1.
前世は日本人だった、それが今のオルフェーノ・クロンギの脳裏を占めていた。今世の世界に存在しない文明と知識と技術。それらが揃う前世の世界にオルフェーノは魅了されてしまった……と同時に絶望した。
「……今の私が生きる世界は、【悪役令嬢】とか【乙女ゲー】の世界みたいなのね。そうなると私は……!」
オルフェーノは自身の立場を前世の世界の小説のジャンルと重ねる。まるで【悪役令嬢に転生】したようだと。
つまり、これから冤罪で断罪される運命……そう思った直後、彼女は思いついた。
「そうだわ! 私もこの世界で今できることを利用して【ざまぁ】してやるわ! あいつらはそれだけのことを私にしているんだし!」
オルフェーノは自分を虐げた者達に復讐することを決意した。その日から来るべき時に向けて動き始める。
自分の足で立って生きていくために。
◇
艷やかな赤い髪を肩口に揃え化粧を慎ましい感じに抑えた美少女――オルフェーノは復讐のための入念な準備を完了した頃、絶好のタイミングがやってきた。
「……本当に情報は武器ね」
とある情報筋から、来週の王家主催のパーティーで婚約者の第二王子がオルフェーノに婚約破棄をすると知った。どうやらオルフェーノに恥をかかせるためだけが目的らしい。
だが、今のオルフェーノにとっては都合がいいことだ。彼女は嬉々としてその浅はかな計画に乗ってやることにした。
「どっちが恥をかくか思い知らせてやるわ。馬鹿王子」
◇
パーティー当日、多くの貴族達が招待されて、その中にはクロンギ公爵家も入っていた。オルフェーノとその家族である両親と妹もだ。
「いいか、パーティーではくれぐれも笑顔でいろよ。お前の顔でも暗い顔よりはいいからな」
橙色に近い薄い赤髪に、切れ長の黒眼と意地悪そうな顔立ちの男が高圧的な態度でオルフェーノに接してくる。この男こそ父――エルドーロ・クロンギ公爵。
「あんたみたいなのでもドレスを着せてやったことを感謝なさい」
薄い赤髪を長く伸ばして後ろにまとめた黒眼の熟女が厭味ったらしくオルフェーノを嗤う。この女こそ母――アデント・クロンギ公爵夫人。
「お姉様なんかいなくなっちゃえばいいのに」
薄い赤髪を長く伸ばしてツインテールにした可愛らしい顔立ちの少女が厭味ったらしくオルフェーノを嘲笑う。この少女こそ妹――ファンカイア・クロンギ。
(よくそんなに家族とは思えない言葉を口に出せるわね)
オルフェーノは珍しくこの三人と家族でパーティーに参加する。いつも外されるのに今回に限って一緒……つまり、この三人も第二王子の計画の協力者だということだ。
オルフェーノの両親と妹は、世間体のことも頭にあるようで、表向きは家族で仲が良いふうに取り繕っている。それも今日の婚約破棄までのつもりらしい。
(本当にいいタイミングね。私としても)
オルフェーノはそんな彼らに復讐する計画をその婚約破棄に乗じて決行する予定だ。彼らの性格の悪さを暴く形で。




