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14話 代表者選抜

 翌朝。


 目が覚めると体育館の天井が見えた。


 一瞬だけ混乱する。


 そしてすぐ思い出した。


 ああ。そうだった。


 異世界だわここ。


 起き上がって体を伸ばす。


 体が少し痛い。


 体育館の床だから仕方ないけど。


「由良殿」


「なに?」


「朝食持って来たでヤンス」


「ありがとう。何があるの?」


「乾パンでヤンス」


「知ってた」


 希望を返して欲しい。


 そう思いながら受け取る。


 ふと隣を見ると、雲水が大の字になって寝ていた。


 しかもいびき付きだ。


「起きろ」


 肩を揺する。


 反応なし。


「雲水」


 反応なし。


「朝飯」


 反応なし。


 こいつ、本当に起きる気あるのか。


「代表者発表始まるぞ」


「む」


 雲水がゆっくり目を開いた。


「本当か?」


「本当だ」


「なら起きるか」


 のそりと体を起こす。


 かと思ったら、再び横になろうとする。


「寝るな」


「はっはっはっ」


 何が面白いのか分からない。


 そんなことをしていると、体育館の前方が騒がしくなった。


 教師達が集まっている。


 天道先輩の姿も見えた。


「始まるみたいでヤンスね」


「代表者発表か」


 昨日の話だと、王国へ向かう人間を決めるらしい。


 まあ。


 僕には関係ない。


 前に出るタイプじゃないし。


 実績もないし。


 成績だって中の上くらいだ。


 こういうのは神武とか天道先輩みたいな人が選ばれる。


 僕は後ろで応援してるくらいがちょうどいい。


 むしろ応援させてくれ。


 天道先輩が前へ出る。


 体育館が静まった。


「これより王国へ向かう代表者を発表します」


 全員の視線が集まる。


「まず教師代表」


 天道先輩が紙を見る。


「羽毛田教頭先生」


 予想通り。


 ハゲチャビン教頭が前へ出た。


 なぜか少し得意げだ。


「村雨先生」


「はいはい」


 村雨先生が気の抜けた返事をする。


 相変わらずで少し安心した。


「そして郷里松先生」


 ゴリマッチョが立ち上がる。


 体育館のあちこちから安堵の声が漏れた。


 やっぱり筋肉は信用されるらしい。


「由良殿」


「なに?」


「筋肉は世界を救うでヤンス」


「救うかもしれないな」


 少なくとも僕よりは頼りになる。


「続いて生徒代表」


 ここからが本番だ。


「天道美月」


 当然。


 誰も驚かない。


「神武勇一」


 これも当然。


 体育館から拍手が起きる。


 神武は軽く頭を下げた。


 やっぱり様になっている。


 主人公か。


「星英登」


 再び拍手。


 運動部のエース。


 成績優秀。


 顔も良い。


 神様は割と不公平である。


 英登は落ち着いた様子で立ち上がり、一礼した。


「そして――」


 天道先輩が最後の名前を読み上げる。


「福野海斗」


 一瞬だけ体育館が静かになった。


 誰だっけ。


 いや、知ってる。


 知ってるけど。


 思い出すまで少し時間が掛かった。


 前方で一人の男子生徒が立ち上がる。


 眼鏡。


 細身。


 整った顔立ち。


 だが神武や英登ほど目立つタイプではない。


「由良殿」


「なに?」


「あれ、生徒会副会長でヤンス」


「ああ」


 言われて思い出した。


 そうだ。


 生徒会副会長だ。


「生徒会長の天道先輩が有名すぎて影が薄いでヤンスけど、成績優秀、仕事もできる、縁の下の力持ちでヤンス」


「詳しいな」


「吾輩、意外と情報通でヤンス」


 胸を張る湊。


 周囲からも、


「副会長いたんだ」


「初めて喋ってるの見た」


 なんて声が聞こえてくる。


 福野は気にした様子もなく、そのまま列へ加わった。


 これで七人。


 教師三人。


 生徒四人。


 王国へ向かう代表者達だ。


 不安そうな顔。


 期待に満ちた顔。


 色々な表情がある。


 でも全員、前を向いていた。


「由良殿」


「なに?」


「王国でヤンス」


「そうだな」


「お姫様でヤンス」


「まだ言うか」


「絶対いるでヤンス」


「知らないよ」


「しかも金髪縦ロールでヤンス」


「急に解像度が上がったな」


「語尾は『〜ですわ』でヤンス」


「偏見の塊だな」


「そして吾輩に一目惚れするでヤンス」


「そこが一番ありえない」


「な、なんででヤンス!?」


「まず会う予定がないだろ」


「大丈夫でヤンス。吾輩の勘がそう言ってるでヤンス」


「その勘、この前『昼飯はカレー』って言って焼き魚だったよな」


「ぐっ……」


「信用できないんだけど」


 湊は本気で残念そうだった。


 こいつは何を期待しているんだろう。


「由良」


 今度は雲水だった。


「なに?」


「本当に行かなくて良かったのか?」


「いいよ」


 即答だった。


「後悔するかもしれんぞ」


「なんで? 絶対しないよ」


 むしろ安心している。


 危険そうだし。


 面倒そうだし。


 何より。


 僕は代表なんて柄じゃない。

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