3.
「私の愛するファンカイアを苛めるなんて絶対に許さないぞ! オルフェーノ! お前は容姿だけじゃなくて心まで醜いようだな!」
(お前が言うな! ふざけんじゃないわよ……!)
容姿が醜いと言われて、オルフェーノは流石に笑みが引きつりそうになった。ムーワから散々ブスだとかブサイクだと言われ続けてきたから気にしないが、王族が大勢の前でそんな汚い言葉を言うなら話は別だ。王族の品位を下げるのと同じなのだから。
こんなことが国王に知られたらどうなるだろう……オルフェーノは想像せずにはいられない。
「しかし、よく聞け! こんな女だが私の婚約者であることは変わりない!」
ムーワはオルフェーノを指差して叫んだ。
「婚約者としての責任と情だ! お前はこの俺が直々に断罪してやる!」
「素敵ですわムーワ様!」
「素晴らしいです!」
「感激しました!」
ファンカイアとアデントとエルドーロの親子三人がムーワに盛大な拍手をする。オルフェーノを除くクロンギ公爵家の三人だけがムーワを讃えていた。
……三人だけだったのだ。周りの貴族たちは静まり返り、冷めた目つきで彼ら四人を眺めている。
「「「「「…………?」」」」
ムーワとファンカイア達も気づき、顔には出さないが内心では驚いた。
(どういうことだ?)
(何でみんな静かなの?)
(な、なんだ?)
(話が違うわ……?)
大勢の貴族たちが自分たちに賛同して讃えてくれる……そう思っていたが違った。想定していなかった状況にムーワとファンカイア達は動揺するが、それでも彼らの打ち合わせどおりに進めることにした。
「……と、とにかく! オルフェーノ・クロンギ! お前との婚約破棄及び、妹であるファンカイアを苛めた罪に対する処罰として、身分を剥奪の上で国外追放とする!」
「そうですか」
「ッ!」
オルフェーノは笑顔で気にもしていないように返事をする。それが気に入らないムーワは声を荒げて続けた。
「何か言い残すことはないのか! 今なら温情で話くらいは聞いてやるぞ! 許しを請いても無駄だけどな!」
「そうですか」
笑顔を崩さないオルフェーノは余裕を持って、ムーワとファンカイアとアデントとエルドーロの四人だけが知っていないであろう事実を伝えた。
「殿下、私達はもう既に婚約を解消しているのですよ」
「……え?」
「「「え!?」」」
オルフェーノの発言に四人は驚く。てっきり縋ったり否定するようなことを言うと思っていただけに『既に婚約を解消している』と状況が覆るようなことを言われるとは思わなかったのだ。




