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8話 ゴリマッチョの怪我

「先生達が戻ったぞ!」


 廊下から誰かが叫ぶ。


 一瞬で教室がざわついた。


「帰ってきた!?」


「どうだったんだ!?」


「何かわかったのか!?」


 生徒達が一斉に立ち上がる。


 当然だ。


 みんなずっと待っていた。


 今いる場所がどこなのか。


 元の世界へ帰れるのか。


 少しでも情報が欲しかった。


「行こう」


「行くでヤンス」


「異世界報告会だな」


「だから決めつけるなって」


 僕達も廊下へ出る。


 同じことを考えた生徒は多かったらしい。


 廊下は人で埋まっていた。


 押し合いながら一階へ向かう。


 そして。


 職員室前まで来たところで。


 僕は言葉を失った。


「……え?」


 みんなボロボロで満身創痍だった。


 制服は破れ、顔には擦り傷と泥がついている。


 体育教師のゴリマッチョに至っては、左腕を布で縛っている。


 そして、その布は大量の血によって真っ赤に染め上がっていた。


 周囲から悲鳴が上がる。


「先生!」


「何があったんですか!?」


「襲われたの!?」


 誰かが叫ぶ。


 だが返事はない。


 全員の顔色が悪かった。


 まるで何か信じられないものを見たような顔をしている。


 その時。


 職員室の扉が開いた。


 中からハゲチャビン教頭が飛び出してくる。


「どうだった!?」


「……いました」


「何がだ!?」


「バケモノです」


 廊下が静まり返った。


 誰も喋らない。


  代わりに星先輩が口を開く。


「そのバケモノに襲われて……みんなで必死に逃げて来たんです。その時に、僕らを逃がすために郷里松先生がケガを……」


 ゴリマッチョが気にするなと言いながら、星先輩の肩を優しく叩いた。


 やるじゃないかゴリマッチョ。


「そのバケモノというのは何なんだ? 大きなクマかイノシシか?」


「あれは多分……」


 ハゲチャビン教頭の言葉に、どこか言いにくそうな表情を浮かべながら神武が続ける。


「漫画とかアニメに出てくるゴブリン……だと思います」


 その瞬間。


 空気が変わった。


 冗談じゃない。


 聞き間違いでもない。


 ゲームや漫画の中にしか存在しないはずの名前。


 それを。


 神武は真顔で口にした。


「自分でも信じられませんが……」


 神武が拳を握る。


「ここはーー日本じゃありません」


 周囲がざわつく。


「信じられないそんなの!」


「日本じゃないならここはどこなんだ!」


不安の声が飛び交う。泣き出してしまう女子、地面に座り込む男子、教師陣さえも青ざめた表情でいる。

その中にギャル子もいた。自分も泣きそうになりながらも、泣いている女子の背中をさすっている。


そんな中。


「異世界来たー! でヤンス!」


「はっはっはっ。ここは異世界なのか。ところで湊、ゴブリンてなんだ?」


 どうやらこの二人だけは、現状のヤバさを理解していないようだ。


 「みんな落ち着くんだ!」


天道美月。彼女のその声に、一斉に視線が彼女へと向かう。


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