2.
パーティーが始まり、招待客たちはダンスや談話を楽しむ。パーティーが中頃になるとオルフェーノの眼の前に一人の男が現れた。濃紺色の少し長めの髪、顔立ちは端麗で切れ長、第二王子でありオルフェーノの婚約者ムーワ・ミラモースタだ。
「オルフェーノ・クロンギ! 私、ムーワ・ミラモースタはお前との婚約を破棄する!」
ムーワはファンカイアの肩を抱いて宣言した。オルフェーノに見せつけるように。周りの貴族たちがざわめく中、オルフェーノは笑みをこぼす。
(反撃のときね!)
オルフェーノは笑みを浮かべながらムーワとファンカイアを見つめる。
「一体どういうことでしょうか?」
「言った通りだ! このクズが!」
「酷い言い草ですね」
オルフェーノは余裕そうに笑みを浮かべ続けると、ファンカイアが彼女を指差して叫んだ。
「酷いのはお姉様じゃない!」
(何が酷いよ)
酷いのはそっちだと言いたくなるが、オルフェーノはあえて向こうの作戦に乗るために話を進ませるようにした。
「私が酷いですって? どういうことですのファンカイア?」
「お姉様がずっと私を虐めてきたからよ!」
ファンカイアの叫びに周囲がざわつく。当然の反応だが、それでもオルフェーノは気にもしないでいる。
「どうして私がそんなことを?」
「私がムーワ殿下に好かれてるのが気に入らないからって、私の教科書を破ったり宝石を奪ったりしてきたじゃない!」
(それはむしろお前の方だろ! よくそんなこと言えるわね!)
自分のことを棚に上げて何を……と言いたい気持ちのオルフェーノだったが、ここは我慢した。
「そうだ! お前は私の気持ちがファンカイアに向けられていると知って、彼女に嫉妬して傷つけてきたんだ!」
ムーワがファンカイアの話を補足する。勿論、事実は逆だ。嫉妬もないし虐めてもいない。
(いやいやいや! 妹が嫌がらせで私を苛めてたんですけど!)
ここでもオルフェーノは我慢して笑みを絶やさない。彼女の計画の本番はまだだからだ。するとここで両親である公爵夫妻――エルドーロとアデントが拍手を始めた。
「素晴らしい! 我が娘を愛する殿下の気持ちには感服します!」
「愛する娘ファンカイアを任せられるのは殿下だけですわ!」
エルドーロとアデントはムーワを褒め称える。それでいてファンカイアとの仲を祝福するように大きな声を発する。
(本当に絵に描いた茶番だこと)
笑みを浮かべながら冷たい目になるという器用をこなすオルフェーノ。そんな彼女に対して、実の親であるはずのエルドーロとアデントは冷たい視線を向けるのであった。
「それに比べて妹に嫉妬するとはなんと醜いのだ」
「オルフェーノ、貴女はそれでも公爵令嬢なの?」
実の娘を蔑む両親こそ醜いのでは……と口にするのも後回しだとオルフェーノは思うが言っても無駄だと分かっていた。それよりも彼らの茶番の後が重要なのだ。




