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5時間目:家族の作文

ティルは、自分の学習机に向かい椅子に座ると、床につかない脚をバタバタさせた。


「どう書こう?作文」


 ティルは、学校でも呟いた内容を再び呟いた後、机上に原稿用紙を置き、鉛筆にて作文を書き始める。わずかな時間でそれは完成するが、それを見つめたティルは声を上げる。


「うーん、やっぱり駄目だー!」


 書き終わった原稿用紙はクシャクシャにされ、ゴミ箱に投げ入れられた。


「家族の名前だけで終わっちゃったら駄目だよね。ちゃんと書こう」


 ティルは、新しい原稿用紙を出し、改めて作文に向き合った。そして、再び完成した作文は、綺麗な字で書かれていた。


 翌日、モニカは言った。


「さ!皆さん宿題の作文は書いてきましたか?」


 ティル達児童は、「はーい」と返した。モニカはそんな児童にこう声をかけた。


「では、1人1人読み上げてください。登録番号順に発表をお願いします」


 そして、一番小さい番号の児童から作文を読み上げていった。


「私の家族。1年3組、フェリシア・メンデス。私のお父さんは、聖歌隊で歌っていて、バリトンというお仕事をしています。とても上手な歌を歌います。私もお母さんもその歌が好きです。家でもお父さんは、私とお母さんの為に歌ってくれます」


「僕の家族。1年3組、ハワード・フリーダー。僕の父は、政治家です。バソト院の議長で、議員達をまとめています。議会が忙しい時は、何日も家に帰りませんが、僕と母は、このレボルテという国が良くなるように父を応援しています」


「私の家族。1年3組、エリン・フレンツェル。私のお父さんは、パン屋をしています。お父さんの作るパンは、とっても美味しいです。毎日毎日お父さんの作るパンを食べています。美味しくて美味しくてとっても幸せです」


「僕の家族。1年3組、ラインハルト・マラブル。僕の父は、騎士をしています。プルド団の団長で、国に忠誠を誓っています。僕は、そんな父が誇りです。いつも母と共に父の任務が成功するように祈っています」


 そんな出だしから書かれた作文が、書いた本人によって次々に読み上げられていった。1人1人読み終わる度に、他の児童からの拍手が教室に響く。そして、ティルの番が来た。


「私の家族。1年3組、ティル・ラーナー。私のお父さんは、警察官です。みんなが安心して暮らせるように、街を守っています。私とお母さんは、そんなお父さんをかっこいいと思っています。私の家族には、もうすぐ弟が産まれます。とっても楽しみです。4人家族になったら、きっと楽しいと思います。今までよりも、もっと仲良く過ごしたいです」


 ティルは、作文を読み終わる。同級生から拍手をもらった。やがて、最後の児童の作文が読み終わる。モニカは言った。


「皆さんは、立派な家族に恵まれていますね。よくできました。この時間の授業は、ここまでです!」


 そして、休み時間になった。自然と、お互いの父親の職業談義に児童達は花を咲かせる。フェリシアは、ティルの元に来て、こう言った。


「ティルちゃんのお父さん、警察官だったんだね!凄いよ!」

「そう?」


 そこに、エリンも来る。


「そうだよ。悪い人を捕まえるティルちゃんのお父さん、かっこいいんだよ!1回だけ見たんだ!!」

「そうなの?エリンちゃん」


 フェリシアの問いにエリンは頷く。ティルは言った。


「そうだ、エリンちゃんのお父さんのパン、美味しいんだよ!今度休みの日、一緒に食べない?」

「うん!食べてみたい!!」


 フェリシアの目が輝く。それを見つつ、ティルは言う。


「あ、そうそう!フェリシアちゃんのお父さんのお歌、聴いてみたいな」

「そうだね!聴いてみたい!!」


 エリンも同調した。


 一方、ティル達からそんなに離れていない所でラインハルトは、ハワードに話しかけていた。


「学級委員長のお父上は、バソト院にいたんだね」

「知っているだろう?フリーダーの名は」

「知ってるよ。『下』の方の議会だと思ってね」

「『一番上』の騎士団に自分の父親がいるから、偉ぶりたいのか?」

「いや、頑張ってるんだろうな、と、思ってさ」

「ふん」


 ティルは、近くで繰り広げられたその会話を聞き、そこに割って入る。


「えっと、議長さんと、団長さんの子供じゃん!凄い!!私のお父さんなんて、なんたら長なんてやった事ないんだよ?」


 ハワードはこう返し、席に戻った。


「そうか。いつか長官になれるよう祈っておく」


 ラインハルトはこう返し、席に戻った。


「国が良くなるように働いてる人の子供なんだね、僕達は。仲良くしよう」


 そして、その日の授業は、終了。ティル達は、下校して行った。


 ティルが帰宅すると、ちょうどグレゴリオが仕事に行く所であった。


「お父さん、お仕事頑張って!」

「ティル、ありがとう。頑張るよ!」

「今日ね、お父さんの事、作文で発表したの。そしたら、エリンちゃんがね?お父さんかっこいいって言ってた!」

「そうかー、じゃあ、かっこよく仕事してくるからね」

「うん!」


 そして、グレゴリオは瞬間移動にて出勤して行った。そう、グレゴリオは夜の治安を守りに行ったのだ。


「お母さん、ただいま」

「おかえりなさい」

「ね、弟、元気?」

「またー、妹かもって言ってるでしょ?」


 ティルは、そんなノエルの言葉を聞きながらノエルのお腹を撫でた。


「わかる?お腹の赤ちゃん元気だって」

「うーん、わかんない!」

「もう、ティルったら」


 ノエルは、しばらく苦笑いが止まらなかったが、こう声をかけた。


「おやつにする?」

「うん!お母さん!!」


 ノエルは、一旦台所に行った。一方、ティルは鞄を自室へ置きに行った。


「絶対!弟!!」


 そして、ティルは食卓へ。ノエルが用意してくれた焼き菓子を添えられたアイスクリームと共に頬張った。香ばしさと甘さが口いっぱいに広がる。一緒に食べていたノエルと共にティルはニッコリした。


「美味しいっ」

「よかったわ。あ、そうだ、今日、宿題は?」

「ある」

「食べ終わったら、やってきなさい。夕飯、作るから」

「わかった!」


 おやつを堪能したティルは、自室に行く。そして、鞄から印刷物を取り出すティル。印刷物には、楽譜が。


「校歌を歌えるように練習、だってさ。私、歌えるもん」


 そして、完璧な校歌を1回だけ歌い上げ、この日の宿題は終了した。ティルはすぐに部屋を出て、ノエルの所へ行く。


「お母さん、宿題終わった」

「早いね?校歌が聴こえてきたけど、あれなの?」

「うん」

「上手だったわよ、校歌」

「えへへ」

「私も、久しぶりにメビラ学園の校歌、歌おうかしら?」

「うん!一緒に歌おう?」


 そして、ティルとノエルは校歌を歌い始める。


「勇壮な山のふもとにそびえ立つ我らが母校。魔法の知識を育んだ先に、心と体も健やかに。往こう、進め、メビラ学園」


 歌い終わるなり、ノエルはふわっと笑う。


「本当に久しぶりだったわ。懐かしい」

「そう?」


 そこから母子の会話は他愛のない話へと移る。そんな2人の目の前で、ノエルの魔法は夕飯を作り上げていく。食材は保管している所から飛び出し、空中に現れた包丁にて切られていく。鍋が出現すれば、そこに食材が移動し、煮込まれていく。用の済んだ包丁は消え、代わりに皿が出現。鍋にて出来上がったスープは皿にひとりでに注がれていく。他の料理も同時進行で作られ、次々に皿に盛りつけられていった。


「さ、運びましょ」

「手伝う!」

「ありがとう」


 そして、夕飯を母子で楽しんだ。ティルは、言った。


「今日は、片付け、私がやる!」

「助かるわ」


 ノエルは微笑み、食卓から皿を台所に運ぶティルを見守る。そして、全て運び終えた事を確認すると、こう言った。


「じゃ、後は任せて」

「お皿洗いもやる!」

「え?大丈夫?」

「大丈夫!」

「じゃあ、私、見てるからやってみて?」

「うん!」


 そして、ティルはこう唱えた。


「エレア、ヴア、エーレエ。皿よ綺麗になぁれ!」

「凄い、完璧よ!」


 皿はシンクの上に浮かび上がり、泡に包まれる。その泡は、遅れてきた水に取り払われた。その後、水滴が残る皿は、熱風に晒され乾く。それが終わると、静かに台所のテーブルに重ねられた。


「よくできたわね?ティル」

「えへへ」

「ありがとう、ティル。食器は、私が戻すから、お風呂入ってきていいわよ」

「うん!」


 そして、ティルは入浴の後、ノエルにこう言って自室へと行った。


「おやすみ、お母さん」

「おやすみ、ティル」




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