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第23話 冷め始めた肉

 王の言葉が終わると、生徒達は王城内の大広間へ案内された。


 長机が並び、料理が所狭しと置かれている。


「おおっ!」


 歓声が上がった。


 異世界へ来てから碌な物を食べていない。


 当然の反応だった。


「好きに食べて構わん」


 王の言葉と同時に、生徒達が一斉に動き出した。


 僕も流れに乗る。


 正直お腹が空いていた。


 皿を手に取り、近くの肉料理を取る。


 良い匂いだ。


 久しぶりにまともな食事を見た気がする。


「由良!」


 神武だった。


 周囲には何人もの騎士や貴族らしき人達がいる。


「どうした?」


「さっき王様と話してたんだ」


 神武は少し困ったように笑う。


「勇者について色々聞かれてさ」


「ああ」


「後で詳しい話をするらしい」


「大変そうだな」


「他人事みたいに言うなよ」


 苦笑する神武。


「由良もその……あんまり気にするなよ」


 神武はどこか言いにくそうだった。


 その時だった。


「勇者殿」


 騎士が神武を呼ぶ。


「あ、すぐ行きます」


 神武はすぐにそちらへ向かった。


「百瀬君」


 今度は天道先輩だった。


 だがこちらも長くは続かない。


「賢者殿、こちらへ」


 神官が呼ぶ。


「ごめんなさい。また後で」


 天道先輩は小さく頭を下げて去っていった。


 貴族や権力者からしたら、勇者や賢者と是非繋がっておきたいんだろう。多分、ここの食事はそういう意味も含まれてるんだと思う。勇者や賢者、その他特殊固有職には、きっとそれだけの価値があるから。


 それにしても、聖華に神武、そしてまさかの天道先輩。凄く心配されているな。


「どうしたでヤンス?」


 隣に湊が座った。


 肉を山盛りにしている。


 食い過ぎだろ。


「別に」


「別にじゃないでヤンス」


 肉を頬張りながら言う。


「やっぱり無職なの気にしてるでヤンスか」


「気にしてないよ」


「この先もしかしたら何かのジョブに目覚めるかもしれないでヤンスよ」


「気にしてないって」


「元気出すでヤンス」


 湊が自分の皿から僕の皿に大量の肉を移す。


 湊なりの気遣いに、少し笑ってしまう。


 その時だった。


 近くの席から会話が聞こえてきた。


「勇者組に入れれば安心だな」


「賢者もいるしな」


「意味わからない職業のやつは大変そうだな」


「無職とかな! 最悪だろあんなの」


「笑っちまうよな。自分じゃなくて良かったわ」


 視線を向けると、三馬、加鳥、里桜が笑いながら喋っていた。


 思わず手が止まった。


 別に何言われようが構わない。だけど、もちろんあまり気分は良くない。


「三馬鹿トリオでヤンスか。許せないでヤンス!」


 立ち上がり、文句を言いに行こうとする湊の腕を慌てて掴む。


「大丈夫だからやめとけ」


 そう言うと、湊は渋々と椅子に座り直した。


「由良」


 声がする。


 雲水だった。


 向かいの席にどっかり座る。


「なんだよ」


「肉が冷めるぞ」


 言われて皿を見る。


 確かに冷め始めていた。


「食える時に食っておけ」


 雲水は骨付き肉を豪快に齧る。


「明日どうなるかなんて誰にも分からん」


「そうでヤンス! 気がついたら異世界に来ていたくらいでヤンスから!」


「ははっ、確かに。それに僕ももう乾パン生活は嫌だしね」


「はっはっはっ。俺は乾パンも好きだけどな」


「それは雲水だけでヤンス!」


 大量のお肉を湊がパクパクと口に運ぶ。もう頬がパンパンだ。


 そんな二人の様子を見ながら僕も肉を口に運ぶ。味は美味しかったが、やっぱり少し冷たかった。


 


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