89時間目:守って
ティルの授業は、1週間と2日目となった。そんな授業も4時間目が終わりに差し掛かった。
(給食、エリンちゃんと食べる約束したけど、思いきって、ハワードくんと、ラインハルトくんと、フェリシアちゃんも誘ってみようかな)
鐘の音が鳴るなり、ティルは右斜め前の方に声をかける。
「ね、学級委員長、今日の給食、一緒に食べよう?エリンちゃんも一緒だけど」
「友達と一緒に食べればいいだろう?何故、僕も誘うんだ?」
「近くの席に座ってるから、仲良くしたいなって思って」
「はあ。今日だけ付き合ってやろうか」
「ありがとう!」
その足で、ティルはラインハルトとフェリシアの元へ。幸い、近くに2人はいて、声をかけやすい状況だった。
「ね、マラブルくんとメンデスさん、今日さ、一緒に給食食べよ?」
「急に、どうしたんだい?僕達はじめましてだよね?」
と、ラインハルトは返す。そして、フェリシアも同様の内容を返す。
「えっと、何で?私達、話した事ないのに」
ティルはそれに返した。
「このクラスの人全員と仲良くしたくて。今日は、マラブルくんとメンデスさん!学級委員長と、私の友達のエリンちゃんも一緒だけどね!」
ラインハルトとフェリシアは「そういう事なら」とついて来てくれた。
食堂に着くと、5人はめいめい好きな物を取り分ける。そして、ティルを囲むように4人は座った。ティルの目の前にはラインハルト、そのラインハルトの左隣にハワード。一方、ティルの右隣にはエリン、左隣にフェリシア。ティルはそれを見渡し言った。
「さ、食べよ!」
そうして、5人は給食を食べ始める。
「あ、エリンちゃん、昨日のパン、とっても美味しかった!さすがパン屋さんの子だね!!」
「そう?よかった!ティルちゃん!!」
そんな言葉に、フェリシアが反応した。
「フレンツェルさんのお家、パン屋さんなの?」
「そうだよ!エリンちゃんのお家のパン、とっても美味しいの!!」
「今度、食べてみたいな」
「ティルちゃん、ありがとう!メンデスさん、よかったらお休みの日、家に来て?お父さんのパン、ごちそうしたい!」
「うん、行ってみるね?」
「私も行っていい?エリンちゃん」
「うん、いいよ!ティルちゃん!!」
そう言いながらティルは両隣を交互に見た後、一転、正面を見る。
「まだ、1週間くらいしか一緒に授業受けてないけど、学級委員長とマラブルくんってすっごくかっこいいなぁって思ってるんだ!」
ラインハルトは微笑んだ。
「ありがとう、ラーナーさん。褒めてくれて嬉しいよ」
一方、ハワードは眉間に皺を寄せる。
「僕を持ち上げたって、何も出ないぞ」
ティルは、笑いながら言った。
「えー、正直な事言っただけだよ?」
再びラインハルトは言う。
「ラーナーさん、君は元気だね?」
「ありがとう!マラブルくん!!」
ハワードのため息がひとつ。
「まあ、元気な所は、認めてやろうか。急に、そうなったような気がするが」
「えっ、えー?そうかなぁ?学級委員長」
すると、蝶々1匹が食堂に入って来た。そこにいた児童生徒は、口々に「蝶々だ」と言った。その蝶々はひらひらと天井近くを飛ぶ。しかし、次第に降りて来て、フェリシアの頭に止まった。当のフェリシアは、蝶々を見失い、言った。
「え?蝶々、どこに行ったの?」
それに答えたのは、ラインハルト。
「メンデスさん、君の頭の上だよ。とてもかわいいね」
「えっ、そう?」
フェリシアは顔を赤く染める。ラインハルトは微笑んだ。蝶々は、羽を数回ふわふわさせた後、フェリシアの頭の上から飛び立った。ティルは、蝶々を目で追った後、フェリシアの方を見て言った。
「もうちょっと蝶々がいてくれればよかったのに。本当にメンデスさんかわいかった!」
「ありがとう」
それから、5人は給食を完食。少々の食休みの後、教室に戻る事に。ハワードを先頭に、ラインハルトとフェリシアが隣り合いながらそれに続き、ティルはエリンと最後尾で廊下を歩く。
(ラインハルトくんは、誰かを守りたい人。フェリシアちゃんは、私がだけど、守ってやりたい人。なんだか、お似合いだなぁ。なんか、ちょっと悔しい)
エリンが隣から言った。
「なんか、ティルちゃんと皆で給食、楽しかった!」
「よかった!エリンちゃん!!」
そうティルが返した頃、5人は教室に着く。出入り口で解散、各々の席に着いた。
(悔しいって事は、まだ私、ラインハルトくんの事、好きなんだ。フェリシアちゃんが天国に行っちゃって大変だったから、その気持ち消えちゃったと思ってた。でも、ラインハルトくんにまた私を好きになってもらわない。あんなに辛い思いをまたしたら、私、壊れちゃうかもしれない)
ティルは、机に突っ伏した。そして、机に呟きを聞かせた。
「もし、フェリシアちゃんがラインハルトくんの事好きになったら、応援するよ。3月までね」
ティルは、両手をきつく握った。
(やっぱり、私はイテラリピティを我慢しなきゃいけないみたいだね。世界が壊れたら、ラインハルトくんも、フェリシアちゃんも、皆、いなくなっちゃう。だから、私は、我慢する。我慢して、皆を守るよ)
5時間目が始まる鐘の音と共に、モニカが教室に入ってくる。ティルは、頭を上げ、モニカを見つめた。
(私には、オリーン先生がいる。またイテラリピティで先生がイテラリピティの事を知らない人になったら、言えば傍にいてくれる。きっと)
ティルは、杖を持ち、呪文を唱える。
「エレイ、ビエーレオ。ティエ、エッセティオ。生活科」
ティルは、出現した生活科の教科書に向き合った。




