7.
(これはもう爆発寸前……いえ、もう怒りが爆発してるわね……!)
「つまり……第二王子ムーワは先日の婚約解消の通達を確認をせずに、勝手に婚約破棄を決行した挙げ句、権限もないくせに公爵令嬢オルフェーノ・クロンギを国外追放、いや死刑にしようとした! 更には自分が次期国王だと!」
「ご、誤解です……!」
「黙れ! 優秀な兄と弟を愚か者などと恥を知れ!」
「ち、違います!」
遂に国王の声が怒気をはらんで叫ばれた。ムーワは震えながらも慌てて否定を始める。
「私はそんなこと口にした覚えはありません!」
「え? 何を言っていますの? ムーワ様はおっしゃって、」
「馬鹿が! もう黙れ! おい公爵!」
余計なことばかり口にするファンカイアにムーワは嫌気が差し、彼女の両親を呼んだ。
「いい加減にしろ! ファンカイア!」
「お父様まで……痛っ!」
エルドーロはファンカイアの頬を叩いた。更にアデントがファンカイアの口を両手で強引に塞ぐ。貴族らしからぬ暴挙だ。
その光景にオルフェーノは既視感と嫌悪感を感じる。自分も受けたことがあっただけに。
(あの親たちは……都合が悪くなれば私でも妹でも暴力を振るうのね。本当、毒親だこと)
妹のうめき声が聞こえてくる状況になったが、このままで終わらせるつもりはないと思っていたオルフェーノは、驚いた声を上げる
「まあっ! 今、私の両親が私の妹に暴力をふるいましたわ! 公然の場で、親が子供に暴力を振るうなんて!」
「オルフェーノ!? お前!」
「な、何を言い出すのよ!?」
「皆様もご覧になったでしょうか! あの公爵夫妻は自分の娘を虐待したのです!」
アデントとエルドーロが慌ててオルフェーノに視線を向けるがもう遅い。周囲の貴族はしっかりと見て聞いていた。両親の愚行とその娘の声を。
「――なんて人達なの」
「――非常識、ありえないな」
「――同じ貴族として恥ずかしい」
「「……っ!」」
貴族たちの侮蔑と嘲笑の声が聞こえ始める。そもそも、聞こえるように口にしているのだ。娘に暴力を振るった公爵夫妻に。その肝心の夫妻、アデントとエルドーロの顔は真っ青だ。
「ち、違う! これはただの躾! いや、娘の愚行を咎めただけだ!」
「そうです! 虐待だなんて何を言い出すよ! オルフェーノ!」
慌てて貴族たちに弁明するアデントとエルドーロだったが、もはや何を言っても無駄だった。それは国王に対しても同じ。
「躾? 咎める? それで娘の頬を叩いたのか? 他に方法は思いつかないのか? 公爵ともあろう者が?」
「へ、陛下……」
国王に訝しげに迫られてエルドーロはたじろぐ。それを見たオルフェーノは更に仕掛けることにした。




