52時間目:11回目の入学式
(一応、言おうかな?私、ティル!ティル・ラーナー!!今日から11回目のメビラ学園初等部1年生!また皆と1年生だね。だけど、皆と会えてなんだか嬉しい!!さ、入学式!入学式!!)
ティルは、学校の講堂内で自らの入学式を待っていた。いつものようにグレゴリオとノエルを探し、2人と手を振り合う。ニッと笑い、間もなく入学式が開式になるのを講堂の前を向きながら感じた。
(ハワードくん、また会えたね!)
右隣をほんの少し見るティル。その目的のハワードはティルの視線など気づかない。
(私を知らないハワードくんだけどね)
入学式は開式。ティルは国歌を完璧に歌い上げる。その後の学園長挨拶を待った。学園長のイヴァンは、えんじ色のスーツという出で立ちで舞台から拡声魔法を用いて挨拶を始める。
「春の花が咲き誇り始めたこの良き日に、メビラ学園に入学の皆さん、ご入学おめでとうございます。これから初等部、中等部、高等部と12年間、魔法をはじめ、この学校で世の中の事を学んでください」
(駄目。やっぱり、あくび我慢できない)
「ふ、ふあぁ」
出てしまったティルのあくびに気づいたハワードが眉をひそめる。
(でもさ、知らない人のあくびだけど、見ててくれたよね?ハワードくん)
それから、ティルは来賓の紹介、挨拶等を聞き、モニカの新入生の点呼を受けた後、イヴァンから魔法の杖を受け取った。
(来た、来た。1年後にはまたお別れの杖!でも、また会える杖!!)
「これから、よろしくね?」
入学式の閉式後、移動した教室では、保護者と共にモニカの挨拶を受けた。
「今日から皆さんの担任になります、モニカ・オリーンです。よろしくお願いします!」
それから、教科書が入る魔法の杖の説明を経て、クラスメイトとの写真、家族との写真をそれぞれ校門で撮影した後、ティルはノエルと共にグレゴリオの瞬間移動にて帰宅した。
帰宅すると、着替えの後、ティルはクラスメイトとの写真の玉を振る。
「皆」
校門で撮影した写真が、立体映像で机の上に現れる。それから、すぐに1人1人のクラスメイトの顔をじっくり見回すティル。
(今日、皆と会えて本当に嬉しかった。こんな気持ちになるの、初めてかも!とっても幸せ。また会えるって言ってくれたハワードくんのおかげだね)
最後にハワードを見つめる。
(もう、仲間が欲しいって思わない。皆と1年3組でいられるだけでいい。だから、今回のイテラリピティ、学級副委員長はやらないし、ラインハルトくんが仲間かなんて訊かない。普通の初等部1年生やるんだ!)
すると、1階からノエルの声が聞こえる。
「ティルー?お昼ご飯出来たわよ?早く降りて来なさい!」
「あっ!今行く!!」
ティルは、写真の玉を振り、映像を消す。そして、グレゴリオとノエルの元へ。グレゴリオは、食卓にて首輪に校門で撮影した家族写真を見せていた。
「お父さん、おばあちゃんに私の写真見せてるんだ?」
「そうだよ。きっと母さん、1年生になったティルをかわいいって言ってるよ」
「おばあちゃん、ありがと!」
ノエルは、そんな様子を膨らんだお腹を撫でつつ、優しい目で見つめた。グレゴリオは、家族が揃った為、写真を消去し、首輪を懐にしまう。それを受け、ノエルは言った。
「さ、食べましょ」
それから、昼食を済ますと、グレゴリオは出勤する為に立ち上がる。ノエルは見送る為立ち上がった。ティルも玄関に行く両親を追いかける。
「グレゴリオ、いってらっしゃい」
「いってくるよ、ノエル」
グレゴリオの目は、仕事へ向け気合が入っていたが、ノエルを見る視線はあくまで優しかった。ノエルはその視線をしっかり受け止め、優しい視線を返す。ティルは、手を振りながらグレゴリオを激励した。
「お父さん、お仕事頑張って!いってらっしゃい!!」
「ティル、ありがとう。いってくる」
グレゴリオは、瞬間移動にて姿を消した。その後、母子で夜を迎える。
「おやすみなさい、お母さん」
「おやすみ、ティル」
自室に行くと、ティルは机に目が行った。
「バッジ」
そこに無い物を呼ぶ。
(あの子供議員バッジにあった鳥さん、かわいかったなぁ。もう1回欲しい。けど、きっとこのイテラリピティじゃもらえないんだろうな)
壁にかけてある真新しい制服に視線を移しながら、ティルは、照明を落とした。そして、寝床に潜り込むと、間もなく夢の中の世界へと旅立った。
翌日、ノエルに見送られながら、ティルは登校して行く。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
(そして、リノ!いってくるね!!)
そして、ティルは「いつもの通学路」を歩き、学校に到着。それから、授業初日が始まる。そんな日のモニカの第一声が教室に響く。
「はい!皆さんおはようございます!!」
「おはようございます!!」
ティル他児童達は、元気に挨拶を返す。朝の会を経て、この日の1時間目が始まる。
「はい、1時間目は学級活動です。まずは、皆さんの自己紹介の時間にしましょう」
その一言から登録番号順に簡単な自己紹介が始まり、ティルの番が来た。
(11回目だなぁ、元気に言おう!)
「私は、ティル・ラーナー!よろしくね!!」
(ちょっとふざけちゃったかな?)
そんな自己紹介の時間が終わると、モニカは言った。
「次に、学級委員を決めます。学級委員長になりたい人、手を挙げてください」
(ハワードくん、出番だよ!)
ティルの右斜め前に座るハワードが手を挙げた。
(うん!11回目もハワードくんが学校委員長だね!!)
それを受け、モニカは言った。
「ハワード・フリーダーさんが学級委員長でいいですか?」
児童の拍手がそれを承認する。ティルは、「いつもより」熱心に拍手をハワードに贈った。拍手が収まった後、学級副委員長、書記、会計が次々に決まっていく。ティルは手を挙げずにそれを見守り、決まる度に拍手を贈る。そして、モニカがこう促した。
「さあ、改めて学級委員の皆さん、自己紹介をしてください」
「学級委員長になった、ハワード・フリーダーです。よろしくお願いします」
(ハワードくん、頑張って!)




