間話 Sideノトス
グレオール・フォン・ノトス男爵、彼は救われた。もはやノトスは滅びる寸前であった。
飢饉が起こる以前には、ノトスの町には500人の住民がいた。周辺の町や村5つの村とノトス合わせて1000人の領民。それがノトスの町だけで飢餓によって400人が亡くなった。
500人いた町の人口がわずか100人にまで減ってしまった。
近隣の村もほぼ潰滅…
騎士爵より手柄を立てて、やっと男爵を受爵した所で起きた大飢饉。悪夢のようであった。
自分の領民が増えて喜んでいたのに、皆を幸せにしたかった。
民が亡くなって行くのが何より辛く申し訳ない。
手の届かない領地に、能力の及ばない自分自身を恨んだ。
救いとしてこの町にはC級冒険者が3人いた。
鷹の旅団のダリル、赤き剣のリーゼ
そして、元冒険者のアベルだ。
この者たちにノトスは救われていた。
飢饉が進み、町の物価は我々の資材で抑えてはいたが5倍まで膨らみ、どうしようも無くなってきている。
芋1つを家族でスープにして食べる生活…
こんな食事で戦える訳がない。
ある日「少しでも肉を取ってくる」アベルが娘を連れて狩りに出たきり、帰って来なかった。
C級冒険者の一角を失い、もはや私の覚悟も決まった。
そんなある日、気力も無くなった町の広場に、良い香りと人の群れが出来ている。
スープと肉串をわずか各品、小銅貨5枚で販売しているではないか。私も行列に並んだ。やっと順番がきてスープと肉串を銅貨1枚で購入した。
なんと言うことだ。スープにも肉が入っていて野菜もたくさん、そしてパスタも入っている。しかもこれはレッサーウルフ肉ではなく、ウルフ肉だ。
「美味い、美味すぎる…」
溢れ出る涙をこらえ、店主に礼を言わなければ…
店の前まで近づくと、店主の横にはあのアベルの娘がいるではないか…
私はこらえきれずに涙した。
アベルが、あの男の娘が…
この者を、命を掛けて連れてきてくれたのだ…
その日は挨拶が出来なかった。
平常心で、きちんとこの恩に報いねば。
更に、この飢饉にトドメを指していた「異様な物価高」の謎も解けた。
原因であった物価高の仕掛人は、ゴルナート商会だった。私はやつらを逆に罠にハメ、ウルフを5倍の価格で売り付けてやった。「5倍だと惜しい…6倍にするかも」と臭わせた。
欲に目が眩んだゴルナートは、隣のバカ領主の代わりに領の運営を回していた「代官的な執事長」と「メイド長達」、各領の使用人たちをただで手放しよった。
これで、亡くなった領民達への手向けに…少しでもなったであろうか?
ゴルナート商会は王都にウルフを売りに出ていきよった。自分が作った相場で麻痺しているのを忘れて…
明日からは少しずつこの領地は良くなる。




