24時間目:埋め合わせ
大雨で中止になってしまった遠足の日の翌日。ティルは、乾いた風が吹く青空の下、登校して行く。
(なんか、道がちょっと汚い)
昨日の大雨で水が溢れた事を示す小枝などが至る所に集まっていた。
それから無事に登校すると、モニカが教室に早めに来ていた。
「ティル・ラーナーさんも、無事でしたね。よかったです」
「私、無事!先生!!」
「元気でよろしい!」
モニカは、クラス全員の無事の登校を確認すると、朝の会を始めた。
「昨日の大雨は、災難でした。遠足は中止になってしまい、皆さん残念と思います」
児童達は、肩を落とした。
「まだ詳しい情報が入っていないので、なんとも言えませんが、遠足が中止になった分、他の行事で楽しみましょう!」
ティル他児童達は、「はーい」と声を揃えた。しかし、エリンだけは、返事をしなかった。
(イテラリピティとは違うけど、お父さんから聞いたから、詳しい話わかってるんだよね。だけど、言わないでおこうかな?)
そして、朝の会が終わる。少ししてティルは天候が気になり窓際の方に視線を移す。すると、うなだれたエリンを見た。1時間目の授業までわずかな時間しかなかったが、話しかけに行った。
「エリンちゃん?どうしたの?」
「ティルちゃん」
エリンの目は潤んでいた。
「なんでもないよ。ティルちゃん」
再びうなだれたエリン。
(エリンちゃん、もしかして?)
ティルは、懸念を口にしようとしたが、授業開始の鐘がそれを阻止した。
(あー、席に戻らなきゃ)
1時間目の授業中、ティルはモニカの話が耳に入らなかった。
(どう励まそう?エリンちゃんを。授業なんて全部わかってるから、それ、考えよ)
そして、50分の中で「それ」が決まる。
(うー、これしか浮かばないよ)
1時間目の授業が終わる鐘が鳴るなり、ティルは一目散にエリンの所へ。
「ね!エリンちゃん、さっきの話の続き、しよ?」
落ち着いた様子のエリンの目が、再び潤み始める。
「なん、でも、ないよ。ティルちゃん」
「いこ!」
ティルは、エリンの手を引き、近くの中庭に連れ出した。
「エリンちゃん、昨日の遠足、お父さんと行けなかった事、かなしい?」
エリンの目からは、抑えきれない感情が溢れた。
「楽しみに、してたのに」
ティルは、そんなエリンの頭をポンポン撫でた。ポロポロ落ちるエリンの感情を、ティルはひたすら見守った。
(エリンちゃん、いつだったか忘れたけど、ちょっと前のイテラリピティの時はちゃんとお父さんと遠足に行けたよ。でも、そんな事は知らないもんね。辛いよね)
「お父さん、今日、パン作りから戻って来なくて、顔見てないんだ。さびしいよ」
「そうだったの。ねぇ、エリンちゃん、家さ、お父さんとお母さんと私で遠足の代わりみたいな事するんだ」
「いいなぁ」
「うん。よかったら、エリンちゃんのお父さんとお母さんとエリンちゃんも来ない?」
びしょ濡れのエリンの目が見開かれる。
「いいの?」
「うん!エリンちゃん達となら、いいよ!!」
「じゃ、お父さんとお母さんに今日帰ったら言う!!」
(エリンちゃん、笑った!)
ティルは、晴れ渡った瞳のエリンと手を繋ぎ教室へと帰って行く。それから、授業に集中した。
やがて、給食の時間が来る。ティルは、食堂に行くと、目を丸くした。
「エリンちゃんのお父さんとお母さん!」
ティルは、フレンツェル夫妻に駆け寄る。
「エリンちゃんのお父さん!どうしたの?」
エマヌエーラの微笑みの傍らで、問われたユリウスが答えた。
「おお!ティルちゃん!!いやね?遠足中止になっちゃったから、何か楽しい事をしてあげたくてさ、学園の皆にうちのパンを食べてもらおうって来たんだよ!!」
「そうなんだ!!」
ティルは、そう返事すると、弾かれたように走り出す。教室方面へ戻ると、遅れて食堂に行こうとしていたエリンに会った。
「エリンちゃん!早く!!」
「えっ?」
ティルは、ぐいぐいエリンの手を引き食堂へ。すると、エリンの明るい声を近くで聞く。
「お父さん!お母さん!」
ティルは笑った。そして、エリンの手を離す。エリンは一目散にユリウスの所へ。
「お父さん、お母さん、何で?」
ユリウスは、他の児童生徒にパンを配りながら、先程ティルに答えた内容を再びエリンに伝えた。
「何で朝言ってくれなかったの?」
「パン作りが間に合わないかもしれなかったから、言えなかったんだよ。間に合ってよかった!」
「そうだったんだ!」
エマヌエーラは、エリンに尋ねる。
「食べる?」
「うん!」
ティルもそこに来てこう言った。
「私も食べる!」
そうして、ティルとエリンはエマヌエーラからパンを受け取り、他の食事と共に給食を楽しんだ。




