れて、水場に顔と歯を磨きに連れて行った。
「タント、おはよう」
「おはよう、とうちゃん、母ちゃん。ミリー姉ちゃんとマリー姉ちゃんもおはよう」
「今日も鶏舎の掃除と卵集めお願いね。最近ニワトリが増えてきてるからちゃんと集めてね」
「うん!わかったよ」
「わかった~!」
みんなで日課の鶏舎の掃除とエサやり卵集め、豚舎の掃除とエサやり、ヤギのエサやりと乳搾りをする。俺の班とアルトの班とで5人づつの班で作業をするのが日課だ。とうちゃんと母ちゃん、ミリー姉ちゃんとマリー姉ちゃんで畑仕事をこなす。
鶏舎での卵集めが弟たちには人気だ。
「にいちゃ!あったー!」
「こっちもあったわ!」
最近、卵の取れる数が増えてきて1日に40個くらい取れるんだ。高級な卵が40個だよ。みんなで卵を集めていると
「お主たち!何をしておるのじゃ?」
俺より年下だろうか?女の子がでーん!と腕を組んで話しかけてきた。
「ニワトリのお世話と卵を集めているんだよ。僕はタント!君はだれ?」
「妾か?わーはっはっはー!妾はルシエラじゃ!ルシェと呼ぶのを許す!」
でーん!、と効果音がつきそうな態度と迫力で笑いながら腕を組んでいる。
「ルシェちゃんだね、よろしくね」
ルシェちゃん、ルシェちゃんと弟たちに一瞬でもみくちゃにされだした。
「ルシェちゃんも一緒に卵さがしする?」
「ぐぬぬ!わっぱども髪を引っ張るのは止め…あ、パンツを引っ張るな脱げる!」
もみくちゃだ…
「卵さがしか!やるぞ!楽しそうじゃ」
みんなで卵さがしを再開しだした。
「弱き者よ、突っつくのを止めるのじゃ!」
ルシェちゃんがニワトリたちに囲まれて突っつかれている。
「見つけたのじゃ!楽しいのじゃ!」
「ルシェちゃんすごーい!」
「そうじゃろ!そうじゃろ!わーはっはっはー!」
頭に藁をつけながら楽しそうに弟たちと妹たちに囲まれながら笑いあって作業している。新しい家族かな?ルシェちゃんはすごく明るくて良い子だ。これからまた賑やかに成りそうだ。
「わらわは、10個も見つけたぞ!どうじゃ!」
「すごーい!わたしは5個」
「僕は6個!」
「あたちは3こー!」
「そうかそうか!皆も凄いではないか!わーはっはっはー!」
俺は15個だけどルシェちゃんがご機嫌だから言わないでおこう。結局今日は42個見つけた。
「よーし!皆次はヤギミルクを搾りに行ってミルクを少し飲もうか?」
「わーい!のむー!」
「なんじゃ?ミルク?乳か!妾も行くぞ!」
ヤギの囲いに移動してルシェちゃんに乳搾りを教えて絞ったヤギミルクを皆に配る。
「美味しい!」
「おいちいね!」
「美味い!美味いではないか!よーし!絞るぞ!」
皆でヤギミルクを絞った。
「ルシェちゃん!駄目だよ!直接吸ったら駄目ー!」
よほど美味しかったのかな?ルシェちゃんが子ヤギに紛れて乳を吸っていた。
「はっ!美味くてつい…なんかママに会いたくなって来たのじゃ!皆、楽しかったぞ!また遊ぼうぞ!」
「ママーー!」と叫びながらお屋敷に向かって走って行った。
日課の仕事を終わらせてお屋敷に卵とミルクを運ぶ。ノエル姉ちゃんに渡して水場で手と身体をふいているとベーコンの焼ける良い匂いとパンの焼ける匂いがしてきた。
「アルト、今日はパンだな」
「うふふ、そうね。お米も良いけどパンも美味しいから嬉しい」
「パーン!ふわふわのパーン!」
皆で歌いながらお屋敷に入って食卓に行くと。
「ママ!ルシェね!卵たくさん探したの、ミルクも絞ったんだよ!」
ニーニャ姉ちゃんにルシェちゃんがしがみついて甘えていた。ニーニャ姉ちゃんとりょう兄ちゃんの子供だったのか。お嬢様だったんだね。すごいな、ベタベタにしがみついている。
「旦那様、奥様、おはようございます」
「おはようございます」
食卓には見たことの無い綺麗なお姉さんが座っていた。新しい家族かな?食卓に座ると旦那様が
「皆、おはよう。新しい家族を紹介するね。こちらは騎士団団長のファルカとえっとルシエラ…」
「キッ!」
ルシェちゃんが一瞬旦那様を睨んだら
「娘のルシエラだ。ルシェと呼んであげてくれ」
娘と言い直した。
「皆様、私は第二夫人となるファルカです。よろしくお願いします」
「え、第二夫人?」
「はい第二夫人です」
「あの…」
「第二婦人です」
「………」
旦那様がなんか困っているみたいだけど第二夫人なんだ。みんなウンウンとうなづいている。
「妾は娘のルシェじゃ!よろしくの!」
「………」
「わたしの可愛い娘よ!みんな仲良くしてね」
「ママーー!」
ルシェちゃんはまたしがみつきなおした。
「今日の献立は朝採れたてのレタスと水菜とミニトマトのサラダ、じっく煮出したコンソメスープ、ベーコンエッグ、ソーセージ、パンは焼きたてくるみパンとクロアッサンです」
ノエル姉ちゃんが給仕をしながら献立を説明をしてくれて、母ちゃんが
「フルーツはみかんとりんごでございます。これはみかんジュースです」
と良いながら皆にジュースを注いでくれている。
「さあ、いただきます!」
「いただきます!」
今日のご飯もすっごく美味しい。みんな笑顔で幸せそうだ。もちろん俺も幸せだ。あの食べれなくて寒くて、悲しくて辛かった日々が嘘の様に感じるくらいの毎日が楽しくて嬉しくて美味しくて。
ソーセージをかじり、香ばしくて柔らかなくるみパンを食べる。透き通ったコンソメスープを飲むと、暖かな温度と深い旨味と滋味を身体に流れてくる。嬉しい味。優しい味。暖かな味を味わいながら幸せを噛み締める。
こんな毎日を守るために俺も弟妹たちもたくさん働いて、勉強して旦那様と奥様たちの役に立ちたいと思う。
ルシェちゃんはあーんして貰って嬉しそうだ。




