8.
(これはチャンスね)
「国王陛下、発言の許可を」
「許す」
「私の両親――クロンギ公爵夫妻は私に冤罪を掛けたり、妹に公然で暴力を振るったのは事実です。挙げ句には、今になって慌てて弁明する始末。つまり、これまでは上手く仮面を付けていただけであり、今の非道で見苦しい姿こそが両親の本性なのです」
「「ち、違います、陛下!」」
アデントとエルドーロは同時に違うと声を上げるが、無駄のようだった。オルフェーノの口にした通り、二人は暴挙に出ている。ムーワと娘のファンカイアも巻き込んで。ムーワはどうすることもできないと悟ったのか黙って眺めるしかなかった。
そんな光景を見ていた貴族たちは、遂に笑って邪推を始める。
「――あの公爵家でまともなのは長女だけではないのか? もしかして、苛めをしていたのは両親だけ?」
「――長女に自分たちの罪を押し付けていたというの? それでこの茶番? 最悪じゃないのかしら?」
「――あり得るな。公然でここまでの醜態を晒しているのだから最低だ。第二王子殿下も巻き込むなんて」
周囲の邪推が中心人物たちにも聞こえてくる。すると、母の手を強引に振りほどいたファンカイアが貴族たちに向かって叫んだ。悲壮感を込めた口調で。
「そ、そのとおりですわ! 私は両親から暴力を振るわれていましたわ!」
「「「はあっ!!??」」」
「……?」
ファンカイアの口から出た言葉に誰もが驚いた。今度は何を言い出すんだと思った。
「皆さん聞いて下さい! 私はお父様とお母様に虐待されていたのです!」
「おい! 何を言うんだ!」
「ちょっと! なんてこと口にするのよ!」
この状況で、ファンカイアは『両親が虐待していた』と言い出した。しかも、下手な演技だが泣き真似まで始める。
「わああああん! 私はいつも~っ!」
「やめろ馬鹿!」
「やめてよ!」
つまり、全責任を公爵夫妻に押し付けようと考えたわけだ。そんな妹の思惑に気づいたオルフェーノは寒気すら感じた。
(……あれだけ可愛がってくれた両親を切り捨てる? ここまで自己中だったなんて……)
ファンカイアは両親が怒鳴り散らしていても構わずに悲劇のヒロインぶって喚く。もっとも、先程の茶番劇を見ていた貴族たちからは白い目で見られているのだが。
「ふむ、ファンカイア嬢は両親に虐待されていたというのか?」
「はい!」
「「ッ!?」」
国王がファンカイアの戯言に乗ってみると、彼女は嬉しそうに返事を返す。それに対して公爵夫妻は国王に慌てて叫びだす。
「違います! 陛下、娘は嘘をついているのです!」
「私達が、娘に虐待なんてするわけがありません!」
公爵夫妻がオルフェーノに一瞬だけ視線を向けて叫ぶ。その一瞬の視線に気づいた彼女は不快に感じた。




