#49
倉庫の上で襲撃者と対峙するレオポルトとアニ。
「…行くぞ」
「はいっ!」
そこで二人は合図を確認すると、まずアニの持っていた散弾銃が連射される。
ッ!ッ!ッ!ッ!
狭い空間において圧倒的な面制圧能力を有する散弾。その数十発に分散したスチール弾は、距離を取っていた襲撃者に満遍なく攻撃が飛ぶが、
「っ!弾かれた!?」
襲撃者は持っていた魔導具を起動させると、その全てが展開された障壁魔法で防がれた。
「魔法弾に干渉する障壁魔法?!」
「古代魔法だ。来るぞ!」
すると襲撃者はこっちのターンと言わんばかりに鉄扇を広げると、直後に分裂。宙を舞って攻撃を仕掛けてきた。
「っ!」
そこでもレオポルトは躊躇なく持っていた短機関銃の引き金を引いた。
ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!
ストックを展開し、肩に当てたことで集弾性の比較的高い拳銃弾が襲撃者にまっすぐ飛んでいく。
その間にレオポルトはベリザーナを持って接近を行うと、
「っ!伏せろ!!」
直後、強烈な魔力の波を感じ取り、アニに向かって叫ぶと、
ッーーーー!!
倉庫の一階の部分、ジャクソンとヴァージニアが担当していた場所で一気に灼熱の炎が巻き上がった。
「っ!?」
その正体が竜の息吹であることに気がつくのに時間はかからなかった。
「っ!」
キンッ「いぎぃっ?!」
するとそんな炎に知ったことかと言わんばかりに襲撃者が突撃をしてきたので、銃で辛うじて強化ガラス製のナイフを押さえ込むレオポルト。
「伏せてっ!!」
するとそこで後ろに居たアニが言うと、持っていた拳銃の引き金を引き、一発の銃弾が襲撃者のベルトをかすって何かが落ち、それに襲撃者は反応をしてそのままレオポルトを押し込むと、そのまま前に一回転する。
「っ!」
レオポルトはそこで敵の狙いがアニに切り替わったと察し、すぐに動いてベリザーナのデバイスから火焔魔法を発射した。
「っ!?」
接近してきた炎を前に襲撃者は上に飛んで回避し、アニは飛んできた火焔魔法に一瞬驚くも、先ほどレオポルトが装備させた追加の障壁魔法のおかげで防がれた。
「大丈夫か?」
「レオくんこそ」
そこで二人は一旦合流を測ると、そこで再び倉庫の通路を挟んだ状況で魔法を使って宙に舞い、再び地に足をつけた襲撃者を見る。
「貴様…」
そしてそこで襲撃者は両手にガラス製ナイフを握ったままレオポルトに聞いた。
「なぜ帝国流の古代魔法を使える?」
「生憎、その方に詳しい人がいるのさ」
レオポルトはそこで一瞬、視線が鋭くなると聞くように返した。
「答えはこれでいいだろう?…『外廻衆』」
「っ!?なぜその名を…!!」
名を聞き、明らかに動揺した声を一瞬漏らしてしまう。そりゃそうだろうな。
「ふんっ、ちょっと歴史に深入りしすぎているだけさ」
「…」
レオポルトは答えると、その襲撃者はしばらく沈黙すると、そこで少し足を動かす。
「っ!来るぞ!」
「っ!!」
直後、レオポルトは叫ぶと、襲撃者は一定のステップを踏んで剣術を繰り出した。
「(王国流の剣術…!!)」
魔力が無くとも、周囲の魔力を吸収して指向可能な襲撃向けの技。前世では魔王を追い詰めた最強格の技だ。
「ちっ!!」
そして、自分がひたすらに愛用していた技だった。
その威力は自分が一番知っていた。
「うぉっ!!」
急速な突進には破滅的な魔力滞留術が練り込まれ、幾多も展開した障壁魔法が一瞬で貫かれて崩壊すると、ガラス製のナイフはレオポルトの持っていた短機関銃を正面から突き刺さって半分に切った。
「嘘…!?」
これでも無理かと驚いたレオポルトは多少の被害を覚悟した。するとその瞬間、
「避けてください!!」
アニが叫ぶと、目の前に魔法を展開した。一発の小球、それがレオポルトの正面に飛び出た直後に、激しく閃光を撒き散らした。
したが炎で燃えていると言うのに、それでもなお明るく見えるのは魔力に感応して光る魔法光だからだった。
「っ!!」
襲撃者はその唐突な閃光により、展開していた剣術の魔力がそちらに一気に持って行かれたことで勢いを失った。
そして勢いを失った直後、
「避けなさい!」
下からヴァージニアの声が聞こえると、直後に真っ赤な炎が立ち登り、襲撃者を包み込んだ。
そして炎が一瞬で止まると、炎に包まれた襲撃者は姿を消し、一瞬の静寂が場を包んだ。
「…い、今のは?」
「ジニーの声がした気がしたが…」
そこで周囲を見回すが、見えるのはただ燃えている倉庫のみ。
「誰だ、火を放った馬鹿は?!」
「そ、それよりも早く消火しないと!!」
火の回る倉庫に、色々と大騒動になってしまった事にレオポルトはため息を吐く。
「チッ、こうなったら仕方ない…」
自分の魔力切れを覚悟して彼は目を閉じると、ベリザーナを前に突き出す。
「大いなる水の主よ、我に実りを与えたまえ…」
そして呪文を唱えると、前に突き出したベリザーナを中心に水の渦が出来上がる。
「我らに一瞥を下し、その力を分け与えたまえ」
そして直後に水で出来た魔法陣が燃え盛る倉庫の天井に展開された。
「一発でかいの行くぞ!溺れるなよ!!」
レオポルトは下にいるジャクソン達にも聞こえるように叫ぶと、側にいたアニに腕を回してぐっと近寄らせた。
「捕まっとけ」
「え?!あっ、うん…」
その行動に一瞬アニは顔を赤くしながらもやや困惑気味にされるがままにレオポルトの体を掴んだ。
すると直後、完成した魔法陣から大量の水が滝のように溢れ出てくると、倉庫に一気に水が流れた。
「うわっ?!」
「ぬぉっ!!」
その滝のような水は一瞬で倉庫内の炎を鎮火し、ついでに荷物も押し流すと、ジャクソン達も水圧に負けて呑まれる。
その反動で水が覆い被さり、レオポルト達もその水に押し流された。
「おいおい…」
その時、現場に対魔術師部隊を率いて港湾地区に突入したカムチャルは唖然としていた。
「なんてこった、大火事じゃねえかよ!!」
そこでは濛々と立ち込める黒煙と炎、ここまで感じる熱波があり、遠くでは消防車のサイレンが鳴り響く。
「急げ!!対魔装備を展開しろ!!」
装甲車でサイレンを流しながら急行するカムチャル達。
警察から派遣された彼らは、すぐさま消火作業と同時に行われているであろう魔法戦闘に対する警戒を呼びかけた。
「あちっ!」
「くそっ!暑すぎます!」
「構わん!刻印魔法でなんとかしろ!」
そこで現場である港湾地区の倉庫に到着し、隊員の降車とともに魔力滞留弾を装填した自動小銃を構えて倉庫を見る隊員達。
「突にゅ…」
そして即刻突入命令を下そうとした時、
ーーー!!
「?」
倉庫の中から不思議な轟音が聞こえ、倉庫の中の明かりが一瞬で消えたことに首を傾げた途端。
ザバーーーンッ!!
「「「「「っ!?!?!?」」」」」
突然倉庫の全ての出入り口が中からこじ開けられ、その奥から大量の水が倉庫の荷物とともに流れてきた。
「たっ、退避ぃ!」
大量の水の流入にカムチャルは驚いて指示を出すと、大魔部隊も一斉に車の後ろに避難した。
「な、何だぁ…?」
何が起こったかと困惑していると、大量の水が流れてきた奥でずぶ濡れになった魔学院特有のコートを羽織った人影が流れてきた。
「ゲホッゲホッ」
そして軽く咳き込んで水を吐き出すと、その青年が側にいた生徒に聞いた。
「大丈夫か?」
「あっ、はい!!」
そして無事を確認したあと、軽く頭を振って水を落としたその青年は顔を上げてカムチャルの存在を確認した。
「あっ、小父さん」
「よう、随分と派手にやりやがったなこのクソガキ」
そこで周囲が水浸しになった倉庫を見て軽くカムチャルは青筋を立てていた。
その顔を見てレオポルトは顔を青くして弁明する。
「ちょ、違うって!これ俺じゃないって!!」
「やかましい!消防車まで呼びつけやがってこの馬鹿野郎!」
直後、カムチャルはレオポルトに拳骨を喰らわすと、そこで言う。
「どうせ古代魔法だろ?こんな威力の放水魔法、それ以外無かろう!」
「ぎゃー、耳耳!いでででででっ!!千切れる千切れる!」
すでに魔力切れを起こして明日の頭痛が確定している状況で、耳をひっぱられたレオポルトは軽く悲鳴を上げると、
「テメェら!ムショでキッチリ説教をしてやるからな!覚悟しておけ!」
「何でだよ!」
そこで容赦無く装甲車にレオポルト達四人は放り込まれると、そのまま最速で警察署に連行されていった。
「警部」
そして速攻で警察署に送った車を見送り、その後にカムチャルは倉庫を調査していた隊員に報告を受けた。
「倉庫内外で数名の人物を拘束しました」
「そうか、容態は?」
「銃弾で撃たれた痕跡があります。数人は死者も出ていますね」
あとは焼死体もあったりと、なかなか悲惨な状況だった。まああれだけ派手に燃えてて死体が出ない方がおかしいと言うこともであるが。
「はぁ…例の子供は?」
「はっ。現在、倉庫内を捜索中です」
すると無線で連絡があり、倉庫内のコンテナの中に収容されていた子供を見つけたと言う報告があった。
『狐科の獣人です。薬物使用の痕跡があります』
「そうか…すぐに救急車の手配をしてくれ」
『了解しました』
そこでカムチャルはひとまず安堵の息を漏らすと、ふと足元に転がって機械に目がいった。
「ん?何だこれ」
その機械は、アニが倉庫内での戦闘で襲撃者から落とした何かの通信機だった。
「おい、鑑識と通信班を呼べ!」
長年の刑事の勘が冴え、直ぐに専門部隊を呼びつけて解析が行われると、そこで驚くべき事実が発覚した。
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「まさか狙われていたとは…」
マリーナは軽く驚きながらも制御盤を操作して目の前の機械から制御棒を取り除いていく。
「畜生、俺たちの卒論が…」
深夜に叩き起こされ、ぶつぶつと文句をこぼす同級生に彼女は言う。
「安心しろ。研究データは揃っている。あとから同じ条件でやり直せばいい」
そう言い作業を完了させると、目の前の核融合炉から魔力制御棒が引き抜かれ、実験炉は活動を停止した。
「それに、起爆されてここを丸ごと吹っ飛ばされたくないだろう?」
「それはそうですが…」
そこで生徒達は連邦保安局からの通報で、魔力制御棒に魔力爆弾が仕込まれている事実を前に複雑な心情を抱いていた。




