表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/94

27時間目:叱られて夏休み

一学期は終業式を迎えた。終業式が終わった後、モニカは、児童1人1人に成績表を手渡しで渡していく。そして、ティルの番が来た。モニカは、こんな事を小声で言いながらティルに成績表を渡した。


「ラーナーさん、放課後、職員室に来てください」

「えっ。はい」


(えっ?何?)


 それから、モニカはティルの後の児童にも成績表を渡していった。そして、最後の児童に成績表を渡し終えると、夏休み前の挨拶をした。


「皆さんにとっての初めての夏休みが明日から始まりますね!1ヶ月半、事故のないように楽しんでください!!」


 児童達は、「はーい」と元気に返事をする。一方、ティルは生返事。


(えー、何だろう?先生、何の話があるんだろう?)


 それからすぐに放課後となった。児童達は皆思い思いに下校していく。そんな中、エリンがティルに声をかける。


「かーえーろ!ティルちゃん!!」

「ご、ごめん。これから職員室に行かなきゃ駄目なんだ!先に帰ってて?」


 そう返したティルは、エリンの返事を待たずに職員室へと向かって行った。


「オリーン先生」


 そう言いながらティルは職員室に入室していく。そこには、初等部から高等部までの担任達。わずかな女性教諭と大勢の男性教諭がそれぞれの仕事をしていた。その人波の中を縫うようにしてティルはモニカの所に辿り着いた。


「ラーナーさん」

「何ですか?先生」

「単刀直入に言いますよ。早く下校させたいですし」

「はい」


(なんか、先生怒ってる)


「今度の試験、どうしたんですか?変な答案用紙でしたよね?」


(ああ、先生に変って思われちゃった!)


「えっと、えーっと」


 返す言葉が見つからないティルの目の前に、ティルが提出した算数の答案用紙が差し出された。


「この問題が解けるのに、この問題が出来ないのはおかしいのではないかと思っています。初めての試験で緊張しましたか?」

「は、はい。緊張しました。それに、えっと、じ、時間がなくて」

「そうでしたか。でも、こんな事を続けていたら、手抜きと思われてしまいます。以後、気をつけてください」


(手抜きかぁ)


「ごめんなさい。二学期の試験は頑張ります」

「そうしてください」


 ティルは頭を下げ、それから職員室の出口を目指した。


(難しいなぁ。ちゃんとやったらやったで変だし、わからないふりしたら、手抜きって。うーん、そうだよね)


 そうして、職員室を出た。


「うーん。帰ろ」


 ティルは、昇降口方面へ足を向ける。すると、後ろからエリンの声。


「ティルちゃん!」

「えっ!エリンちゃん、待っててくれたの?」

「ティルちゃんと帰りたかったから!」

「ありがとう!帰ろ!!」


 そうして、ティルはエリンと共に下校していく。その最中、動く歩道に乗った頃、エリンは尋ねた。


「職員室で何の話してたの?」

「えっ。し、試験がボロボロだったから怒られてたの」

「ティルちゃん、そうだったんだ」


 エリンは、わずかに首を傾げ、こう続けた。


「でも、幼稚園の時のティルちゃんって先生に怒られた事なかったじゃん?どうしたの?」

「えっ!えー、えーっとね、やっぱり、幼稚園と学校は違うよ!!し、試験なんて初めてだし!!」

「そうかな?」


(エリンちゃん、私もそうかな?だよ。えっと、幼稚園の私ってどんな私だったっけ?うー、こんな事、誰にも訊けないよー!)


「なんだか変なの。ティルちゃん」


(変で大丈夫!エリンちゃん!!)


「あはは、変かも!」


 ティルの苦笑いが、エリンに届く。


「なんだかよくわからないけど、先生とか学級委員長に怒られるティルちゃん、私、見たくないなぁ」

「ご、ごめん。ごめんね?エリンちゃん!二学期は頑張るよ!!」

「本当?」


 エリンは、ティルの目を覗き込んだ。ティルは、ニッと笑い、こう返した。


「エリンちゃんには約束する!」


 エリンは、ほっとした様子でこう言った。


「うん!約束!!」


 一転、エリンはキラキラした目で言葉を続ける。


「明日からの夏休み、いっぱい遊ぼうね!」

「うん!それも約束!!」


 そうして、ティルはエリンと別れた。


 帰宅すると、ティルはノエルに成績表を一目散に渡した。ノエルは、すぐに中身を見て唖然とした。そして、険悪な空気が漂った。


「ちょっと、何?この成績」

「ごめん、お母さん」


 ノエルは、ひとつ深呼吸をした。


「帰ってきたらグレゴリオにも見せるけど、怒られちゃうかもしれないわね」

「うん」


 夜、グレゴリオは帰宅した。


「ただいま」


 ティルとノエルは声を揃え、「おかえりなさい」と言った。更にノエルは言葉を続ける。


「疲れてると思うけど、これ、見て」


 ティルの成績表がグレゴリオに渡る。グレゴリオの眉間には、みるみる皺が寄った。


「なんだい?これは。ティル、こっちに来なさい」

「はい、お父さん」


 少し縮こまりながらティルはグレゴリオの所へ行く。


「随分成績が悪いね。何してたんだい?この一学期」

「頑張ったよ?」

「でもね、これはちょっと酷いよ」

「ごめんなさい」


 グレゴリオは、その右手を柔らかくティルの頭に乗せて言った。


「謝るのは僕じゃないよ。将来のティルだよ」

「将来の、私?」


(そんな、お父さん、将来なんて来ないよ!)


「そうだよ、ティル。このまま落ちこぼれで行ったら、幸せが来なくなるかもしれないからね」

「そう、かも?」

「そう」

「じゃあ、二学期はちゃんとする」

「わかればいいよ」


 グレゴリオは、ティルの頭の上の右手を取り払った。


「約束だよ?ティル。僕は応援する」

「うん!頑張る!!」


 グレゴリオは、ひとつ深呼吸した後、笑顔になった。


「この話は、ここまで!」

「うん、お父さん」


 見守っていたノエルは、柔らかく頷いた。


「じゃあ、夕飯にしようね!ティル!それにグレゴリオ!」


 そして、夕飯を経て就寝の時間が来る。


「おやすみなさい。お父さん、お母さん」


 グレゴリオとノエルは声を揃え、「おやすみ、ティル」と言ってくれた。その後、グレゴリオとノエルは、何やら話し合いをし始めたようだったが、ティルは自室へと行った。


(今日は、なんだか皆に怒られちゃった。やり過ぎちゃったんだ。駄目だなぁ)


 ティルは、鞄から分厚い問題集を取り出す。


(とりあえず、これ、また2日で片付けよう)


 夏休みの宿題。何度も見た問題集。それを、机の上に置き、ティルは眠りに就いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ