第4話 ログインボーナス
「いやいやいやいや」
「なんだよこれ……」
「映画の撮影?」
「そんな訳あるか!」
教室中がパニックになる。
当然だ。
僕だって意味が分からない。
「由良殿」
「なに?」
「これはきっと異世界転移でヤンス」
「は? まさかそんな訳ないだろ」
「しかし吾輩のオタク知識がビンビンと反応してるでヤンス」
「ここは現実だ、戻ってこい」
「吾輩は常に二次元と共に生きてるでヤンス」
「駄目じゃん」
そんな話をしている間にも、生徒達は次々に窓へ集まっていく。
誰も席に座っていない。
いや、雲水だけ座っていた。
とりあえずあいつはスルーだ。気にしてられない。
僕も床から腰をあげ、窓際へ近付いた。
見えるのは森。
どこを見ても森。
山というより森林だ。
しかも見渡す限り続いている。
「マジで何なんだよ……」
誰かが呟く。
その気持ちはよく分かる。
窓の外にはいつも見えていた住宅街や電柱、その全てが消えている。
「ねぇ」
ギャル子が少し不安そうな声を出した。
「これ、何が起きてるの?」
教室が静かになる。
誰もそれに答えられなかった。
「そうだスマホ!」
突然誰かが叫ぶ。
「家に電話!」
その言葉で教室中の生徒が一斉にスマホを取り出した。
僕もポケットから取り出す。
画面を確認する。
そして。
「圏外だ」
誰かが呟いた。
「は?」
「嘘だろ」
「マジだ」
「こっちも」
「あたしも」
あちこちから同じ声が上がる。
僕も確認する。
右上のアンテナマークは圏外。
「……終わった」
「何がでヤンス」
「ログインボーナス」
「あ! 吾輩もでヤンス!」
三百日近く続いていたのに。
「あんた達、今気にするとこ、そこじゃなくない?」
ギャル子が腐った物を見るような目で僕らを見る。
「俺は携帯持ってないから関係ない。はっはっはっ」
「南雲、あんたこの状態でよく笑えるし」
「相変わらず顔は笑ってないでヤンス」
だけど、僕は雲水のその無表情な顔がいつもより焦っているように感じた。
「はっはっはっ」
まだ笑ってるのでもしかしたら勘違いかもしれない。
「ネットも繋がらない、電話も駄目!」
「おい誰か先生呼んでこいよ!」
「職員室行くぞ!」
誰かが叫ぶ。
その時。
廊下から慌ただしい足音が聞こえた。
次の瞬間。
教室の扉が勢いよく開く。
「お前ら落ち着け!」
担任の村雨先生だった。
普段無気力でだらけ切った顔した先生だが、今は顔色が真っ青だ。
「全員教室から出るな!」
「先生!」
「何が起きたんですか!?」
「知らん!」
即答だった。
教室がさらにざわつく。
「職員室も混乱してる!」
担任は額の汗を拭う。
「とにかく今は動かず待機だ!」
いったいここで何が起きているというのか。
とにもかくにも。
今日のログインボーナスが手に入らないことは確かだった。




