日がな一日
一方、アルカディアの山では
「旦那様、大変で御座います」
ニーニャにクロスボウの指導をしているりょうのもとに、メリッサが慌ててやってきた。
「敷地内に野生の動物が数匹侵入しました。今はトーマスと子供達が畑を守る為に対応しています」
遠くから子犬達の鳴き声が聞こえてくる。
「あちゃー、冬になって増えた鹿やイノシシが食べ物を求めてやってきたんだ」
「りょう、私が狩ってみたいわ」
ニーニャはクロスボウを掲げてやる気のようだ。
畑の方に向かうとトーマスと子供達が畑の周りで侵入した動物から畑を守っていた。
シリウス、ルナ、ソル、レオの子犬達は鹿を4匹で追いかけていた。
「鹿が5匹侵入してるみたいだな。ははは、子犬とは言え流石は猟犬たちだ。おっ!うまく追い込んだソルが首に噛みついたぞ」
「すごーい、ルナとレオも噛みついてるわ。あっ!鹿が倒れたわ」
子犬たちが鹿を1匹仕留めたようだ。
「わん、わん」
しっぽをふりながら、シリウスがタヌキを咥えて持ってきてくれた。
「良くやったぞシリウス。畑を守ってくれたんだね、ありがとう」
子犬たちを褒めて撫でまわしながらもふってあげた。
どうやらタヌキなどの小動物も侵入してるみたいだ。もふもふしているとニーニャが
「私も狩って撫でてもらう」
そう言いながら気配を消し、遠くの方でこっちの様子を伺っている鹿に向かってクロスボウを構えた。ニーニャにとって良い練習になる。
元々ニーニャは貪欲に多くの物事を学習し吸収していた。
「ニーニャ、鹿やイノシシをボウガンで狩るには前足の付け根、胴体の下から三分の一辺りの肺や心臓を狙うんだよ」
「わかった」
いつもにも増して真剣なニーニャの声。狙いを定め引き金を引いた。鹿が倒れ他の鹿が逃げだした。
「良くやったぞニーニャ」
頭をくしゃくしゃに撫でてあげると凄く嬉しそうだ。続けてニーニャはクロスボウに矢をセットし、狙いを定め引き金を引いた。今度は少しずれ胴体に刺さって逃げようとした所にレオとソルが首に噛みついた。良い連携である。動かなくなった鹿を後に子犬たちは周りの散策をしている。
「良い感じだねちゃんと獲物に的中している、その調子だ」
「うん、残りの2匹も私にやらせてね」
お日さまの様なニーニャの笑顔が可愛い、保護者として嬉しいよ。次々といたちやハクビシン、アナグマなどを子犬たちが取ってきては褒めてとお座りしながらしっぽをゆらす。
「よーしよしよしよし」
全力でもふってあげた。4匹目を仕留めたニーニャが私も褒めてと目を輝かせ見つめてくる。
「よーしよしよしよし」
子犬たち並みに頭を撫でてあげるとニーニャは満足気に最後の鹿に向かってクロスボウを構えた。
馴れてきたのかスムーズに仕留めた。
狩った獲物をニーニャと2人で子供達とトーマス夫婦に解体を教えた。子供達みんなは恐る恐る小動物を捌いている。はじめての解体は緊張するよな。俺なんてはじめての時、血と臓物をみて倒れそうな気持ちになったんだよな。
「命に感謝しながら解体をしようね」
そう教えた。
ボウガンでの狩りもなかなかよかった。次は俺もボウガンで狩ろう。
わいわいとみんなで喋りながら解体を終えた。
「りょう、私狩れたわ」
「うん、凄いぞニーニャ。これなら山にも連れていけそうだ」
「やったー!りょうの妻として頑張るわ」
ニーニャは俺の奥さんのつもりなんだよな。顔を引きつらせながら、ニーニャの頭をぽんぽんとしておいた。これは良く聞くあれだ、大きくなったらお父さんのお嫁さんになるー!ってやつかな。
これは嬉しいな。でも大きくなったら、「お父さん近付かないで!」とか言われる…とサラリーマン時代に上司や先輩が嘆いていたのを思い出した。
今思えばそれは辛いよなと同調出来る。
家畜の世話をして卵の回収をしてきたミリーとマリーに肉をある程度渡し、ニーニャとソルとレオで山に入った。今度は俺もボウガンで狩る。山に入ってすぐ至るところに鹿やイノシシがいた。
俺とニーニャで狩る。レオとソルが鹿の足に噛みついて弱らせトドメを刺す。
「間引きが繁殖に間に合っていないのかな?多すぎだよなこれは」
ひたすら狩りをしてやっと自宅の敷地周りの野生動物を狩り終えた。100匹を越える結果になった。
すべて収納して山を降りて屋敷とグリーンゲートに獲物をコランドに卸した。町のみんなは大いに
喜び口々に
「グリーンゲートに移れて本当に良かったです」
「こっちに移住してから子供達にひもじい思いをさせていない素晴らしい町だ」
「俺んとこのかみさんなんて毎日上機嫌でよー!」
「こっちは魚も新鮮で干物以外の塩焼きも食べれるんだよな」
「旦那様本当にありがとうございます」
どうやら魚もセバスを筆頭に海釣りメイド部隊(いつの間に!)が卸しているようだ。
「何と言っても卵だ!あれだけ高価な卵が安価で手に入るのも衝撃的だよな」
そこからは宴の開始だった。グリーンゲートの代官山屋敷の前で、住居が集まりキャンプファイアーをし、バーベキュー大会だイノシシ肉や鹿肉ウルフ肉、タヌキやアナグマまで色々焼いて食べての宴であった。俺的にアナグマが美味しかった。
住人達に囲まれながら和気あいあいと過ごす事ができた。うーん、みんな笑顔で幸せだな。
「りょう、わたし今とっても幸せよ」
そう呟くニーニャの横顔は幼さは残るが少し大人の笑顔であった。
その頃クラーク領から向かう移民達の一団はというと少ない干し肉を貴重な水で煮込みクズ野菜を少しだけ入れたスープを飲んでいた。
「みんなノトス領までの我慢だ」
「何としても生きてノトスまで行かないとな」
クラーク領の第1騎士団長のファルカが騎士団を率いて炊き出しを行っていた。領主のボンに見切りを付けてノトスへ移ることを決めたファルカ、彼女は正義感が強く実直で剣と指揮に優れた名将といわれるクラーク領1の実力者である。移民達がここまで無事に向かう事が出来たのも彼女達第1騎士団のお陰であった。
「ファルカさんがいてくれて本当に良かった」
「わたしらだけじゃもうおっちんでたよ」
「本当にありがとう」
移民団の総数およそ1000人、ノトスは受け入れる事が出来るのか?移民団達は自分たちの数を思いながら不安と一縷の希望を胸に薄味で具の少ないスープをすするのであった。




