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98時間目:再会と疑念

ティルがエリンとオーケン家で遊んだ次の週の休日。ティルは、ラーナー家の玄関先に1人佇んでいた。


(お父さん、いるかな?)


 かつてのように、ティルはラーナー家の玄関が開くのを見た。そして、家の中に入って行く。


「た、ただいま」


 すると、家の奥からノエルの声が聞こえる。


「ティルだわ!」

「ティルだ!」


 グレゴリオの声も届く。そして、急ぐ足音が近づいて来る。ティルも、早い足取りで家の中へと歩を進める。すると、お互いの顔を見る事が出来た。ノエルは、飛びつくようにティルを抱き締めた。そして、グレゴリオはティルの頭を何度も撫でる。


(あったかい、お父さん、お母さん)


 ティルの目に涙が溜まる。それは、グレゴリオもノエルもそうだった。そんな中、ノエルは言う。


「会いに、来てくれないと、思ってた」

「会いに、来るよ、お母さん、大好きだもん」


 グレゴリオも言った。


「ありがとう、ティル、会いに来てくれて」

「大好きなお父さんが、今日お休みでよかった」


 ひととおり涙を流した後、ティルは言った。


「リノ、元気?」


 グレゴリオとノエルは、「会ってあげて」と声を揃える。そして、ティルはリノの寝床へ。リノは不規則にピカピカ光りながら丸い目でティルを見つめた。そして、少しだけ首を傾げた。


「リノ、かわいい。だけど、私の事、忘れちゃったかもね。さびしいなぁ」


 すると、ノエルが言った。


「さびしいわ。ティルがいない家は、さびしいわ」

「そうだね。この家の子がリノだけじゃ、物足りないよ」


(お父さんとお母さん、さびしがってる。どうしよう)


「う、沢山、沢山、遊びに来るよ」

「お願いね」

「その時、仕事休みだといいけどね」

「うん」


 それから、ティル、グレゴリオ、ノエルは久しぶりの親子水入らずの時間を過ごした。そして、暗くなる前にティルは後ろ髪を引かれながらオーケン家に帰宅して行った。


(私、逃げてる。あの時は、家族を傷つけたくなくて、学園長先生とオリーン先生の子になるって言っちゃったけど、私、逃げてるよね?)


 オーケン家の玄関に1人佇んだティル。まだ見慣れない玄関が開いた。


「た、ただいま」


 イヴァンが出迎えた。


「おかえり、ノヴァ・テンポーレ」

「おかえりなさい、ラーナーさん」


 家の奥から、モニカの声が聞こえた。ティルは、とぼとぼと家の中へと入って行く。イヴァンは、ティルについて行った。


「学園長先生、さびしいって、傷つけてますか?」

「その度合いにもよるだろうな」


(どあい?わかんない)


「それより、ノヴァ・テンポーレ、隠している事があるだろう?」

「え?」


(学園長先生に、隠し事?してないよ?)


「記憶保持、差異発生の他に、何かあるだろう?」

「えっ?私、何も」

「時の記録に、一部接続出来ない。保護をかけただろう?」

「そんな、何もしてないです」


 イヴァンは、次第に苛立たしげな様子になっていく。


「君が時の実を食べた時の記録を見たかったのだが、どうしても見れない」

「知らないです」


(時の実の話はしないで!美味しくないあの実は思い出したくない!!)


「何をしようとしているかわからないが、早めに保護を解除しておいた方がいい」

「学園長先生、私、本当に何もやってません!」


 熱を帯びるティルとイヴァンの会話。それを見かねたモニカが来た。


「2人とも落ち着いてください」


 イヴァンの苛立ちは収まらず、勢いに任せ言った。


「記録に接続し、ノヴァ・テンポーレが時の実を食べた時に介入したいんだ!時の実を食べるのを止め、君がノヴァ・テンポーレになるのを阻止したいのだよ!!」


 イヴァンは、ティルを揺さぶり始める。


「そうすれば、君はノヴァ・テンポーレとして苦しむ事が無くなる。いい話だろう?だから、今すぐ保護を解除しろ!」

「わかりません!やってません!」


 ティルを揺さぶるイヴァンの腕の力は増す。それにモニカは声を荒らげた。


「学園長!話の内容は、私は当事者でないのでわかりませんが、これだけラーナーさんが知らないと、やってないとおっしゃっているのだから、怒りの矛先を収めてください!!」

「しかし、時の記録に接続し、介入する事は、この子供を普通の児童に出来る可能性を高くするのだぞ?これは、ノヴァ・テンポーレの救済の一環だ。なのに、知らぬ存ぜぬとは、何事だ?ノヴァ・テンポーレ!」

「私は、ただ、イテラリピティを知ってるだけ。テンポーレを知っただけ。テンポーレが出来る事、知らないです」


 一転、イヴァンはティルを突き放した。突き放されたティルは、モニカに抱き留められた。一方、イヴァンは、こう言い、自室へと行ってしまった。


「ノヴァ・テンポーレをどうしても降りたくないようだな!」


(ノヴァ・テンポーレなんて、なりたくてなったわけじゃないのに、何で、怒られなきゃいけないの?何で?)


「お家、帰りたいよぅ」


 ティルは、呟き泣いた。モニカは、そんなティルを抱き締めてくれた。


「ラーナーさん」


 モニカは、それ以降のかける言葉を保留。しばらくティルが落ち着くまでその涙に付き合ってくれた。そして、ティルの涙が引いた頃、モニカは再びティルに言葉をかけた。


「やはり、本当のお父様、お母様、そして弟さんの元で生活した方がいいですよね?このまま、帰りましょうか?その、これから親御さんに傷つける言葉をかけないという宿題はついて回りますが」


 ティルは頷きかける。


(で、でも、そんな事したら、オリーン先生が学園長先生に怒られる!)


「大丈夫です。今の学園長先生はこわいけど、大好きなオリーン先生がいるから、ここにまだいます」

「ラーナーさん、よろしいんですか?」


(う、ちょっと辛いけど)


「はい!」

「なら、何か嫌な事があったら、私に相談してくださいね」

「お願いします」





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