41時間目:バッジと実の見え方
遠足が終わり、授業は通常の物に戻る。1年3組の教室では、子供議員バッジをつけて登校する者もいた。
(バッジ、学校でつけたくなる人いるんだ。私も、明日はつけてこようかな?)
ちらとハワードの方を見ると、しっかり子供議員バッジをつけていた。
(やっぱり、ハワードくんはつけてる。副委員長の私も明日からつけてこよう。なんとなくだけど)
それから、モニカが教室へと入って来た。
「おはようございます。あら、子供議員バッジをつけてきた人がいるんですね?いい思い出になったようで、私も嬉しいです」
ティルは、モニカの微笑みを見た。
その後の3時間目の授業は、算数であった。黒板に、ブルーベリーが9個あり、3個食べたら、何個残るかを問う問題が書いてあった。モニカは言った。
「さて、実物を使って考えてみましょう」
そして、モニカは1人1人の児童の机の上に、薄手の白い紙を乗せて行った。それが終わると、モニカの呪文が教室に響いた。
「チイ、ビオ。ブルーベリー!」
すると、全員の紙の上に9個ずつブルーベリーが出現。
「さあ、皆さん、ブルーベリーを3個食べてください。はじめは3個だけですよ?食べ過ぎないように!」
それに促され、児童達は、ブルーベリーを3個頬張った。一方、ティルはブルーベリーに手を伸ばす事はなかった。
(さすがに、食べたくない。美味しくない実を食べてから、正直、果物全部苦手になっちゃったから)
そんなティルの様子に気づく事なくモニカは言った。
「紙に残ったブルーベリーを数えましょう!」
(数えなくても、6だよ)
その声に促され、ティルはじめ児童達は、「いーち、にー」とブルーベリーを数えはじめ、最後に「ろーく」と言った。
「はい!この問題の答えはわかりましたね?」
再び教室に児童全員の「6個!!」という声が揃う。
「はい、正解!6個でした!!このような問題は、7月の試験にも出ますので、よく復習してくださいね。さ!残りのブルーベリーも食べてください!!」
(前の苺と葡萄、前の前のさくらんぼとかずっと頑張って食べたから、今日のは食べないよ。美味しいのはわかってるけどね。ごめんね、ブルーベリーさん)
ティルは、薄手の白い紙で9個のブルーベリーを包み、机上のはじに置いた。その後も授業は続く。授業が終わるころ、ティルは再びブルーベリーを包んだ紙を見る。
(けど、残ったのどうしよう?)
それから間もなく、授業が終わる。
(そうだ!皆に食べてもらおう!!)
モニカが瞬間移動にて職員室に戻ったことを確認すると、ティルはクラスの全員にこう声をかける。
「ブルーベリー食べたい人!私、苦手だから食べたい人にあげるよ!!」
数人の児童が手を挙げ、休み時間にティルに宛がわれたブルーベリーを分け合って食べた。食べ終わった女子児童1人がティルに声をかけた。
「私、ブルーベリー好き。学級副委員長、ありがとう!美味しかったよ!!」
「美味しかった?わー!ありがとう!私、嬉しい!!」
その様子を、ハワードが見てティルを廊下に連れ出した。
「何をやっている?授業で先生の指示に従わなかったのか?」
「うん」
「それに、あんな事したら、多く食べられる人と、自分の分しか食べられない人が出てしまうじゃないか。不公平だ」
「あ」
「『あ』じゃない。あともうひとつ言うけどな、手を挙げる人が多くて争奪戦になったらどうする?」
「そ、そうだね」
「学級副委員長は、考えが足りないな」
「ごめん」
「まぁ、今回は何事もなかったらよしとするか」
「あ、ありがとう」
ハワードは、その言葉を受け教室に戻っていった。
(ハワードくん、頭固い!変わらないなぁ)
翌日、登校したティルの胸には、子供議員バッジ。ラインハルトがそれを見て言った。
「君、バッジ、昨日はつけてなかったのに、今日はつけて来たんだ」
「え、うん」
(え、見てたの?)
「そういうマラブルくんは、つけないんだね」
「貴重なものだとわかっているけれど、僕の憧れじゃないからね、議員は」
「そ、そうなんだ」
「人を支配する議員ではなくて、人を守る騎士こそ僕の理想だよ」
「そんな考えもあるんだ」
その会話は、ハワードに聞こえていたようで、話に割って入ってきた。
「議員は、支配などしない。支配をしているというのなら、その議員を選んだ人々にも責任がある」
「そうかい、学級委員長」
(う、喧嘩になりそう。この2人、凄く大人っぽいのに、なんでいつもこうなんだろう)
ティルは、ハワードとラインハルトの間に立つ。
「2人って凄く大人っぽくて凄い!友達になればいいのに!!」
「友達?学級委員長と?上から目線の態度を改めれば友達になってやってもいいかもね」
「お父上が騎士団にいるんだったか。君も、いざとなったら武力に頼る乱暴者かもしれない。手を取るのはやめておく」
「偏見だよ。乱暴者とは聞き捨てならない言葉だね。それに、学級委員長としてあるまじき発言だと思わないかい?」
(あ、駄目。喧嘩止まらない。もー、難しい言葉で喧嘩しないで!)
その時、モニカが教室に瞬間移動にて入ってくる。そして、鐘が鳴った。児童達は、一斉に席についた。
(はー、鐘のおかげで無理矢理だけど、喧嘩止まった)
そこから、朝の会が始まる。モニカは、印刷物を渡した。
「運動会で皆さんが行う種目がそれぞれ決まりました。見てください」
(何だろう。え、私は、魔法玉入れ?久しぶり!4回連続箒リレーだったから、飽きてたんだよね!!って、ハワードくんと籠を持って飛ぶの?どうしよう?)
右斜め前のハワードの頭がわずかに左へと動くが、すぐに正面へと戻った。そんな様子をティルは見つめた。
(う、ハワードくん嫌かな?私と籠係やるの。でも、頑張ったら少しは認めてくれそう。うー、頑張ろう!頑張ろう!!)




