第11話 保護
裏門の前では話が続いていた。
「光の正体ってどういうことですか?」
村雨先生が問いかける。
「言葉の通りだ。先ほど天より現れた光の正体……それはお前達か?」
騎士隊長の問いに。
天道先輩達は顔を見合わせる。
先に口を開いたのはハゲチャビン教頭だった。
「光と言われても……」
隊長が空を指差した。
「この場所で、巨大な光柱が天へ伸びた」
確かに。地震の瞬間、眩しい光を僕は見た。あれのことなのか。
天道先輩も気付いたらしい。
「確証はありませんが、私も光を見ました。そして、その光が消えた瞬間、私たちはここにいました」
そう答えた。
騎士隊長は大きく息を吐く。
どこか安心したようにも見えた。
「やはりそうなのか」
「何か知ってるんですか?」
天道先輩が聞く。
騎士隊長は少し考えてから答えた。
「すぐにわかる」
そして周囲の森を見る。
「まず確認したい」
声色が変わった。
「お前達は何人いる?」
「まだ正確に確認出来ていないのですが……生徒と教師合わせておよそ六百人です」
騎士達がざわついた。
隊長も目を見開く。
「六百……」
「何か問題が?」
「問題しかない」
即答だった。
「この辺りは魔物の活動領域だ。魔の森と呼ばれ、人が立ち入れないように管理されている」
騎士隊長は森を見る。
「魔物も凶暴で、本来なら村一つ存在できない」
なんてこった。そんなところに僕らは居たのか。
「先ほどもゴブリンの群れを確認した」
その言葉に神武が反応した。
「やはりあれはゴブリンだったんですね」
「遭遇したのか?」
「はい。なんとか逃げ切れましたが」
騎士隊長の表情が険しくなる。
「よく生きていられたな。運が良かったのか、それとも……」
一瞬何かを考えるように、隊長が目を細める。
「私はアルヴァニア王国第三騎士団隊長」
騎士隊長は胸に手を当てた。
「名をレオン・バルガスという」
そして。
真っ直ぐ天道先輩を見る。
「アルヴァニア王国は諸君らの保護を提案する」
その言葉に全員が息を呑んだ。
「保護……ですか」
「そうだ」
レオン隊長は頷く。
「ここは危険すぎる。それに食糧や飲水も足りないであろう」
校内に備蓄はある。
だが六百人分ではない。
何ヶ月も生きられる量などあるはずがなかった。
「本来なら全員を王国へ招きたい」
レオン隊長は続ける。
「だが人数が多すぎる」
その言葉に天道先輩が眉をひそめた。
「六百人ですからね」
「馬車も人員も足りん。すぐに移送することは難しい」
レオン隊長は少し考える。
「まずは代表者に来てもらいたい」
「代表者……」
「国王陛下も、お前達の話を聞きたがっている」
国王。
その単語だけで現実感が消える。
総理大臣でもなければ大統領でもない。
王様だ。
「由良殿」
「なに?」
「王様でヤンス」
「聞こえてるよ」
「テンプレでヤンス」
「テンプレだよな」
「俺は天ぷらが好きだ」
「僕も天ぷらが良かったよ」
本当にこんなテンプレ望んでない。
ここは異世界で、王国があって、騎士がいて。
ーーそしてゴブリン。きっと他にも魔物がいるのだろう。
どうやら。
僕達は本当に異世界転移をしてしまったみたいだ。




