9.
(笑わせる……私にしてきたのは虐待じゃない)
国王も公爵夫妻に不快感を感じているらしく、肩をすくめて言い放った。
「虐待をする親は中々己の非を認めないものだ。酷く見苦しいことにな」
「「そ、そんな……!」」
「陛下は分かってくださるのですね!」
国王がファンカイアの話を信じた、と思ったファンカイアは喜んだ。実際は嘘だと見抜かれているようなのだが。
(陛下は何も信じると言ってないじゃない。そもそも、あの冷たい目つきからして嘘が見え見えだって分からないのかしら?)
更に、ここでムーワが便乗する。
「陛下、発言させていただきますと、私はファンカイアから両親に虐待されていると相談されていたのです!」
「「はぁッ!?」」
ファンカイアに便乗してムーワも公爵夫妻の切り捨てに動いた。裏切られた夫妻はもう呆然とするしかない。
(手際の早い裏切りだこと。無駄だろうけど感心するわ。あまりのエゴイストっぷりに)
「つまり、ファンカイア嬢。虐待していたのは公爵夫妻……そなたの両親だったと?」
「はい! そのとおりですわ!」
「それなのに、姉のオルフェーノに濡れ衣を着せようとしていたということだな」
「はい! そのとお……え、いや、その……!」
(あらら~)
ファンカイアは最初の茶番の時に『姉オルフェーノに苛められた』と叫んでいた。しかし、陛下が介入して後で『両親が虐待していた』と言い出した。国王に誘導される形になったが、どちらにせよ嘘をついたことになる。
「なるほど、そなた達は私やここにいる貴族たちに嘘をついていたのだな。嘘でオルフェーノ嬢を貶めたと?」
「ち、違います陛下!」
「それでは両親に虐待されていたというのは嘘ということか?」
「そ、それは、その……」
(馬鹿なことを言い出したものね。自分で味方を敵にするなんて。しかも、あの顔は前世の映画で見たことあるわ。追い詰められた悪役の必死の形相みたい)
言葉に詰まるファンカイア。その間に公爵夫妻が再び騒ぎ出した。
「陛下! この馬鹿は嘘を叫んでいたのです! 我々が虐待をしていたなどと有り得ません!」
「陛下! 私達を信じてください!」
「陛下、えと、その……」
両親が叫びだしている中で、ファンカイアは抜け道がないか考えている。すると、ムーワが助け舟を出してきた。
「陛下、ファンカイアは脅されていたんです! 自分の両親に!」
「「ええ!?」」
「そうですそうです!」
ムーワの口に出したことも嘘、それも今思いついただけのこと。だが、ファンカイアは全面的に同調した。




