第36話 とりあえずの衣食住
洞窟生活三日目。
「寒い」
「寒いでヤンス」
僕と湊は毛布代わりの上着にくるまっていた。
洞窟は思った以上に冷える。
寝心地も最悪だ。
身体中が痛い。
その一方で。
「はっはっはっ」
雲水だけは元気だった。
岩の上で胡坐をかいている。
「なんで平気なんだよ」
「慣れだ」
「何にだよ」
「色々だ」
絶対説明する気がない。
僕は諦めた。
◇
朝食。
保存食。
終わり。
「終わってるな」
「終わってるでヤンス」
昨日と同じ感想だった。
残りも少ない。
このままではまずい。
「食料探すか」
「探すでヤンス」
再び森へ向かう。
すると今日は少し違った。
「あ」
湊が立ち止まった。
「どうした?」
「これ食べられるでヤンス」
指差した先には草。
ただの草にしか見えない。
「本当に?」
「冒険者ギルドで教わったでヤンス」
なるほど。
Fランク冒険者も伊達じゃないらしい。
試しに少し採取する。
その後も。
「これも大丈夫でヤンス」
「これは?」
「駄目でヤンス」
湊が妙に頼もしかった。
「意外と役に立つな」
「失礼でヤンス!」
怒られた。
だが事実だった。
◇
昼頃。
洞窟へ戻る。
食料は十分とは言えない。
だが昨日よりはましだった。
「問題は寝床だな」
岩の上は痛い。
本当に痛い。
そこで雲水が立ち上がった。
「葉っぱ集めるぞ」
「葉っぱ?」
「葉っぱだ」
そう言って森へ消える。
数十分後。
大量の葉を抱えて帰ってきた。
「何する気だ」
「こうだ」
洞窟の床へ敷き詰める。
簡易ベッドだった。
「おお」
「おおでヤンス」
実際に寝転がる。
少し柔らかい。
ほんの少しだが。
昨日よりは遥かにましだった。
「雲水」
「ん?」
「お前意外と生きるの上手いな」
「そうか?」
本人は自覚がないらしい。
◇
その日の夜。
洞窟の中は少しだけ快適になっていた。
水がある。
食料も少しある。
寝床もできた。
人間というのは案外順応する生き物らしい。
火が欲しい。
鍋も欲しい。
家も欲しい。
欲を言えばきりがないが。
とりあえず生きてはいけそうだった。
「なんか住めそうだな」
僕が言う。
「住めそうでヤンスな」
湊も頷く。
「住めるぞ」
雲水は断言した。
その自信はどこから来るんだ。
まあいい。
そう思った。
洞窟の天井を見上げる。
学校を出た時はどうなることかと思った。
だが。
今のところ何とかなっている。
多分。
これからも。
何とかなるのだろう。
そんなことを考えながら目を閉じる。
学校を出て三日目。
僕達の洞窟生活は、まだ始まったばかりだった。




