アルカディアへ
町は数日空けている間にまた、手が加わっていた。生活飲料水用の用水路を人力で掘り出していた。後でパワーショベルで掘削してあげよう。
町を見たファルカたち騎士団は驚きの声をあげる
「素晴らしく発展した街並みです」
「なんだあの建物の健材は!石か?そしてガラスを贅沢に使っているようですが…」
住居やお店を見て興奮している。田舎だからそんなに栄えてはいないんだけどね…
用水路の工事を見てファルカが
「…移民団の中には利水の技術者もいましたので…少しはお力になれるかと思います」
「そうなんだ、ありがとう」
車内では海を見て感動している者も多く、海は光を反射して煌めいている
「美しいですわ」
「ここで取れるお魚は美味しいのよ」
「それは楽しみですわ」
いつの間にか打ち解けたニーニャとファルカが、身を乗り出すようにして談笑していた。
ファルカって騎士団に対してや仕事中と比べ、プライベートだと言葉使いがかなり変わるんだな。
そんな事を思いつつ、俺はバックミラー越しに二人に声を掛けた。
「それじゃ、今晩は魚料理かバーベキューだね!色々食べれるし」
「やったー!お肉もお魚も両方食べれるのね」
ニーニャは大はしゃぎでシートの上で跳びはねている。
屋敷に着くと入り口には、セバスとヒルダを筆頭に使用人たちが並んでお出迎えしてくれている。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様」
あまりの迫力と「奥様」のフレーズに驚くファルカ
「いつもお出迎えありがとうございます」
優雅に微笑みながら、ファルカへ余裕の目線を向けて皆にお礼を述べるニーニャ。「着いたらわかるわ」とはこの事か…うちの天使はたまに黒くなるな…あはは。
「ぐぬぬっ!」と睨み返すファルカとニーニャは、またやいやいと言い合いながら屋敷に入って行った。
「セバス、彼女たちは…」
「第一騎士団のファルカ様とその側近ですね」
「そうか…セバスたちはクラート領の…」
「はい、後の事はお任せ下さいませ」
本当にできる執事である、できすぎて怖い程に。
皆を集めて経緯を説明した。
「………という感じで移民団がきたんだ。本当にクラート領のボンクラ男爵…大丈夫か?」
「ブッ!ブハッ…」
俺のボンクラ男爵発言に、皆は笑いを堪えながら話を聞いていた。
「相変わらずといったところですね…」
と苦々しくセバスが言い。
「今ごろは、誰もいないと分かっていても誰かを呼んで居そうですね」
と笑いを堪え過ぎて苦しそうにヒルダが言う。
「奥様もかなりのヒステリーを起こしていそう」
「坊っちゃんたちもですわ」
アナとシャルロットは、お互いに向かい見合わせて「ねーっ」と笑い合う。
本当に昔から変わらず酷かったみたいだ。
話が一巡したところでファルカが深く頭を下げた。
「セバス殿、ヒルダ殿お久しぶりです。お二人が代官として栄えさせたクラート領を守る事が出来ませんでした」
ファルカは本当に申し訳なさそうに謝る。
でも、俺はファルカは何も悪くないと分かっている。過ぎた事は忘れて、これからは楽しく笑って過ごして行けるように努力すべきなんだ。
「腹も減って来たし今日は皆でバーベキューでもしようよ!セバス!皆集めてよ」
「そうですね…かしこまりました」
落ち込んでいるファルカにニーニャが「よしよし」していた。
「りょうがよく言うの、お腹が減っていたら良くない事ばかり考えるって…ここのご飯は美味しいのよ」
「ありがとう」
二人で「よしよし」しあっている…どんな状態だ?
そして待ちに待った宴が始まった。
先ずはリクエストがあった魚を塩焼きで焼く。
アジ、さば、等を塩焼きに。バーベキューサイトにある石窯では、卵白を泡立て塩を混ぜ鯛に塗って焼いた鯛の塩釜焼き。
ヒルダたちが網で捕まえた海老、磯で取ったカキやトコブシなどを網焼きにして、酒と醤油で焼く。
「たまらない香りがするわ」
「この醤油が焦げた匂いは最高だろ?食べて!食べて!」
ニーニャがうっとりと匂いを褒め、俺は網の前で忙しく手を動かし焼きながら、皆に食べるようにすすめる。
「このアジとサバという魚、アブラが乗っていてジューシーで最高ね」
「………美味しすぎるわ、このカキ?というのも海老?と言うのも」
一口食べた瞬間、ファルカも団員たちもボロボロと涙をこぼしながら夢中で食らいついている。
「にーちゃん!うますぎー!」
「おいちい!」
「旦那様、私たち幸せです」
山から家族たちを全員呼び、子供たちも口のまわりにタレだらけにしながら、ニコニコで食べている。
「そろそろ塩釜焼きが上がったよ!」
木槌を手に取り、ポンッと軽快に割ってみせる。皆でつついて食べる鯛の身はふわふわでジューシーだ。何個か焼いたので皆に行き届いたかな?まー各自に任せる。あわせて焼酎の水割りも出してあげた。
「肉もじゃんじゃん焼いちゃってな!」
何処かの海賊団の宴のようになってきた。
「鯛の塩釜焼きってこんな美味しいのね。お米ってのとお酒がすすんでしまいますわ」
すっかり出来上がったファルカが頬を赤くして俺にくっ付いてきた。
当然、それを見逃すニーニャではない。俺の膝の上にちょこんと座り、俺の皿から肉を食べ出した。ニーニャの定位置であり、鉄壁の守りである。
「ぐぬぬっ!」
「うふふっ!」
二人でじゃれ合いながら、今度は焼きたての肉を張り合って俺の皿から食べている。
今日はセバスもヒルダとアナもシャルロットもノエルまで皆、騎士団たちと笑顔で飲んで食べて楽しそうだ。
誰かが唄いだし、踊りだす人もいた。賑やかな音が皆を更に笑顔にする。
「みんな!いつもありがとう!みんなの笑顔が見れて俺も嬉しいよ!」
俺は正直に感謝を述べた。
大きな歓声と笑いが湧き上がり、夜の帳の中、温かな喜びの光がこの場所を優しく照らしていた。
「ああっ!美味しい」




