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【書籍化・コミカライズ進行中】3才児ですが可愛い花嫁がやってきた!と溺愛されてます。しかし私は敵国の最強魔法帝です  作者: 六花きい


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5. 敵国壊滅計画、揺らぐ


「どんなに場を整えても、素敵な令嬢を紹介しても、仕事ばかりで興味も示さず……これはもう無理だと諦めていたのよ? それなのに、こんなに可愛いお嫁さんが来てくれるなんて」

「陛下のご恩情に、感謝せねばなるまいな」

「うちに来て良かったと思えるよう、誰よりも幸せにしてあげないと!」


 息子の婚期について、相当案じていたらしい。


 母が深く頷いた。

 隣に立つ父……先代のセシリオ辺境伯もまた賛同するように頷き、目頭を赤く染めている。


 ちらりとロイドを見上げれば、当の本人は騒ぎの中、無表情のまま微動だにしない。

 ただ「そうですね」と、他人事のように呟いている。


 そんなに結婚が絶望的だったのか……。


 確かに昨今の令嬢達は、話術に長けたスマートな貴公子を好むと聞く。


 いかに女性を楽しませられるかが、ある種男性としてのステータスになっているため、これほど不愛想で面白味がなければ、令嬢達の不満もひとしおだろう。


 王宮にいた時から思ってはいたが、まるでどこかに置き忘れたのではないかと思うほど、感情の起伏が少ない。


「突然連れて来られて、びっくりしちゃったわね? ようこそ、セシリオ辺境伯家へ! 私はロイドの母、エルマ。こちらが父のフロストよ」


 ロイドの腕から奪い取るようにして、エルマは勢いよくレティシアを抱き上げる。


「はぁぁん、可愛い! 可愛いわぁぁぁ!!」

「……」


 子ども養分を摂取するがごとく興奮気味に抱きしめられ、グリグリと頬ずりまでされ、レティシアはギシリと固まった。


「ロイドの下にもう一人弟がいるのだけれど、騎士団の寮にいて滅多に帰宅しないから、戻ってきたら紹介するわね! あなたのお名前、教えてもらえるかしら?」

「……れてぃ」

「まぁ、レティちゃん! なんて可愛いの!」


 ……想像の百倍、喜ばれている。

 先ほどからこの屋敷の者達は、レティシアを不安にさせるような言動を一切見せず、ただひたすらに喜び、歓迎してくれている。


 辺境の地が厳しい環境にあるのは、どこの国でも同じこと。

 ここミネルヴァの街にも、魔獣被害で親を亡くした者や、戦争孤児が少なからずいるはずだ。


『身元が不明』というロイドの言葉から推し量り、名前以外は敢えて聞かず、諸手を上げて受け入れてくれている……?


 実のところは分からないが、経験したことのないキメ細やかな配慮に戸惑い、召喚直後に決意したはずの『敵国壊滅計画』が、ガラガラと音を立てて崩れていく。


 図らずも訪れた敵地で、この歓待ぶり――完全に想定外だった。


「ロイド、この子の専属侍女は決めた?」

「まだ何も決めていません」

「なら、アリエッタをつけなさい。あの子なら安心だわ」


 エルマがてきぱきと指示を出す。

 使用人達の間から進み出たのは、溌剌とした印象の若い女性だった。


「アリエッタと申します。それでは本日より、レティ様の専属侍女を務めさせていただきます」


 背筋をぴんと伸ばし、丁寧に一礼する。

 エルマのお墨付きがつくほどだ。侍女として、相当優秀なのだろう。


「ありえった」

「はい、アリエッタです。何でもお申し付けくださいね」


 レティシアを安心させるように屈みこみ、アリエッタはにっこりと微笑みかけてくれる。


 冷え切った空気の中、最低限の使用人だけが黙々と仕事をこなす。

 向かう道で馬車に揺られながら、そんな光景を想像していたというのに。


「旦那様の妻になる方に、失礼があってはいけない」と皆が張り切り、どうしたらレティシアが喜ぶか、口々に案まで出しあっている。


 ……向けられる眼差しすべてが、驚くほど温かい。


 警戒心が無さすぎるのではと心配になってしまうほどだが、冷血将軍の屋敷とは思えない、優しさに満ちた場所だった。




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