10.
「脅されていただと?」
「そうですわ! 今回の件はお父様とお母様に脅されて行ったんです! お姉様を貶めないと痛い目に遭うぞって言われて……!」
「「…………!」」
ファンカイアは実の両親を指差して喚く。指差された公爵夫妻はもはや何かを言う気力も失ったのか唖然としたままになった。王子まで加わったのだから下手なことは言えないだろう。オルフェーノはそんな両親の姿を滑稽に思った。
(あんなに可愛がっていた方の娘にここまで裏切られた精神的ダメージは大きかったようね。その娘が可愛らしい容姿と顔を歪めて保身のために親を切り捨てる。小悪党だわ)
「ふむ、つまり先程のそなた達の起こした茶番の責任は公爵夫妻にあるということか?」
国王が神妙な顔つきで問いかけるとファンカイアとムーワは首を縦に振って答えた。
「そうですわ」
「父上、そういうことです。我々は悪くはないのです。どうか慈悲をください」
「……その言葉に嘘はないな」
国王が試すように確認すると、ムーワが一歩前に出て言葉を広げる。
「この私が父上に嘘を付くはずがありません。私は誠実な人間ですから!」
(どこがよ。面倒事を私に押し付けておきながら、自分の手柄にして馬鹿にするだけのくせに)
平然と嘘を重ねるムーワにオルフェーノは何か言ってやろうと思ったが、国王は提案を始めた。
「そうか、本当だというのならこうしよう。そなた達の口にしたことが本当なら罰を受けるのは公爵夫妻だけだ。だが、嘘が発覚した場合にはムーワ、お前の第二王子の称号は剥奪、ファンカイア嬢の貴族籍は剥奪する」
「「は、剥奪!?」」
ファンカイアとムーワは目を見開いて驚いた。どうやら嘘がバレた時のことを考えていなかったらしい。だからこそ、剥奪という言葉だけで態度が一変してモゴモゴと言い出す。
「い、いくらなんでも……」
「そ、そんなの、あんまりでは……」
「あんまりだと?」
「ムーワ様は王子なのですよ。その地位を簡単に剥奪できるものなのですか!?」
(……なんてアホなことを言い出すのよ? 相手は国王陛下なのに……)
ファンカイアの質問にオルフェーノは呆れ果てた。周りの貴族達も笑いをこらえたり笑ってしまっている。流石にもう何か言わずにはいられなかったオルフェーノは口を挟んだ。
「ファンカイア、随分と面白いことを言うわね」
「お、お姉さま!?」
「貴女が質問しているお方が国王陛下だというのに、その意味が分からないの?」
「っ! いいえ、なんでもないです……」
姉に諭されて、自分の質問が馬鹿馬鹿しいものだと気づいたファンカイアは顔を真っ赤にして俯いて黙った。ただ、ムーワはまだ何か言いたそうだ。




