48時間目:またもや
11月、ティルは誕生日を迎える。7歳になった娘を、グレゴリオとノエルは祝った。また、リノもティルの誕生日会をキラキラした目で見つめていた。
「ありがとう、お父さん!お母さん!そして、リノ!」
ティルにとって特別な日でも、翌日も学校には変わりない。あまり夜更かしは出来ず、早々にティルは寝る時間を迎えた。寝床に横になりながらティルは眠気を待つ。
(さすがに、2回連続エリンちゃんからケーキのプレゼントはなかったね。けど、あの美味しいケーキは、きっとエリンちゃんの所のケーキだよ。お母さん、買ってきてくれたんだ。んー、ありがとう)
そして、いつの間にかティルは眠りに就いた。
翌日、ティルは登校し着席すると、右斜め前の席から視線が注がれる。ティルはその視線を捉える。
「ん?何?学級委員長?」
刹那の沈黙の後、ハワードは呟くようにこんな事を伝えた。
「学級副委員長、7歳、おめでとう」
「えっ!何で?誕生日のお祝い?」
「学級委員長たるもの、クラスメイトの誕生日くらい祝わなきゃな」
「え、あ、ありがとう」
ティルの礼を聞き届けると、ハワードはティルから視線を外し前を向いた。
(ハワードくん、ありがとう。けど、前までのイテラリピティでは全然そんな事しなかったのに)
ティルは、しばらく右斜め前を見つめていたが、その日の日程に専念しようと黒板の方を見て気を引き締めた。やがて授業が始まる。モニカは言った。
「来月は二学期の試験があります。それに向かって学習を進めていきましょうね」
(そうだ、試験だ。今度こそ一番取れるかな?)
それから、自然発生的に放課後の勉強会が1年3組で開かれる。
そんなある日、勉強会中に所用で席を外していたラインハルトが教室に戻るなりこんな事を言った。
「他のクラス、そうだね、4組と5組が勉強会してたよ。真似されてるようだね、僕達」
「ええっ!5組?」
ティルの大きな声が教室に響く。
「ティルちゃん、びっくりした!」
「あ、ごめん、エリンちゃん」
一転小声でそう返したティルにラインハルトが尋ねた。
「5組が、どうしたんだい?」
「えーっと、4組にもびっくりした。真似されてるね?私達」
「そうだね」
ラインハルトは自らの席に戻り、途中になっていた勉強を再開させる。
(5組は、勉強会しないで!3組が1位になれないじゃん!!)
口を尖らせティルは教科書に目を落とす。エリンの小声がティルにかけられる。
「ティルちゃん、こわい、顔」
「あ、ごめん、エリンちゃん」
ティルはニッと笑う。それからティルは数人のクラスメイトに勉強を教えた後、解散し下校して行った。
(抜かせるかなぁ?5組)
3組は、それから授業と勉強会で学習を進めていった。そして、12月になり二学期の試験の日を迎える。
(1位になるには、私の答えは、全部間違わないようにしなきゃ)
ティルも他の児童達も全力を尽くした。そんな試験は終わり、あっという間に二学期は終業式の日になる。ティルはモニカから成績表を受け取る。
「ラーナーさん、試験、また満点ですね。凄いですよ」
「ありがとうございます」
(私の満点なんて、どうでもいいよ。3組、1位になれたかなぁ?)
その日の日程は、終了。下校の時間となる。ハワードは一目散に教室から出て行った。
(あっ、ハワードくん!また一緒に試験の順位、先生に聞きに行きたかったのに!でも、クラスの皆にも言いたい事があるから、追いかけられないよー!)
「ねえ!皆!!」
わらわら下校しようとしていた児童達が、ティルの大声で足を止める。
「よかったら、年越しのお祭り、皆で集まらない?」
「それ、いい!ティルちゃん!!」
(エリンちゃん、また年越しのお祭りで遊べるね?)
「じゃあ、来れる人達だけで集まろうね!」
そして、ティルは教室から出た。その足は職員室へ。
(仕方ない、1人で聞きに行こう。試験の順位)
歩を進めて行くと、間もなくティルはハワードとすれ違う。
「え?学級委員長、帰ってなかったの?」
「ああ」
「何してたの?」
「何でもいいだろう?」
「うー、答えてよぉ」
ハワードは一瞬笑った後、逆に尋ねてきた。
「そういう学級副委員長は、何しに行く?外に行くには、こっちじゃないだろう?」
「答えてくれないのに、訊くのぉ?」
ティルは口を尖らせた後、言葉を続けた。
「でも、私は答えるよ。先生に試験の順位、聞きに行くの」
「そんなの聞かなくていい」
「えー?知りたいのに」
「さあ、帰れ、帰れ」
ハワードは職員室方向に立ちはだかり、手でティルを追い払う。
「うー、何でー?」
「何でもいい」
「じゃあ、校門まで一緒に行こう?」
(ちょうど、ハワードくんに話す事あるし)
「わかった、付き合う」
ティルはハワードと並びながら校門方面へ足を向ける。そして、こう切り出す。
「また、学級委員長に何も言わないでクラスの皆に言っちゃったんだけどね?」
「何をだ?」
「来れる人だけでいいから、年越しのお祭り、クラスの皆で集まろうって」
「はぁ?」
「学級委員長も来れたら来てよ」
一旦ハワードは沈黙するが、こう答えた。
「期待するなよ」
「うん。どっちになっても私は楽しむよ」
そうして、校門まで辿り着いた。ティルは言った。
「じゃあね」
「ああ」
別れの挨拶をお互い交わした。
(あ、でも、動く歩道まで同じ道だった。なんか、変な所でお別れの言葉、言っちゃった)
気まずい空気の中、ティルとハワードは少し離れた場所を歩き、動く歩道まで移動した。ティルとハワードは、別方向の動く歩道に乗り、今度こそ別れた。
それから帰宅したティルは、ノエルに成績表を渡す。
「あら、満点ね?凄い成績じゃない!」
「うん」
(でも、何位だったんだろ?)
「あ、年越しのお祭りさ、クラスの皆で集まる事にしたの。ごめん」
「何を謝ってるの?いいわよ、いってらっしゃい」
「うん」
そして、ティルは手を洗った後、リノの寝床へと行った。
(リノ、年越しのお祭りに行くから、年越しの花火、一緒に見られないね。ごめん)
リノは目をとろとろさせながらわずかに微笑んだ。そして、全身がホワンホワン光った。
「んー、やっぱり、リノかわいいっ!」
リノの瞳はゆっくり閉じられる。引き続きホワンホワン光りながらリノは寝息を立て始めた。
その後の夕飯時、グレゴリオは言った。
「ティル、ノエルから聞いたけど、年越しのお祭り、クラスの皆と集まるんだって?」
「うん」
「本当は、家族で花火だけ見ようと思ったけど、学級副委員長として考えたんだよね?」
「そうだよ」
「クラスの皆とのお祭りも楽しそうだ。だから、楽しんで来るんだよ?」
「ごめん、お父さん。楽しんで来る!」
「でも、ひとつだけ僕と約束。その前に宿題ちゃんとやるんだよ?」
「わかった!」
(明日、1日で宿題やっちゃお)




