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第35話 食料がなければ人は生きられない

 翌朝。


 目を覚ますと全身が痛かった。


「痛い……」


 地面の上で寝るものじゃない。


 本当に。


 隣では湊も起き上がっていた。


「腰が死んだでヤンス……」


「分かる」


 二人で同時に腰を押さえる。


 その一方で。


「はっはっはっ」


 雲水だけが元気だった。


 洞窟の壁にもたれながら笑っている。


「なんで平気なんだよ」


「俺だからな」


 相変わらず適当なことを言っている気がする。


 まあいつものことなので放置する。


「腹減ったでヤンス……」


「湊は食料は?」


「由良殿を見かけて慌てて追いかけて来たから、ほとんどないでヤンス」


「そっか。雲水は?」


「俺もないな」


「そっか。じゃあこれ」


 鞄から保存食を取り出して二人に渡す。


 三人で分けると、僕の持ってきた保存食も残り少ない。


「食料がないのは由々しき事態でヤンスな」


「だな」


「拙者、腹が減ると死ぬでヤンス」


「人類は大体そうだ」


 住居はとりあえず、この洞窟がある。


 雨風もしのげるので、拠点として使えるだろう。


 だが食べ物がなければ、湊じゃないが生きていけない。


 水の確保と、食料の確保は早急に解決しなければならない問題だ。


「探すか」


「探すでヤンス」


 そうして三人で洞窟を出た。


 森の探索開始である。


 ◇


 一時間後。


「何もないな」


「何もないでヤンス」


 収穫ゼロだった。


 木の実らしきものは見つけた。


 だが食べられるか分からない。


 キノコもあった。


 だけど余計に怖い。


「異世界の毒キノコとか嫌だな」


「嫌でヤンスな」


 意見は一致した。


 その時だった。


 雲水が草むらを指差す。


「あれ」


「ん?」


 近付く。


 そこには赤い実がなっていた。


「食べられるのか?」


「知らん」


 雲水は即答した。


 役に立たない。


 結局、誰も手を出せずに終わった。


 ◇


 昼頃。


 今度は小川を発見した。


「水だ!」


 湊が歓声を上げる。


 僕も少し安心した。


 水の確保は大きい。


 とりあえず飲む。


「うまい」


「うまいでヤンス」


 空腹は解決していないが、水だけでも違った。


 洞窟へ戻る。


 成果。


 水場発見。


 以上。


「終わってるな」


「終わってるでヤンス」


 湊が真顔で頷いた。


 その日の夕飯も保存食を分け合った。


 量は少ない。


「あと何日持つ?」


「二日くらいか」


「二日でヤンスか……」


 静かになる。


 現実的な数字だった。


 雲水だけは相変わらずだった。


「なんとかなる」


「根拠は?」


「ない」


「ないのかよ」


「はっはっはっ」


 笑い事ではない。


 だが。


 少しだけ気が楽になった。


 一人だったら多分もっと不安だった。


 湊がいて。


 雲水がいる。


 それだけで違った。


 その夜。


 三人で洞窟の天井を見上げながら横になる。


「なあ」


 湊が呟く。


「なんだ?」


「拙者達、何やってるんでヤンスかね」


 それは僕も思った。


 異世界に来て。


 学校を出て。


 洞窟で寝ている。


 意味が分からない。


「さあな」


 答える。


 そして。


「まあ、なんとかなるだろ」


 そう言った。


 根拠はない。


 けれど。


 そう思うしかなかった。


 気付けば学校を出て二日。


 サバイバル生活って思っていたよりも大変なんだな。

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