落ちる
数日後ノトス領の領主邸宅では、グレオール男爵と妻のセリシア、冒険者ギルド長ライム、商人ギルド長コルト、弟の商会長のバルトがライムとバルトからの報告に頭を抱えていた。
「ライムとバルトよそれは本当なのか?」
真剣な声色でグレオール男爵が問う。
「はい、あたしの所の冒険者パーティーが見たとの事です」
「私の所はクラート領に向かう商人が見て慌てて戻って来たらしいです」
「クラート領から凄まじい人がノトスに向かって進んで来ています」
ライムとバルトはグレオール男爵に向かって真剣な面持ちで報告した。
「あなた…」
妻のセリシアを安心させようとグレオールは手を握る。
「先頭はクラート領最強の第一騎士団との事です」
まさか侵略では?クラート領のボン男爵はそこまでの愚行を?今の状況だと移民か?グレオールの頭では今の情報を元に様々なパターンを考えていた。
しばらくの沈黙の後
「現状わかるおおよその人数は?」
「…約…1000人との報告です」
一同はまた沈黙した。
時間が経ちやっとグレオールが口を開いた。
「どう考えても今の飢饉という現状では移民団だと思われる…しかし1000人か…元々ノトスは500人の領民がいたので400人は住める住居が有るが…問題は残りは600人、周りの村に分散出来ても200人…残りの400人…どちらにしてもやっと潤沢になった食料がどう考えても足らん…」
「グレオール様、りょう殿への相談をお願いします」
またあの者に負担を掛けるのか…400名のうち町の外に仮設住宅としてテントを設置しても200人、どう考えても200人は余る…そして食料…りょう殿は受け入れてくれるのだろうか…
「ライム、コルト、バルトよ早馬を走らせりょう殿へ伝言を」
「グレオール様、ちょうど息子のコランドがノトスに来ています、さっそくコランドに伝えます」
「すまないな、宜しく頼む」
バルトは急いでコランドのもとに向かう。
「おお!父上久し振りでございます」
「コランド、いきなりですまぬがりょう殿へ伝言を頼みたいお主の乗っている車と言う乗り物だと1日で着くのであろう?」
「父上の表情からすると非常事態ですね」
内容を聞きコランドは急いでアルカディアへ戻った。
「旦那様、お願いと伝言がございます」
「え?どうしたんだコランドそんな真剣な顔をして」
昨日グリーンゲートに来て宴をしてそのまま寝てたりょうとニーニャであった。
「ノトスの領主様からご相談が有るとの事で内容なのですが…」
りょうはコランドから内容を説明され急いでノトスへ向かった。数時間後、ノトスに到着し領主邸宅に向かう。到着し中に入り挨拶を済ませた。
「りょう殿ご足労お掛けしました。ご相談が有りまして…申し上げ難いのですが…また難民問題が御座いまして…実は…」
グレオール男爵に説明を受けた、つまりは難民は約1000人の大規模移民団が向かって来ている。ノトスと周辺の村と町の外に仮設住宅を設置しても200人は余るのでグリーンゲートへ移民させれないかとの事。後、食料が全然足らないからどうにかならないかと…あれ?移民の住居以外の食料問題は俺頼みってやつか。了解でーす。
「分かりました少しお待ちを」
スマホを取り出しアルカディアの屋敷に連携。このスキルはチートだな。
「あー!もしもし!俺、俺!」
どこの詐欺師だ。
「セバス、アルカディアに今居るグリーンゲートの住民異動させたいんだけど大丈夫そ?」
「はい、住民と食料は問題ございません。しかし…水の問題だけ御座いまして…」
「うーん、それは俺とセバスとみんなで考えるとして大丈夫そうだね」
「はい、2~3日で移住させておきます」
「後、養鶏場と養豚場の飽和状態の解決も出来そうだからとりあえず豚を10匹と鶏500匹を絞めて出荷出来る様にお願い。ホルモンと骨周りのお肉と骨も出荷するのでみんなにも宜しく伝えて欲しい」
「かしこまりました。魚も必要ですよね旦那様」
セバスは釣りがしたいようだ。
「あ、ああ、セバス魚も任せる」
「かしこまりました。ではお早い帰宅をお待ちしております」
仕事として釣りが出来るからかな?最後声が明るくなっていた。
「男爵、200人の移住は大丈夫そうです。できる限りの人数を受け入れますので、農業技師と土木に詳しいもの、井戸掘りを知るもの、水利に詳しいものと、第一騎士団を全員こちらにお願いします」
「わかりました、して、その、食料なのですが…」
「あー、大丈夫そうですなんとかしますが、ノトスでもできる限りの努力はお願いしますよ」
丸投げ過ぎるので皮肉も入れておいた。
「はい、もちろんでございます」
そうか、1000人か…炊き出しはボランティアで必要だな腹を空かせていては希望も持てないもんな。
「男爵、移民の到着予定は?」
「後、3日程で到着すると思われる」
「1000人分のカトラリーのご用意お願いします当日はアルカディアからボランティアで炊き出しをしようと思うので」
「わかりました、コルト頼みたい」
「かしこまりました」
会議はりょうの参加により問題解決の目処が立ち解散となった。
りょうの頭ではすでに炊き出しのメニューを考えているようだ。
お腹を空かせて来るのであればスープが良いかな?肉も食べたいよな。鹿の鉄板焼とイノシシ肉の網焼き、これは軽くとして、メインはスープだあっ!セバスたちが食べきれないくらい魚を釣るものだから魚がたくさんあった。ブイヤベースか潮汁か魚介のお味噌汁か…
「ニーニャはスープだとブイヤベースか潮汁か魚介のお味噌汁だとどれが食べたい?」
「んーと、お味噌汁かな。美味しいもん」
そうか、じゃあ魚介のお味噌汁と鹿の鉄板焼とイノシシの網焼き、おにぎり1つってところかな。
帰ったらみんなでおにぎり大会だな。作ったおにぎりは収納に入れておけば大丈夫だし。
一方移民団では、今日も第一騎士団による炊き出し、クズ野菜の薄味スープだった。
「ああ、とうとうお肉が入らなくなったね…」
「ぜいたくは言っちゃダメだよ」
食事と言いながらの数欠け?のクズ野菜の塩スープを全員で静かにすすっていた。
「しかしここまで魔物も出ないのかホーンラビットかレッサーウルフが出てくれれば、スープに肉が戻るのだが…」
そうなのだ飢饉は人間だけではなく魔物にも影響しているのである。ノトスまで後2日の距離…近付くにつれて不安が増してくる。この人数を受け入れて貰えるのか、食料は大丈夫なのかと。
不安を胸に抱きながらファルカは眠りについた。
2日間みんな不安を胸に一歩一歩を踏みしめた。
昨日など炊き出しとは名ばかりの塩スープ、とうとう材料が尽きた…旨いものが食べたい。ひもじい今この移民団の全員が同じことを思っているはず、これで拒否された時点で我々は倒れるだろう。神に祈りながら歩く、歩くああ、ノトスが見えてきた。ひもじい、歩く旨いものが食べたい、歩く。町の入り口にはテントが並んでいる、もしかしたら我々以外の移民団が先に他の領から来たのでは?ファルカは絶望的な想像をしてしまった。門番に対しファルカは告げた。
「我々はクラート領からやって来た。移民を希望するものたちだ。私はクラート領第一騎士団長ファルカと申す。領主様にお繋ぎ願いたい」
門番は中に入って行った。すると良い匂いの鍋を持ったものたちが町から出てきた。腹を刺激する凄まじく良い匂い。みんな物欲しそうに見てしまう。やはり他の移民団が先に来てしまっていたのか…ファルカは絶望をしうつ向いてしまった。
するとさらに炭の匂いがして肉の焼ける匂いがした。うつ向いていたファルカだが、どうしてもこの腹を刺激する「凄まじく良い匂い」の方向を見てしまう。
ああ、あの肉が食べれたらな…ひもじい…旨いものが食べたい。騎士の誇りでなんとか前を向いた。移民団のみんなはヨダレを垂らして肉の焼ける匂いと音の方を凝視していた。
中から人が出てきた。挨拶と説明をしようとした時に男爵の隣の男が先に声をあげた。
「挨拶など後だ、どうぞ先に食事を!」
「そうだな、飯を食いながらでも話そうか」
男爵もこの男の発言に賛同する。
「長旅ご苦労様、さあ食べてくれ」
男はそう言ってスープの入ったお椀を渡してくれた。椅子とテーブルが用意された。座りスープをすする。
「美味しい…」
涙が溢れてきた。
今まで食べたことのない魚、芳醇なスープの香り旨味いっぱいのスープ。
がっつきたいが味わって食べた。私の命は繋がった。目の前の男は嬉しそうにこっちを見ている。
頬を染めながらスープを味わっていると、今度は12~13歳だろうか、可愛い少女が「これも食べてみて」とお肉と白い穀物を丸めたものをテーブルに置いてくれた。
「お肉だ…」
1口かじっただけでわかる旨味の爆弾。口内は幸せで溢れている。穀物の丸めたものを1口
「美味しすぎる」
ゆっくり良く噛んで味わう。いつからまともな食事を取っていなかっただろうか。この味を知ってしまったらもう塩スープには戻れそうにない…
目の前の男は嬉しそうにこっちを見ている。
なんだ、わたしの事が好きなのか?胸をときめかせてしまった。顔が暑い、恥ずかしいバレる、もう見つめないでくれ。
「ん?どうしたんだニーニャ」
目の前の男の膝の上にさっきの少女が乗って抱きついている。なんという羨ましいことを、この男の娘だろうか?それにしては似ていない、はっ!
なんだあの少女が男を見つめる目は、女の目ではないか。チラっとこっちを見て「ふふっ」と笑いましたわ、食事が終わりそうな時に
「おかわりはどうですか?」
「ええ、少しだけお願いします」
あの男に声を掛けられましたの、もうこれは恋ですね。
あの美味しすぎるスープを持ってきてくださいました。ああ、優しい、やっぱり私のことを好きなのでは?と考えていたら
「食べながらでかまわない、私はこのノトス領を治めるグレオール・フォン・ノトス男爵だ。」
お椀を起き
「私はファルカ・フォン・ベルン騎士爵です、この度は悪政に耐え兼ね領民を守りながらノトス領への移住を希望してやって参りました」
「ふむ、わかりました。我がノトス領はそなた達を領民として受け入れよう。しかしこの町には400人しか住める住居はないのだ、しばらくの間はこの仮設住宅としてテントでしのいでくれ」
「ああ、ありがとうございます。心よりの感謝を」
「しかしだが、第一騎士団はノトス領への受け入れは出来んのだ」
衝撃が走り騎士団員はざわめく
「あ、あのどうして…」
声を震わせ質問すると
「ああ、別に受け入れ拒否とかではないのだ、隣の男が先に、第一騎士団と技術者はこの男の町へと言われていてな」
え?なんだとー!やっぱりこの男はわたしの事が好きなのでは?
斜め45度の角度で受け取るファルカ。
この女は恋愛経験皆無、今まで好きになった事もなく、幼少期から青春の全てを剣に捧げた女、まさかの初恋なのであった。
「はじめまして、私はアルカディアとグリーンゲートを治めるりょうと申します。是非我が町へお越しください」
「はい、どうぞ末長くお願いします」
即答であった。常に厳しく男勝りの鬼の第一騎士団団長を団員たちは驚きの目で見ていたのであった。




