第22話 無職の立場
ステータスを見ながら、生徒達は思い思いに話していた。
「勇者ってすげぇな」
「賢者とか本当にあるんだ」
「俺、騎士だった」
「私は魔法使い!」
興奮した声があちこちから聞こえてくる。
無理もない。
異世界で、ステータスで、職業だ。
ゲームみたいな世界に放り込まれたのだから盛り上がらない方がおかしい。
「由良」
声を掛けられる。
振り向くと湊だった。
「元気出すでヤンス」
「別に元気だけど」
「嘘でヤンス」
「気にしてないっていうと嘘だけど、別に元気だよ」
「それならいいでヤンス」
即答だった。
「でも無職は逆にレアでヤンス」
「この世界でただ一人らしいからな」
「唯一無二でヤンスよね」
湊は笑った。
「由良くん」
今度は神崎聖華だった。
聖女になったことで、先程から神官達に囲まれていたはずだ。
それなのにわざわざこちらへ来たらしい。
もちろん今まで話したことなんてない。
気にしてくれるなんていい子。あ、聖女か。
「大丈夫?」
「まあ」
「職業だけで全部が決まる訳じゃないって神官さんも言ってたし」
「ありがとう、大丈夫だよ」
聖華は続けて何か言いたそうな顔をしたが、神官に呼ばれ、またねと最後に言い残し去っていった。
代わりに別の集団が近くを通る。
「やっぱり神武くん凄いな」
「賢者もいるぞ」
神武と天道先輩だった。
二人の周囲には自然と人が集まっている。
まるで中心人物だ。
いや。元々あの二人は人気があって、クラスや学校の中心人物だった。
勇者と賢者。
今では王国からも、生徒達からも、必要とされる。
ふと、考えてみる。
僕はどうだっただろうか。ただ、無難に生き何かを頑張ってきたわけでもなく、目立つことは特にしない。そんな人生だった。
もしかすると、それが無職という結果なのだろうか。
正直、神武と天道先輩を見ても別に羨ましいとは思わない。でも、せめて職業フリーターくらいであったなら……いや、そういうことじゃないか。
「はっはっはっ」
笑い声が聞こえる。
雲水だった。
いつの間にか僕の隣に立っている。
「何笑ってるんだよ」
「別に」
「全然別にではない笑い方だったけど」
「由良は今何考えてたんだ?」
「無職ならフリーターっていう職業の方が良かったなって」
「いいや。無職の方がいい」
即答だった。
「そうか? 無職ならせめて何かしらの職業あった方がいいと思うけど」
「そんなことはない」
雲水は本気でそう思ってるのか、真顔である……いや。いつも真顔だった。
「俺は由良は無職がいいと思うがな。はっはっはっ」
本当に意味が分からない。
その時。
前方で王が立ち上がった。
自然と場が静まる。
「異世界より来た者達よ」
低く響く声。
「まずは諸君らの職業を確認させてもらった」
王はゆっくりと全員を見渡した。
「勇者。賢者。聖女。そして多くの優れた職業」
騎士達も頷いている。
「この国は諸君らを歓迎する」
その言葉に生徒達の表情が明るくなった。
だが。
僕は何となく思った。
歓迎されているのは。
僕達全員なのだろうか。
それとも。
価値のある職業を持った人達だけなのだろうか。
そんな考えが頭をよぎった。




