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12時間目:色んな行事

二学期の始業式から数日後。この日は学校で身体測定が行われる。二学期の身体測定は、健康診断を兼ねていて、1年3組の教室に、初老の男性医師が巡回してきた。それを受けてモニカは言う。


「さ、登録番号順に身体測定と健康診断を受けてください」


 児童達は、1人ずつ医師の目の前に。やがてティルの番が来た。男性医師は、こう唱える。


「エンメイ、エッセウ、エーレア、ゼータイオ、エンネエ。どのくらい大きくなったかな?チオエンネ、ティエーレオエレ、エレオ。元気かな?動かないでね」


 ティルは、男性医師から放たれた光の糸に頭から足先まで包まれる。10秒程その状況が続く。ティルは、まばたきしながら測定と診断が終わるのを待つ。すると、糸が消滅。医師は言った。


「うん、身長は、123センチだね。一学期より3センチ伸びた。大きくなったね。体は元気そのもの!大丈夫だよ」

「ありがとう、先生」


 ティルは、医師にこう声をかけ、自らの席に戻る。


「123センチかぁ」


 やがて、1年3組の身体測定と健康診断は終わる。医師は、隣の教室に行った。そのまま、休み時間となり、児童達は自らの身長談義に花を咲かせた。ラインハルトは、ハワードに話しかける。


「身長、どのくらいだった?」

「124センチだ」

「へぇ、僕と一緒だね」

「君と?君も124センチか」

「仲良くしよう」

「ふん」


 ラインハルトは、ハワードに握手を求めた。一旦拒否しようとしたハワードだったが、ラインハルトの右手を握った。ティルは、それを遠目で見ながら、エリンとフェリシアと話す。


「私、122センチだったよ」


 エリンからの身長の発表だった。フェリシアも身長を発表。


「私は、124センチ」


 ティルは、それを聞き、自らの身長を発表した。


「私、123センチだったよ。エリンちゃん、かわいい!フェリシアちゃん、大人っ!」


 3人は、笑い合った。すると、授業の時間が訪れる。鐘の音で児童達は、席に着いた。この時間は、音楽。モニカは言った。


「はい、来月の学習発表会の1年生の出し物は、正式に合唱に決まりました。今日から音楽の時間は歌の練習をします」


 そして、歌う曲の楽譜が渡される。レボルテ国民なら誰でも知っている童謡を合唱曲として編曲したものだった。ティル達は、口々に呟いた。


「『ひなぎく』だ」


 その歌は、元気なひなぎくの妖精が主人公の歌詞で、みんなに幸せや希望を分けていくものであった。モニカは言う。


「さて、今日は、パート分けをします。皆さん1人1人の歌声を聴いてパートを分けます。今日は、校歌を歌ってください」


 そして、モニカは唱えた。


「エッセティエーレウ、エンメエエンネ、ティオ。小さなピアノ」


 すると、モニカの教卓に、小型のピアノが現れた。そして、モニカは児童を指名し、その児童に校歌を途中まで歌わせる。また、歌声を聴いて、児童が高音部か低音部のどちらに向いているか判断し、担当パートを告げる。


「はい、次はティル・ラーナーさん」

「はい」

「エッセウオ、エンネオ。メビラ学園校歌」


 モニカの魔法で演奏される小型のピアノの音色に合わせてティルも途中まで校歌を歌う。


「あなたは、高音部ですね」

「はーい」


 次々とパートが分けられていく児童達。ハワードとエリンは高音部、ラインハルトとフェリシアは低音部を歌う事になった。全員のパートが決まり、それを受けてハワードが学級委員長として言った。


「お客さんに、楽しんでもらえるように、頑張って歌おう!」

「はーい」


 ティルは、他の児童と共にそう返事した。


 放課後になり、いつものようにエリンとフェリシアと下校して行くティル。ティルは、2人に提案する。


「ね、『ひなぎく』歌って帰らない?」

「いいね!フェリシアちゃんは?」

「まだ低音部がわかんないから、合唱じゃないのでいい?」


 ティルは、はっとして答える。


「そ、そうだよね。うん!いつもの『ひなぎく』歌おう?」


 そうして、3人は「ひなぎく」を動く歩道の上で歌った。歌い終わったフェリシアは言う。


「ほんとは、合唱にしたかった?」


 ティルとエリンは首を横に振る。エリンは言った。


「全然!でも、ティルちゃんとフェリシアちゃん、歌上手だったよ!!私、練習しなきゃ」

「フェリシアちゃんは、お父さんが聖歌隊にいるんだもんね!上手だよ!!」

「そうだね。ありがとう、エリンちゃん、ティルちゃん。でもさ、ティルちゃんは?なんで歌上手なの?」

「えっ?えー、なんでかなぁ?」


 ティルは不自然な笑顔を浮かべ、続けた。


「えっと、『ひなぎく』が好きだから!」

「そうなんだ。幼稚園の時は、そんな事聞いた事なかったけど、好きになったんだね?『ひなぎく』」

「そうそう!エリンちゃん」

「ティルちゃん、『ひなぎく』好きなんだ。わかった!お父さんに練習手伝ってもらって低音部歌えるようにする!!歌えるようになったら、また帰りの時に3人で歌おう?」

「それ、いいね!ティルちゃんとフェリシアちゃんみたいに歌えるように私も練習してくる!!」


 その後、3人はそれぞれの自宅に帰っていった。ティルは、リノの所へまっしぐら。


「リノ!私、学習発表会で歌うよ!聴きに来て!!」


 そんな様子を見たノエルが話しかける。


「赤ちゃん連れて行ってご迷惑にならないといいんだけど」

「うー、そうだね。でも、リノに聴きに来てもらいたいよー。ねー、リノぉ」

「考えておくわ。そうね、リノが留守番なら、お母さんも聴きに行けないものね」


 後日の事だった。ハワードが帰りの会にて提案した。


「これから、放課後少しの時間、合唱の練習をしないか?」

「賛成!」


 フェリシアが声を上げた。ティルとエリンは目を合わせ頷き、ラインハルトは無言の拍手にて賛成の意思を表した。


 そうして、放課後短時間であるが、1年3組は歌の練習を毎日のようにした。


 そんなある日の下校中、フェリシアが言った。


「放課後練習してるけど、3人でまた歌わない?」

「うん!エリンちゃんは?」

「やる!」


 そして、「ひなぎく」を合唱の形式で歌う。最初に3人で歌った時とは違う響き合いに、3人は鳥肌が立った。歌い終わると、ティルとフェリシアが声を合わせてエリンに「歌が上手になった」と伝える。それに対してエリンは照れながらこう返した。


「私も、すっごく練習したんだ!」


 3人は笑顔を交換し合った。


 そして、10月中旬。遂に学習発表会の日がやってきた。1年3組の出番が近づく中、モニカは児童達にこう声をかけた。


「さあ!魔法の杖は持ちましたか?」


 児童達は、声を揃えて「はーい」と言った。そして、講堂の舞台に上がった。ティルは客席の方を見て嬉しそうに呟いた。


「リノ!」


 客席に、グレゴリオとノエルが揃って座り、リノはノエルに抱っこされていた。


 舞台の下には大きなピアノがあり、モニカの魔法にて伴奏を演奏し始めた。演奏者がいないピアノの音色に合わせて1年3組の児童達が「ひなぎく」を歌い始める。グレゴリオとノエルは噛みしめるように1年3組の「ひなぎく」に聴き入った。そして、グレゴリオは感嘆の声を上げる。


「ティル、とてもいい『ひなぎく』だね。ほら、リノ、お姉ちゃん達のお歌だよ」


 ノエルの懸念は、杞憂に終わり、リノは穏やかな顔でその歌を聴いていた。ノエルは、ほっと胸を撫で下ろし、こう言った。


「リノ、気に入ったのかしら?『ひなぎく』」


 リノは、その言葉の意味はわかってはいなかったが、柔らかく笑った。そのリノの笑顔を受け、グレゴリオとノエルは、ティル達の歌声を聴きながら見つめ合った。


 そんな歌も佳境に入る。そんな中、児童達は歌いながら一斉に魔法の杖を振った。すると、数輪ずつひなぎくが全員の杖から出てきて客席へ。そして、客席の人々の歓声と共に、1年3組の演奏は終わった。観客席からは、惜しみない拍手が1年3組の児童達に贈られる。そんな中、ティルは声を上げた。


「わあーっ、講堂がひなぎくでいっぱい!これ、好き!!」




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