8時間目:運動会
6月も下旬。メビラ学園の運動会の日が来た。朝早くグレゴリオは言った。
「ああ、よかった。今のところ緊急出動の連絡がないから、ティルのはじめての運動会をこの目で見られそうだ!」
「よかった!お父さん!!」
一方、ノエルは台所にて昼食を作っていた。ティルはそれを見学しに行った。
「お母さん、そのパン、エリンちゃんの所の?」
「そうよ。サンドイッチにしてお昼に食べようね!」
「うん!楽しみ!!」
その後、ティルは運動着で先に登校して行った。
「おはよう!」
教室に入ると、もう既にモニカはいた。
「もう少ししたら、開会式です。それまでこの教室で待っていてください」
「はーい」
ティルはそう答えると、自らの席についた。しばらくすると、教室に中等部の1年3組の生徒達が入ってきた。男子生徒は男子児童、女子生徒は女子児童の元に箒を持ちながら来る。ティルは、1人の女子生徒に声をかけられた。
「開会式は、私と箒に乗ってやるからね」
「うん!」
中等部の生徒と手を繋いで校舎の出入り口まで行くティル達。そして、校舎を出るなり、児童は、中等部の生徒の箒に乗せられ空に飛んで行った。見渡すと、他の初等部の学年の児童も中等部や高等部の生徒の箒に乗せられ上空に次々に飛んで行く。
「高ーい!!」
ティルは、中等部の女子生徒に抱えられながら声を上げた。そんな中、学園長のイヴァンはじめ教諭達も集まる。また、観戦する保護者達も学校に集まって来る。勿論、グレゴリオとノエルも瞬間移動にて学校に来た。
「お父さんとお母さん、来た!!」
そして、学園長や教諭、保護者も自らの箒に乗り、メビラ学園関係者が全て空に集まった。その事を確認すると、男性教諭が拡声魔法の呪文と共に、式を進行し始めた。
「ピエレイ、エッフェイ、チア。ヴオ、チイ。只今より、メビラ学園合同運動会開会式を始めます。校歌斉唱」
ティル達児童生徒、学園長のイヴァンやモニカ達教諭が歌う校歌が大空に響き渡る。すると、校旗が現れ、メビラ学園の校舎の上ではためいた。校歌斉唱が終わると、学園長の開会宣言の時間となった。
「メビラ学園の全校生の皆さん、一丸となって日頃の学習の成果をこの運動会で発揮してください。保護者の皆様におかれましては、子供達の成長を見守ってください。メビラ学園合同運動会、開会!!」
保護者達の拍手が上空に響き渡り、開会式は終わった。競技までの時間がある児童生徒やその保護者は、再び教室へと行く事になっている。ティルも1年3組の教室へと戻った。モニカは入室するなりこう唱えた。
「ディイ、エーレエ、ティティア!運動会の様子を黒板に!!」
すると、黒板は外の運動会の映像を流し始める。教室は、さながら映画館のように。ティルは、グレゴリオとノエルと共に、同級生や先輩達の活躍を見届けた。
時は過ぎ、教室に女性教諭の声が届く。
「箒リレーに出場する児童は、校庭に集まってください」
ティルは、魔法の杖を握り教室から出る。グレゴリオとノエルもついて行った。
「お父さん、お母さん、頑張ってくるね!」
グレゴリオはこう声をかけた。
「楽しみにしてるからね?ティル」
「落ちないように、頑張ってね?ティル」
ノエルもこう声をかけた。ティルは、両親に手を振りながら集合場所に駆け出して行く。そして、魔法の杖を振りつつティルは唱えた。
「ウ、エッセア、エーレエ。箒」
ティルの手に、自作の箒が出現。7番目に飛行する児童の待機場所に移動した。他の児童達も、それぞれの待機場所へ。
「箒リレー初等部1年生の部、開始します」
男性教諭の声が校庭に響く。5人の第1飛行者が並ぶ。そこにはハワードがいた。一斉に箒に跨った第一飛行者を確認した男性教諭は、次々に第一飛行者に光り輝くたいまつを渡していき、それが終わるとこう言った。
「飛行の呪文を」
それに応え、ハワードは他の組の初等部1年生と共に唱えた。
「ヴオ、エレア、エーレエ」
男性教諭は、児童達が浮遊した後、こう言った。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、発進!!」
ハワード達第一飛行者は、校庭を低空飛行しながら、はじめまっすぐ、後半は緩やかに曲がって行った。ハワードは2位。やがて、第二飛行者へとたいまつが次々に渡される。ハワードは、ラインハルトへたいまつを渡す。ラインハルトは、緩やかに曲がりながら飛び、やがてまっすぐ飛ぶようになる。その様子を見て、ティルは叫ぶように言った。
「頑張れー!!」
ラインハルトは、次の男子児童にたいまつを渡した。この時点で3組は、1位であったが、第三、第四飛行者の男子児童は、うまく飛べずに3位へと落ちる。それでも観戦している上級生や大人達は、低空飛行のかわいらしい初等部1年生にあたたかい声援を送った。ティルは、そんな様子を見て呟く。
「5位に下がっちゃうかも?」
第四飛行者の男子児童からフェリシアにたいまつが渡る。フェリシアもなかなかうまく飛べず、一時4位に下がるが、なんとか3位に上がり、エリンにたいまつを渡す事が出来た。エリンが飛んでいる最中、ティルは唱える。
「ヴオ、エレア、エーレエ」
低く飛び始めたティルの出番が迫る。そして、エリンからたいまつを受け取ったティルは、前に進む。
「2人、抜く!1位になるっ!!」
ティルの飛行は、速いものであった。前の児童をごぼう抜きしてなおかつ後続を大きく突き離す。その娘の様子にグレゴリオはこんな歓声を上げた。
「おー!ティル!凄いぞ!!」
「ティルー!頑張ってー!!」
ノエルも夫に続いた。その活躍は、教室にいたモニカにも届く。
「ラーナーさん!あんなに飛べるなんて!!素晴らしいわ!3組が1位!!」
そして、ティルは、最終飛行者にたいまつを渡し、飛び終わった。ティルは同級生はじめ、そこにいる人々に笑顔を見せた。こうして、1年3組は、箒リレー1位の座を手に入れた。リレーが終わると、出場した児童達が自然に集まった。
「ティルちゃん!凄かった!!」
エリンが興奮した様子でこう言った。フェリシアもそれに続く。
「速かったよ!」
「ありがとう!エリンちゃん!フェリシアちゃん!」
ティルがそう返すと、ラインハルトがこう声をかけた。
「君の飛び方、見習うよ」
「君は、クラスの救世主か?」
ハワードも続く。ティルはそれにこう返した。
「えへへ。なんか1位になっちゃったね!よかった!!」
そうしているうちに、次々と上級生が箒リレーをしていった。上級生、特に高等部の生徒となると、上空高く飛び、初等部1年のティル達より数倍速くリレーを繰り広げる。ティルはそれを見て言う。
「あー、羨ましいなー、あんなに飛べるなんて」
そうしていると、昼食の時間が訪れる。昼食は、学園の敷地内であったらどこでとってもいいとなっている。ティルは、グレゴリオとノエルと共に食事を共にする。校庭にある並木の木陰でサンドイッチ等を頬張るティル。
「うーん!美味しい!!やっぱり魔法を使うと、お腹すく!!」
ノエルが微笑みながら、グレゴリオに言う。
「本当は、子供の魔法は、成長の為だけに使うものなのよね」
「うん、だから、子供は沢山魔法使うと体力使うんだよな」
グレゴリオは、残っているサンドイッチをティルに渡しながら言った。
「ティル、いっぱい食べるんだぞ?あんなに一生懸命飛んだんだから」
「うん!」
ティルは、グレゴリオからサンドイッチを受け取り、口いっぱいに頬張った。その様子を見つつノエルは微笑む。
「凄かったわね?ティル、1位になっちゃって!」
「えへへ」
ティルはニッと笑った。
午後も様々な競技を行った。ティルは、教室にて応援の声を上げた。
「皆!頑張ってー!!」
そうして、この年のメビラ学園の運動会は幕を閉じた。




