4.
「う、嘘を付くな! そんなはずはない!」
「いいえ、本当ですわ。先日、国王陛下から直々に通達があったはずです。私オルフェーノ・クロンギと第二王子ムーワ・ミラモースタの婚約解消を命じると」
「せ、先日!? そんな馬鹿な!?」
「そう言われましても、私は嘘を言う意味がありません。そうでしょう、皆様」
動揺を隠せないムーワに対してオルフェーノは笑って周りの貴族に視線を向ける。貴族たちは誰もがオルフェーノを肯定するかのように首を縦に振った。
「ば、馬鹿な……」
ムーワも周りの貴族の反応見て察した。そして顔を青ざめるが……違った動きをしているのは三人だけいた。
「騙されないわ! 私そんなの知らないもの!」
「そうだ! 嘘だ!」
「殿下! オルフェーノは嘘を言っています! 我が家にはそんなことは伝わっていません!」
(殿下から婚約破棄できなくなる……それでは計画が破綻するものね)
ムーワ達の計画はオルフェーノに恥をかかせて貴族総出で辱めることだった。そのためには『王子の婚約者が問題を起こした』という筋書きが必要。だからパーティーで婚約破棄を宣言した。
しかし、その目論見は外れてしまった。既にムーワとオルフェーノの婚約は解消されてしまっていた。つまり、ムーワは赤の他人に婚約破棄を宣言するという意味不明な行動を起こしたことになる。しかも、ムーワに乗じて三人も醜態を晒すことになった。
「きっと、お姉様が皆さんに嘘の手紙を送ったのよ! 国王様の名を騙って!」
「ああ! なんて罪深い子供なんでしょう!」
「申し訳ありません皆様方! 娘がとんだご無礼を!」
妹と両親が騒ぎ立ててもオルフェーノは冷たい視線を送るだけ。それは他の貴族たちも同じだ。それでも自分たちの計画が台無しになった挙げ句に恥をかいているという状況を認めたくなくて、必死にオルフェーノを嘘つきだと叫び続ける。
「オルフェーノ! お前は嘘を言っているだろう!」
「本当は嘘だと言って謝りなさい!」
「お姉様の嘘つき!」
馬鹿の一つ覚えのようにオルフェーノを嘘つき呼ばわりし続ける三人の醜態を見続けるのも面倒に感じたオルフェーノは分かりやすい説明を始める。
「本当のことですわ。昨日のうちに書面で通達が来たのですから、真面目な貴族ならば誰でも知っているはずです」
「き、昨日の……!?」
「ええ、真面目な貴族であれば知っています。真面目な方ならば。そう、真面目な方ならばね……」
真面目という言葉を繰り返すオルフェーノの真意に気づいた時、エルドーロ・クロンギは顔を真っ赤にした。
「き、昨日の書面の通達など、早急すぎるではないか!」
「早急? 貴族なら書面でも王家の報告であるならすぐに確認するものですよ? 真面目でない方の
お父様?」
「~~っ!」
オルフェーノは分かっていたのだ。クロンギ公爵家の当主である父が真面目でない方の貴族だということを。書面の通達を後回しにするような人格であり、そのせいで損するような男であることも。




